大阪人の驚くべきコンパッション力
神奈川では、近所の人と喋らない日常
今、私は神奈川県に住んでいる。家は駅から近く、道は綺麗で、商業施設もたくさんあって買い物に困らず、とっても便利。
「物足りないなぁ」と思うのは、街の人とあんまり会話がないこと。繁華街に行って帰っても、お店で買い物をしなければ一言も話さない事もある。街を歩いても会話がない….それが普通じゃない?と思った人も多いと思う。
でも私の出身地、大阪の下町だと、通りすがり、あるいは買い物をした時、お店の人から気軽に話しかけられること、結構あるんじゃないかな〜と思う。
大阪人の距離感の近さ
「そで触れ合うも他生の縁」っていう諺があるけど、「まだ、袖、触れ合ってないし!3mは離れてたで!」というタイミングで話しかけてくるくらい、大阪人の距離感は近いことがある(主語が大きいことを許してほしい)。
例えば…
全部、私の実体験だ。
大阪に住んでいた時は、この距離感がちょっと暑苦しいように思ってたけど、離れてみると、しみじみ懐かしい。
当時は、こちら側への剥き出しの好奇心のようにも感じて、たじろぐ自分もいたけど、それって「ピュアに親切にしたい」だったり、サービス精神の表れなのだなぁと思うようになった。
やり取りがあった日は、家に帰ってからも、そして数年経っていても、思い出は面白く、なんだか心がホワっとあったかくなる。
大阪という土地には、「こうしてあげたい」と思ったら遠慮なくアクションに繋げられる、コンパッション(思いやり、という意味)筋が高い人が多いのかも知らない。
大阪人は、相手からコンパッションを引き出すのも上手い
ついこの間、大阪の実家に帰った時のこと。
実家近くのホテルに泊まっていた私は、徒歩で実家に向かっていた。
道の向こう側から、自転車に乗った中年の女性がやってくるのが見えた。私とすれ違うのかと思いきや、自転車を止めてこう聞いてきた。
女性 「ここら辺の人ですか?」
私 「….いや、違いますけど」
私はここで育ったので、なんて答えるのか迷ったけど、もう引っ越して20年になるしな、と思って「違います」と回答した。
そうすると、重ねてこんな質問をされた。
「ここら辺にバームクーヘンのヘタ売ってるところがあるらしいんですけど、知りません?」
私はめちゃくちゃ混乱した。
まず、「あれ、私、ここら辺の人じゃないって言ったよね!? 」という疑問。
もう1つは、「『バームクーヘンのヘタ売ってる』ってどういうこと!?」という混乱。日本語としては理解できるけど、予想外の質問すぎて、脳が処理できなかった。
まさか人生でバームクーヘンのヘタを売っているか聞かれる日が来るなんて…
しかし、女性の困った顔を見て、咄嗟に私は、Googleマップで「バームクーヘンのヘタ」と入れて検索した。
すると…..驚いたことに目の前の、何の変哲もない酒屋に口コミがあり、「ここでバーククーヘンのヘタ売ってるで。売り切れも多いけど」と書いてある。
「こ…この酒屋で売ってるみたいですよ」と教えてあげると、「やっぱり!」と喜ぶ女性。
女性が喜んだ様子を見て、なんだかうれしい私….
コンパッションでは、「誰かのために思いやりを送る時、幸せを感じるホルモンが脳から出ている」と学ぶ。女性のペースに乗せられて、ついついコンパッションを引き出されてしまった私は、確かに女性の笑顔を見て、温かい気持ちになった。
ちなみにバームクーヘンのヘタは、売り切れだった。
「残念やわ〜」「残念ですね」と、いつの間にか生まれた連帯感を味わって、ほんの5、6分の交歓だったけど、思いやりや、つながりが感じられた時間になった。
私たちは人を頼る時、「迷惑になるんじゃないか」と思って、つい自分でなんとかしようとしがちだけど、依頼を受け取るか断るかは、相手に選択権があるし、人助けをすると、相手だって幸せを感じられる。
改めて、そのことを教えてもらった気持ちだった。
今も、ユニークで、楽しく、温かい記憶として、私の中に仕舞われている。
最後になったけど、「バームクーヘンのヘタ」とは、「バームクーヘンの切れっ端」という意味。きっと関西以外の人は分かりづらいよね。
色々主語が大きいですが、故郷への愛を感じてもらえるとうれしいです。(大阪には、内気だったり、遠慮がちな人も、もちろんいます)
皆さんの住んでいる地域に、コンパッションの特色はありますか?
ぜひ聞いてみたいです。