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10年と8ヶ月 - スタートアップ創業10周年に際して2周目の挑戦に生かしたい教訓 -
創業したVideoTouch株式会社(旧Viibar社)が本日2023年4月24日で創業10年を迎えました!これもひとえに皆様からの長年にわたる温かいご支援、ご愛顧の賜物と深く感謝申し上げます。本当にありがとうございます!
10年という時間の中で経験できたものは膨大な質量であったと感じる一方、達成できたものに対しては悔しさしかないのが率直な気持ちです。それでも節目ですのでふりかえりと今後について書いておきたいと思います。
余談ですが、自分の周囲の同時期に起業したスタートアップの起業家を見てもIPOした会社、M&AでExitした会社、または辞めて別のチャレンジをされている人など、一つのサイクルが終わり次のサイクルに入っているように見受けられます。ゆえに体感ではありますが、10年というのは一つそういった時間軸なのかなと感じます(VCのファンド償還期間が10年が多いからでは?みたいな身も蓋もない話をされる方は自重ください)
また、タイトルにある8ヶ月とはVideoTouch株式会社に社名変更してからの月数です。弊社は同じ会社を母体にして2周目の挑戦をさせていただいているという意味で稀有な会社なので、その観点からも何か学びになるものが還元できれば幸いです。
7,000字を超える大作になってしまいました。前半は社史的な代物なので、興味のない方は教訓パート以降読んでいただくでよいかもしれません!
※文中、お名前が出てくる方もいらっしゃいますが、感謝している方のお名前をあげることが主旨ではありませんので、当然ですがこちらでお名前が出てこないけれど圧倒的に感謝している方もいますのでご了承ください。
駆け足でふりかえる10年
※ちなみに、所々出てくる写真はMBAの同級生ハマチさんがせっせか撮って送ってくれていたやつです!今までいっぱい写真を送ってくれてたけどフォルダに突っ込んで全然見てませんでした!すみません!今になってありがたみを感じています、感謝。
楽天、MBA、そして起業
ドキュメンタリーのテレビマンだった自分が、これからはインターネットの時代だ、自分でインターネットと映像に関わる会社をやってみたいと思い、そのための武者修行で飛び込んだ楽天でしたが、入社した2009年当時は野武士のような野心を持った人がゴロゴロいました。結果的に20代後半を楽天で過ごさせていただいたのですが、沢山の猛者と切磋琢磨し本当に色々な挑戦をさせていただきました。その時の経験、学んだベンチャースピリッツが今の自分を間違いなく構成しています。
ただ思いの外その環境が居心地良くなってしまっていたため、自分のお尻に火をつける意味もあり仕事をしながらパートタイムで通える早稲田のMBAに入りました。MBAの授業で学んだことは、経営学という「潤沢にあるリソースをいかに適切にマネジメントするか」という前提が強く、なかなか起業フェーズで直接的に生かせたわけではなかったですが、それでも事あるたびに学びと実践がつながったこともありました。
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それ以上に、MBAで出会った先生や仲間との交流、課外活動的に取り組んだ起業ファクトリーや起業部の活動が、自身の起業のきっかけにつながっていきました。
例えば、起業部の活動では実際の起業家を誰かしらのネットワークから招待し、講演という形で話してもらってその後呑みに行きよりディープな話を深掘りさせていただくことを繰り返していました。当時MOVIDA JAPANをやられていた孫泰蔵さん、テラモーターズの徳重社長、ミュージックセキュリティーズの小松社長、サムライインキュベートの榊原さんが来てくれました。
実際の起業家やインキュベータの方と話してみて分かったのは起業してみないと何もわからないなと。いわば「無知の知」の境地に至り、そうしてMBAは一年で休学し楽天も退社し、MBAの同級生小栗と楽天のエンジニア松田、幼馴染の内藤の4人で2013年4月にViibar社を創業しました。
有明マンション時代
起業のテーマは自分自身のバックグラウンドにあった、インターネットと映像。一言で言えば映像領域での多重下請け構造の開放がテーマでした。
4人の共同創業者のうち、内藤と松田の2人がプロダクトをつくり、僕と小栗の2名が映像クリエイターとクライアント企業の開拓、そこから得られたフィードバックをまたプロダクト開発に反映していく毎日が続きました。
当時は、僕の楽天時代の友人が急遽インドネシアに駐在になったために、彼の有明のマンションの一室をオフィスとして借りていました。家なので、風呂・ベット完備だったので文字通りそこに寝泊まりして寝食を忘れて事業に打ち込んでました。
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ただ、2013年当時は今のようにスタートアップの起業についてオープンになっている情報は少なく、手探りの毎日が続き手応えと同時に焦りのようなものも日々大きくなっていっていた気がします。
Open Network Lab
