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あっぱれ!レッズのボールボーイ 喝だ! ガンバのチームビルディング
5月21日 J1第14節
埼玉スタジアム2002で行われた鹿島アントラーズVS浦和レッズ戦は、シーズン最多を記録する37,144人の入場者数を記録。観客を満足させる熱戦が行われた。
一方、大阪ではセレッソのホーム、ヨドコウ桜スタジアムにてガンバとの大阪ダービーが行われた。
こちらはピッチ外でサポーター同士のいざこざが相次いだそうで、ダービーに向けて両クラブの社長から異例の声明が発表された中での開催となった。
試合はアウェイのガンバが先制して前半を0-1で折り返す。
後半はホームのセレッソが「このままじゃ終われないでしょ」と怒涛の反撃を見せる。
反撃の狼煙は清武弘嗣のスルーパスからだった。
ガンバの攻撃を防いだセレッソがカウンターに入る。
中央でボールをもらった清武は、キーパーが飛び出せず相手ディフェンダーが追いつけないペナルティエリア前に弧を描くグラウンダーのパスを送る。
倒れ込みながらディフェンスに入ったガンバ選手が倒れた後に寝ながら足で掻き出したボールがセレッソの選手の前にこぼれ、同点弾となるのだが、ゴールの瞬間様々が感情が渦巻いた。
清武さん!
「前を向いた瞬間に、どうしてそこが空いてるって分かったの?」
「味方がフリーでパスを受けられるスペースがどうしてすぐ見つかるの?」
「真っ直ぐ蹴ったら相手に当たってしまう場所へのパス。どうして巻いて出せばいい!って瞬時に気付くの?」
30メートル級スルーパスは、開いた口が塞がらない、よだれが出そうな垂涎ものの好パスだった。
直線では通らない場所に、弧を描いて、相手には届かないけど味方の足の前にピタリと届く、贈り物のようなパス。
こんなパス、そう何度も見られるものじゃない!
無形文化財にしてして保存しておきたいようなパスだった。
これで勢いに乗ったセレッソは、ほどなく逆転弾も叩き込んでみせる。
ガンバ陣左サイドでスローインとなったボールをガンバのセンターバック昌子源が拾い上げ投げ込もうとするが、味方選手が誰も駆け寄ってこず、素早いタイミングでボールを投げ込む事ができなかった。
昌子は「負けてんのに、なんでボール貰いに来ないんだ!」とばかりにラインの外側にボールを思い切り叩きつける。
なぜだか、これに味方が反応する。前線にいたガンバのフォワード、レアンドロペレイラが猛然と駆け戻ってくる。掴み合いになるところを仲間に静止される。
鹿島から海外移籍を経てガンバに戻った昌子源への思いが交錯する。
「鹿島なら、ディフェンダーにボールをもらいに来い」などといわれる選手はいなかったよね。
「負けてるのに、1秒でも早くマイボールでリスタートしようって選手がいないなんて!」
「これは、選手のやる気の問題じゃなくて、チームビルディングの問題だな」
大阪ダービーは、またひとつ熱い記憶を残して3−1でホーム、セレッソの勝利となった。シュート数14本対2本という一方的な試合だった。
そして話は埼玉に戻る。レッズ対アントラーズである。
スローインへの姿勢が全然違うのである。
試合を見て驚いたのは、埼スタのボールボーイ達のスピーディーな働きぶりである。
相手ボールのスローインの時は、わざともたついてボールをゆっくり渡すという噂のあるボールボーイである。笑
ホームチームへのボール出しは目を見張る早さだった。
試合中、ボールボーイ達の活躍に舌を巻いていた私だが、彼らがあのスピードでボールを渡しているのは、両チームの選手がラインから出たら走ってボールを取りにくるし、その間も両軍の選手は自陣に戻ったり、相手陣に入り込もうとポジションの取り合いをしているからなのだと気付いた。
少しでもトラップをミスしたら、相手選手が奪い時だとばかりに体を寄せてくる。スローインは、決して難しいプレーではないけれど、100%マイボールを確保できるわけでもない。
