山門先生のオタクによるアニメ『村井の恋』のネタバレ長文感想
前置き
長年アニメオタクをやっていると、いわゆる「3話切り」作品がそこそこ存在するようになってしまう。
この「3話切り」作品は、積極的理由と消極的理由により生まれると筆者は考えている。
積極的理由とは、「つまらない」「自分には合っていない」という自らの積極的意思により、作品の視聴を辞めることを指している。
一方で消極的理由は、せわしない日々に追われ、気付ければどんどんアニメの録画が溜まっていき、いつの間にか次クールの季節となり、「なんかもういいか……」と気力がなくなった結果、作品の視聴が途中で止まっている状態を指す。
実は私にとって『村井の恋』は、消極的理由により3話切りの危機にあった。
しかし文化の日の3連休で遅れを取り戻し、『SHOGUN』を見ていた親のディズニープラスアカウントの恩恵にあずかり、最速配信で9話まで視聴した結果、どどどどハマり。
外伝を含めた原作漫画を速攻で全巻そろえ、今こうして長文の感想noteを書くに至っている。
それでは以下に、『村井の恋』の魅力を大きく4つに分けて紹介していきたい。
※なお、物語ラストまでめっちゃくちゃネタバレしているため、閲覧注意を。
作品にマッチしたJ.C.STAFFのコミック調作画
アニメ『村井の恋』の大きな特徴としてはまず、モーションコミック的な作画が挙げられるだろう。
同じJ.C.STAFF制作の『Back Street Girls -ゴクドルズ-』や『極主夫道』と同じテイストの作画である。
てっきりJ.C.STAFF×今千秋監督案件の専売特許かと思っていたが、今作ではなんと!山川吉樹さんが監督を務められている。
山川監督については、てっきり「トゥーンレンダリングのアニメ(『ハイスコアガール』『死神坊ちゃんと黒メイド』などのセルルックな3DCGアニメ)しか当面作らないのかな?」と勝手に思っていたため、この人選には驚いた。
このモーションコミック的演出は、「省カロリー作画」「手抜き」などと、演出意図が伝わらない視聴者に誤解される危険性もはらんでいる。
※『極主夫道』のインタビューで今監督が、
と述べているように、「コミック調演出」=「作画が楽」という訳では全くない。
このコミック調演出の大きな特長として、「アニメ化に際してキャラクターデザインがいない」=「原作の絵柄を忠実にアニメ化することができる」点が挙げられる。
たとえばアニメ10話で、村井の頑張りを山門主任が肯定するシーン。
著作権的にグレーではあるが、原作漫画ではどのように描かれていたか1Pだけ引用させていただきたい。
この顔と背景の極端な作画崩しをアニメでも忠実に再現できたのは、『村井の恋』がモーションコミック調の作画を採用していたからであろう。
モーションコミック調作画は、『村井の恋』のギャグ要素を最大限生かす、作風にマッチした作画と言える。
山門主任が好き過ぎる!!!
二つ目の推しポイントには、私が今作にドハマりした元凶も元凶である学年主任・山門由希の存在を挙げたい。
以下好き過ぎて、これまでと文章のテンション感が全然違う。
ビジュアル
まず癖っ毛の黒髪&たれ目というビジュアルがどストライク!!
あと黒ベストが似合い過ぎている!!!
このキービジュアル本当に最高だと思いませんか!!!!!!!!?
現実では特段喫煙者が好きな訳でもないのに、山門主任はタバコを吸う姿がまーーーあ映える映える。
言動
私が文化の日の3連休中に「『村井の恋』配信最新話まで追い付かねば!!!」と強く思った一番の動機は、告知ポスト1枚目の画像が気になり過ぎたから。
9話Aパートでの「思いがけない行動」、Bパートでの無意識に田中をかなり心配する様子、先述した10話で村井の頑張りを肯定するシーン、そして山門主任推しにはもう全てがたまらない11話……と、私も田中同様「主任のすべての行動がイケメンに思えて」きて仕方がないのである!!!