そんな中、以前シリコンバレーのEvernote本社に外村さんを訪問させていただいた時に、シードアクセラレーターという存在を教えていただいたことを思い出しました。また、日本でもY Combinatorのような存在としてOpen Network Labというものがあるらしいことも知りました。
ちょうど当時Qiitaを運営していたIncrements社の共同創業者の横井さんが楽天時代の同僚でOnlabのプログラムを受けていたので早速お話を聞きにいったところ、強くプッシュしてもらい応募することになります。
結果なんとかOnlabの7期生として採択いただき、3ヶ月後のデモデイ(投資家やプレスが沢山集まるピッチイベント)に向けて色々な方にメンタリングしていただきながらプロダクトを磨き込んでいく日々が始まりました。
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今やSaaSといったらこの人の前田ヒロさんをはじめ豪華なメンターや先輩に壁打ちさせていただきフィードバックをいただけた機会はとても貴重で、ここでスタートアップとしてのイロハのようなものを学ばせてもらったと思います。
当時、採択企業の顔ぶれも豪華で、Increments社と同じ代には当時FRILLを運営していたFablic社がいたり、自分の後の代ではSmartHR社があったりします。WHILLの代表の杉江さんとは浜松出身の同郷でもあり友人として仲良くさせていただいてますが、思い返せば彼との出会いもOnlabでのメンタリングがきっかけでした。Onlabすごい。
デモデイでは結果的に最優秀賞にあたる「Best Team Award」を受賞させていただくことができ、その場でお会いしたグロービス・キャピタル・パートナーズの高宮さんに翌年年始に出資いただくところから、事業拡大の狼煙が上がっていきました。
事業と組織の拡大
その後はちょうど動画広告の市場が垂直的に立ち上がっていく中で、ロードマップに従って請負型のクライアントワークの拡大、映像コンテンツの流通最適化の支援など事業規模、事業領域を拡大していきました。
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一社で実現できない部分はプラットフォーマーやメディアと協業しエコシステムを構築していく戦略の下、各領域のトップティアの企業とも資本業務提携を推進しました。間違いなくWeb動画という存在していなかった市場を創造していったトップランナーだったと思います。
当時、Viibarで生み出された映像が、第71回広告電通賞 Webムービー部門にて最優秀賞を受賞したことはクラウドソーシングの仕組みといういわゆるローエンド型破壊のプレイヤーであるViibarが一つのキャズムを超えた象徴的な事例でもあったかと思います。
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事業成長の鈍化と組織の崩壊
一方で、事業規模の急速な成長にプロダクトや組織は追いついてこれていませんでした。これら「芯」の部分がしっかりしていないと事業の成長にも踊り場がきます。
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当時はすでに労働集約のビジネスモデルが圧倒的な比率を占めていました。労働集約ビジネスにおける再現性の拠り所は徹底的な組織オペレーションの磨き込みです。いっそのこと、「特徴的な広告代理店」だと自分達を位置付けて徹底的にオペレーションを磨きこめば、そういった会社として成立することはできたと思います。
が、そこまで振り切ることもできず、あくまでプロダクトで勝負するんだというポーズと実際には異なる事業成長のドライバーの乖離に、特にエンジニアは辞めていってしまいました。また、組織全体も急拡大に耐えられる文化や規律が育てられておらず、キーマンが辞めてしまったりと組織的にも逆風が吹き始めていました。
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また、より俯瞰した視点から見ると、ローエンドから参入したViibarが継続的な改善を続ける中で、ミドルレンジになってきており立ち位置が曖昧になってきていたという状況もありました。
再生とピボット
そんな中でも残ったメンバーが奮闘してくれていくつかの有望な事業が立ち上がっていきました。組織が逆境の時の方が、人としての成長はむしろ大きいという実感はこういう経験からきています。
また、自分自身がなんとしてもやりたかった「プロダクトで勝負する」という原点回帰のミッションのために社長直下のプロジェクトを立ち上げ新規事業を立ち上げていきました。これがVideoTouchに繋がっていくことになります。
最終的にはVideoTouchへのフォーカスを決意し、他事業については他社に事業売却等を実施させていただくことになるのですが、この辺りの詳細は下記の記事で書いているので知りたい方はそちらをご覧くださいませ。
Viibarから生まれていった事業やそこで働いてくれた人が今別の会社だとしても活躍していることを聞いていつも嬉しい気持ちになると同時に負けてられないなと刺激をもらっています!
