ギロチンでの夢
塩1グラム入れすぎただけで、打首にされそうになっている男が最後に見た夢というものについて、考えてみたことはあるだろうか。
きっと、その夢には塩も天秤も、ギロチンも出てこないのだ。
あるのはただ、飼っている猫のことだけだろう。
路地裏の隅っこで、バレイショと書かれた段ボール箱に入れられてうずくまっていた猫。
名前は付けなかった。きっとその猫のお母さんが大事に大事に付けた名前があるはずだから。
そんな猫が、飼い主を軽く引っ掻き、甘く噛み、抱き上げられて喉を鳴らす。
そんな、いつもの日常が、たった今ギロチンに頭を乗せている男の脳内で、
幾度も再生されている。
幾度も、幾度も、尽きることなく。