シューマンに学ぶドミナントとしてのdim7の使い方
以前『クラシックレコード蒐集日記』と題してシューマンのピアノ協奏曲のレコードについての文章を書いたのですが、クラシックについての文章というと、どうしても書き手による印象批評の側面が強くて、曲自体の和声的分析やコードとして捉えた文章を見かけることは多くないですよね。
クラシックをクラシックの話だけで終わらせず、コード進行などと絡めて考えたことを記録したら面白いのではないか?と思って、今回はdim7の使い方について書いてみます。
例えば、Bdim7はGの代理として使われることをご存知ですか?
ここではシューマンを例に考えてみます。
シューマンのピアノ協奏曲には、第2主題として以下のパッセージが流れるのですが…
この演奏では2:05の部分。美しい旋律。
フラットやらシャープやらが沢山使用されていて難しい印象を受けますが、意外と作りはシンプルで、この2小節間はGメジャーで1-5-4-1の進行になっています。(赤い部分が該当の和音)
ではなぜフラットやシャープが多用されているのかというと、それぞれの和音の前に全てdim7が入っているからなんです。
どれも続く和音の半音下の音をルートとしたdimと捉えられますが、これ実はドミナントとして捉えることができます。
例えば、ふたつ目に出てくるBdim7はG(ドミナント)の代理です。
Gに3度上を足し、さらに3度上を足した和音の、上4つの音がBdim7です。Gにテンションを加えていった結果 Bdim7ができあがる、と捉えると良いかもしれません。
つまり、Bdim7→Cの進行は、G→Cの進行の兄弟みたいなものです。
(楽典などでdim7=減7の和音はドミナントとして扱われるので、この部分は知っている方も多いかもしれません。)
戻ってシューマンの旋律を見てみると、dim7は全てドミナントからトニックへ解決する進行、5-1の進行として使われていることがわかります。
大きな1-5-4-1の進行の流れに、5-1の進行が毎回隠れている作りになっているということですね。
コード進行って難しいようで、分析してみると案外単純だったりします。今回もトニック・サブドミナント・ドミナントしか使っていないわけですし。逆に、シューマンは1-5-4-1の進行と5-1の進行だけでこの綺麗な旋律を生み出したと思うと、やはり作曲家はすごいなあと感服するばかり。
今後dim7を見かけたときは、これは何の代理なのかと考えてみると、コード進行の本質が見えてくるかもしれません。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?