青碧
万年筆のインクがぶちまけられて、無重力のその空間にぷかぷかと浮遊した。
徐々に重力を戻していくと、とうとう形を保てなくなって、青みがかった塊はどろどろと垂れていった。
その真下にいたのが、不幸な つのなすだ。
つのなすはその黒い水をもろに被り、真っ黄色から真っ黒になった。
ちょうど、斑点が気になり出したつのなすだったので、目立たなくなってあら嬉しい。
でもつのなすで受け止めきれなかったインクは、ぼたぼたと下に垂れていく。
その真下にいたのが、不幸な白猫だ。
白猫はその黒い水をもろに被り、にゃあっと鳴いてツヤッツヤの黒猫になって逃げていった。
その白猫が走るたびに、肉球からこぼれ落ちるインク。
そのあしで踏んづけられたのが、不幸なつのなすだ。
潰れて割れたつのなすは仲間外れにされて、ひとりぼっちで道路の真ん中に横たわっていた。
そこを、慌てた様子の黒猫に踏んづけられたのだ。
待てよこれ、黒猫じゃなくて・・
そう気づく頃には、ひとりぼっちのつのなすは仲間と同じく真っ黒になっていた。