スローインで自分をマークに来た選手を剥がせば前が開く。
別な選手が寄せてきたら、味方の誰かがフリーでボールを待っているということになる。
ブラジルワールドカップで開幕戦の主審を勤めた西村雄一さんもさすがジャッジだった。
ファウルがあっても、ファウルを受けたチームに有利に動いていれば「プレーオン」と両腕を伸ばしていたし、相手選手に厳しく当たりすぎた選手には、倒れている選手に「一言詫びなさい」と、わざわざプレー地点まで呼び寄せて、双方が落ち着きを取り戻してからプレーを再開させている。
こうした球際での激しい肉弾戦は、やっている選手も感情が高ぶる(どつかれても、倒されても、蹴られても冷静でいられるという人がいたら教えてほしい)し、腹を立てて報復行為に出たりするケースがある。
西村主審は、一枚のイエローカードも出さずに、煮えたぎる情熱のぶつかり合いを捌き切った。
後半途中、鹿島アントラーズのセンターバック関川郁万がスライディングをして相手が上げたクロスを防ぎに行ったプレーがあった。
最初は流していたが、VARの結果「ペナルティキック」を与えた。
ペナルティエリア内で、確かに右手に当たっていたからだった。
手に当たったら即ハンドリングの反則というわけではない。
手に当たらず、クロスが放り込まれていれば、ペナルティエリアに走り込んだ選手によって得点機会が作られたかもしれないと判断したのだろう。
実際に、その後レッズの選手の手にボールが当たるというプレーがあったが、それは流していた。
また、コーナーキックからのレッズの得点を認めないという判断も秀逸だった。
あまりに綺麗に、ゴールキーパーの手の届かないところに吸い込まれて行ったヘディングシュート。
レッズゴール裏が大歓声をあげて喜ぶ中、「ゴールではないファウルがあった」と笛を吹く姿は神々しささえ感じた。
ボールをクリアしようとコースに入った鹿島の選手をレッズの選手が押して倒したために可能になったシュートだったことがリプレイを見て分かった。
結局試合は1対1の引き分け。
レッズは7試合連続の引き分けとなった。
試合終了間際の
「なんとしてもホームで勝ち点3を取りたい」
というレッズの怒涛の攻撃には胸が熱くなった。
誰1人として「引き分けでもいい」と思ってる選手がいないことは、90分を超えてなおもスプリントを止めようとしない様から伝わってくる。
シュートブロックに倒れ込む鹿島の選手の執念も素晴らしかった。
「猛攻撃守」
猛り狂ったように攻撃を繰り返すこと、他方、相手の全ての攻め手を封じ、矢折れ刀尽きる状態を作り出す守備を表す4字熟語。たった今私が創作した4字熟語である。新たな4字熟語さえ生み出す、故事として語る継がれるようないい試合であった。
鹿島も前々節は首位にいたチームだ。フロンターレに明け渡してしまった首位の座を取り戻したかったゲームだった。
レッズの順位は15位。6試合勝利が無いチーム。
2位と15位の試合には見えない、互角の死闘だった。
順位が上とか下とか、下馬評がどうとか、日本代表選手を怪我で欠いているとか、そんな言い訳を全て捨て去って、今いるベストメンバーが、もてる力を全て出し切って戦った試合だった。
「ベストを尽くす以上のことなんて出来やしない。だから、ベストを尽くすだけだよ」
試合後の選手の表情からはそんな気持ちが滲み出ていた。
解説者は、37,144人という入場者数を、死闘の理由に挙げていた。
「これだけのお客さんが見にきてくれたら、これだけの人に応援されたら、やってる選手も頑張らざるを得ないですよ」
応援は力になる。
応援には人を動かす力がある。
もう何度も確認したはずの、そんな当たり前をまた見せてもらって、性懲りも無く心を動かされた第14節であった。
7月2日(土)のJリーグ第19節
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