VideoTouch社としての2周目の挑戦
こうして昨年8月に事業を完全に一本化、社名変更に合わせてフェムトパートナーズ、プレイド社から資金調達を行い、2周目のチャレンジをしています!資金調達時のブログにも書きましたが、磯崎さん、曽我さんはじめフェムトパートナーズの皆さんには貴重なチャレンジの機会をいただき本当に感謝しています!しっかり結果でお返ししていきたいと思います。
いまはお客様も増えてきて、チームにも強力なメンバーが続々とジョインしてきてくれています。ちょうどViibar時代からのメンバーとVideoTouchしか知らない人が半々になってきたのですが、この10年で得た学びを生かし、また新しいメンバーがもたらしてくれる化学反応と合わせて、芯から強いカルチャー、チーム、プロダクトづくりが徐々にですが出てきていることがなによりの喜びです。
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2周目挑戦で絶対にブラしたくない教訓Top5
ざっと、こんな10年だったわけですが、明らかに自分の人生で時間単位の経験量が最も多い時期であったことは間違いないです。学びが経験から生み出せるものだとするならば最も学びを得られた期間とも言い換えられます。
そんな10年を経て自分自身がこの2周目の挑戦で絶対にブラさずにしようと思っている教訓のTop5をまとめてみたいと思います!
1. 「スケールしないことをしよう」は真なり
ポール・グレアムの「スケールしないことをしよう」という教えがありますがこれは真なりです。スケールしていくために「スケールしないことをする」という意味ですね。
Viibarはアーリーステージでありがたいことに大型の資金調達できたりと恵まれた環境の中で、自分自身が見せかけのトラクションに惑わされたりして、結果最も外してはいけないプロダクトと顧客に対してのフォーカスが外れてしまった時期がありました。
だからこそ2周目の挑戦ではプロダクトセントリックな、チーム全員が事に向きあうチームをつくっていってますし、その最前線で自分自身が顧客の現場や課題にディープダイブし続けることを意識しています。
2. 毎日少しでも前進し続けること
スタートアップは短距離走のように見えてマラソンに近いと思っています。もっと言えば登山に近いと思っています。それも極めて険しい山のそれです。
山を登り進めていくと、快晴で暖かい日もあれば、吹雪で寒く視界が遮断されてしまう日もあると思います。どんな日であっても少しでも前進することが大事です。何のトラクションでも良いです。一つの学びでも良いと思います。ただし、毎日少しでも前進し続けることが重要です。
自分の好きな本「ビジョナリー・カンパニー4」の中ではアムンゼンの20マイル行進として出てきます。
三木谷さんの三木谷曲線も近しい意味と解釈しています。三木谷曲線はよりその蓄積が福利で効いてくるよという意味も含んでいます。
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これを毎日行うには悪い時に前進し続けるという努力だけでなく、良い時に変わらない規律を持つことが要求されます。
会社にはフェーズだけでなく、サイクル(季節)というものがあると感じています。これは個人投資家でありDeNA創業者の川田さんの言葉なのですが体感で正しいと感じています。どんな会社でも時間軸を10年単位で伸ばしてみたら、春もあれば冬もあるということ。
どんな日でも毎日少しでも前進をし続け、その進捗を噛み締めていきたいと思います。
3. 自分の強みと弱みを知ること、受け入れること、そしてオープンにすること
これ、シンプルなことですけど大変難しいことです。自分はある時までこれができていませんでした。会社のステージが変わり、優秀な仲間が集ってきてくれた時も、自分の弱みを開示して他のメンバーに補完してもらう、その分より強みにフォーカスしていくということができませんでした。
