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お金は大切だよ~-賃金支払いの規制-賃金支払いの4原則(その4)

労働契約関係における使用者の最重要義務(本体義務)は、労働者への賃金の支払いです。さて、これまでその賃金支払方法の規制として、①通貨払いの原則、②直接払いの原則、③全額払いの原則とお話してまいりました。今回は、最後の原則です。われわれの「月給制」の根拠たる定期払い原則です。



1.毎月一回以上・一定期日払いの原則(労基法24条2項)


毎月一回以上、決まった日に賃金を支払うというものです。労働者の計画的な生活安定を図るためです。必ず「特定の日」を定めて支払わなければなりません。もっとも、その日より少しだけ前に支給されればうれしい-私の場合には-ですよね。但し、賞与や退職金などのような一時的に支給される賃金は、この限りではありません(例外:臨時に支払われる賃金。労規則8条)。

年俸制の場合には、どうでしょうか。これも毎月の支給額に換算して支払わねばなりません。「年に一度、ドカーン」は許されないのです。私の高校の後輩に、プロ野球で大活躍したある有名選手がいました。彼は長らく現役で活躍し、ずっと年俸3億円といわれてきました。そうすると、一か月あたりは・・・ 彼の弟は、「うちの兄貴は、毎年宝くじに当たっているようなものだ」と言っていました。まして、あの米国MLBで大活躍する大谷選手の場合には、どうなるのでしょうか!! 私たちにとっては、月の向こうの世界どころか、太陽系の向こう側のような遠すぎるお話ですね(閑話休題)


2.消滅時効にご注意


ところが、世の中には給料日が過ぎているのに賃金を支払わない悪質な使用者もいます。もちろん労基法違反ですので、使用者には罰則が科せられます。しかしそれは刑事事件の話で、民事はまた事情が異なります。そこで漫然と請求せずにおくと、あなたの大切な賃金請求権が消滅してしまうのです。労基法は、賃金の消滅時効を5年(当分の間は3年)としています。したがって、長期にわたり継続して未払いの場合には、何もしないと3年経過するたびに給料が一ヶ月分ずつ時効で消えてしまうことにもなりかねません。

また、付加金の請求期間も5年(当分の間は3年)です。この付加金とは遅延損害金(本来の賃金支払日の翌日から年利3%が上乗せされる)とはまた別に、裁判所が労働者の求めにより、使用者に対して未払い賃金に「加えて」支払いを命じることができるとするものです。米国の『2倍賠償制度』にならったものです。制裁ともいってよいでしょう。そして、その対象は、解雇予告手当・休業手当・割増賃金・年次有給休暇中の賃金です。


こうして労基法は、労働者にとって大切な賃金の支払いを懈怠する悪質な使用者に対して、罰則・行政監督等で使用者の履行確保=労働者の権利の実現を図ろうとしているのです。困ったときには、早めに労働組合か弁護士等の専門家にご相談してくださいね。

以上


オイカワ ショウヨウ
『地域連携プラットフォーム』に勤務の傍ら、某大学の研究所に所属。
複数の国家資格を有し、また『府省共通研究開発管理システム(e-Rad)』に登録され、研究者番号を有する研究者でもある。