ただ、これは頭で理屈で分かったとしてすぐに実践できる類の話ではないので、この10年での人との関係の中でのどちらかというとハードな経験を通じて肌感覚を伴って理解できたことで、自然とできるようになっていったことではあります。
とくに、組織づくりで色々失敗した中で、徹底的に内省をした時期がありました。その中で、自分の弱み、また強みに向き合うことができ、そこからは等身大で周囲の人と関係が構築できるようになっていきました。
いまは、等身大で経営、人の強みを生かし、弱みを補完するチームづくりは自分の経営スタイルになっていると思いますし、VideoTouchという会社全体のカルチャーにもなりつつある部分かなと思います。
4. 自分を欺かない
自分に嘘をつかないこと。起業家も事業や組織が大きくなるにつれて背負うものが増えていきます。そうするとやらなければいけない仕事も増えていきます。もちろん、事業成長のために必要なことは全てやるべきですが、一定の規律を持ってやらないと責任でがんじがらめになって起業家こそが持つバイタリティや創造性を失っていくことに繋がりかねません。
ゆえに、芯の部分ではある意味わがままに、自分がドライブする状態にしっかり自分を置いておく、そのための努力を惜しまない。長くモチベーションを維持、燃やし続けるために必要と考えます。
5. ネバーギブアップ!
昨年の夏に社名変更と資金調達のリリースをさせていただいた時に、色々な方に「胆力すごい」的な反応をいただきました。自分では意識していませんでしたが、そう言っていただけると言うことはきっとそうなのでしょう笑。
自分が読み返す記事の一つに冨山和彦さんが書かれたこの記事があります。ここではリーダーに重要な資質に「胆力」が挙げられています。
ニーチェも言っているように「あなたを殺さないものはあなたを強くする」ので、これもまあ場数であるというのが身も蓋もないところではあるのですが、諦めない限りチャンスはあり続けると思います。
ちなみに、自分はレジリエンスという考え方も胆力と訳すのがしっくくるのではと解釈しています。
ネバーギブアップ!
さいごに
ということで、沢山失敗をしながらも学んだことをしっかりと2周目の挑戦「VideoTouch」に生かしていきたいと思います。
さて、次の10年を見据えると、日本では少子高齢化、人口減少がより一層進んでいきます。生産性の向上は至上命題である一方、現在の日本の労働生産性は世界でも28位と低迷しています(日本人の勝算)Generative AIはじめAIが日進月歩で社会実装されていく今、人しかできない仕事や価値の創造が生産性向上の鍵となります。
僕たちは、人しかできない仕事や価値の創造を「トレーニング」から支援していきます。AI、動画、データといった武器を活用して人が「できなかったことをできるようにする」ことで、人の可能性の追求、ひいては日本の生産性向上を実現していきたいと思っています!
そして、それを実現するべくチームも着々と強くなってきています。2019年に入社してくれた新卒メンバーがSalesチームのエースに育ってくれていたりする一方、VPレイヤーには素晴らしいキーマンが新しくジョインしてくれています。登ろうとしている山が大きい分、強いカルチャーのチームが必要になりますので、着実に素晴らしいチームをつくっていきたいと思います!
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ということで、つらつらと書いてきましたが、書いてきたような10年間の学びをしっかりプロダクトやチームづくりに注ぎ込み、グレートな会社をつくる挑戦をしているのがVideoTouch社です!
僕たちが大切にしている価値観やチーム、またプロダクトでやろうとしているビジョンに少しでも興味がわいた方は、ぜひ一度お話しさせてください!
採用情報は下からどうぞー
おわり