松風雅也さんの声とお芝居
これら原作漫画を忠実に再現した山門主任の魅力的な言動を、さらに魅力度マシマシに増幅させたのが、山門主任の担当声優である松風さんのお声とナチュラルなお芝居である。
山門主任の第一声を聞いて、そもそも私は幼少期から松風さんの声質がめちゃくちゃ好きだった記憶が、走馬灯のように一気によみがえってきた。
『ロックマンエグゼ』シリーズのブルース、『のだめカンタービレ』の黒木くん、『おおきく振りかぶって』の榛名など、私が小学生の頃に見ていたアニメの好きなキャラは総じてCV:松風さんだった。
なんならブルースに至っては、初恋のアニメキャラなまである。
先生つながりだと『宙のまにまに』の草間先生も好きだし、『SHIIROBAKO』のナベP(圧倒的下柳さん推しは譲れないけど)も好きだし、っウーーーーン…ヤバイなんか止まんなくなってきたぞ???
ここ数年個人的にアニメ視聴本数がガクンと落ちており、劇場版SHIROBAKO以来4年ほど松風さんの声を聞いていなかったため、この好みどストライクな声質のことをすっかり失念してしまっていたのである。忘れんな!!!
「このままだと『村井の恋』の最終回が配信されたら、松風さんの声をお聞きする機会が消失してしまう!」という焦りを覚え、先日同じJ.C.制作の秋アニメ『魔王2099』を急に見始めた。面白かった。なんであんまり話題になっていないんだこの作品。
松風さんは悪役ポジションのマルキュスを演じており、ナチュラルな山門主任とは対極的に「THE アニメ」的な感情をむき出しにしたお芝居をされていた。さっすが引き出しが広い。みんな『魔王2099』を見よう!松風マルキュスはいいぞあれ?私『村井の恋』の感想を書いていたはずなのに!!!!
……閑話休題。
あといよいよ私はこのままだと、松風さんのbayfmのレギュラー番組を聴き始める日も遠くないと思う。もう私松風雅也ガチファンじゃん閑話休題してないじゃん。
"先生"としての矜持が感じられた引き際
話を本当に『村井の恋』に戻そう。
山門主任の一番の推しポイントは、桐山と平井も惚れた最終話での引き際である。
「愛する相手のためを思って自分は身を引く」というのは、恋愛漫画の当て馬キャラあるあるである。
しかし、山門主任が田中への恋情を断ち切る理由はそうではないのである。
先生として生徒のことを自然と一番に思えるその人間性が、山門由希というキャラクターの一番の魅力であると心から思う。
素敵なキャラクターを世に生み出してくれてありがとう、島順太先生……!
恋愛描写とギャグ描写の絶妙なバランス
あまりにも長過ぎた山門主任パートの次は、『村井の恋』における恋愛描写とギャグ描写の絶妙なバランスについて語っていきたい。
筆者は昔から少女漫画があまり得意ではなく、一般的に少女漫画の胸がキュンキュンする描写を読むと、なんだかむずがゆいような心持ちになり、純粋に楽しめないことがほとんどであった。
しかし『村井の恋』では、村井や山門主任からのアプローチに対して、田中が少女漫画ヒロインとは一味違った反応をしてくれるので、私の中でこっぱずかしい気持ちが消えていくのである。
(例:山門主任から自身の頑張りを肯定してもらった後の「惚れてまうやろがい」以降の一連の流れなど。)
島先生の天邪鬼な性格のおかげで、私は『村井の恋』にハマることができたのだと思う。
またコメディー色の強い恋愛漫画の場合、ともすれば恋愛要素がおまけ程度になってしまうこともある。
一方で『村井の恋』は、ギャグをぶち込みまくりながらも、軸の恋愛要素が薄まることはなく、キメるところではきちんとキュンとさせてくれる。
(山門主任が大好きなので、11話は本当ーーーに悶えまくった。)
まさに「エクストリーム胸キュンラブコメ」なのである。
他者の肯定について丁寧に描かれる原作
『村井の恋』の推しポイント。ラストは、「ただのギャグ作品」ではないという点である。
この点についてはメインキャスト2名も、放送前のインタビューで同様の感想を語っている。
私が原作7巻を読みながら大泣きしたのが、アニメ12話にも登場した以下の田中のモノローグ。
この田中の心の奥の悩みをちゃんと山門主任は見抜いていて、だからこそ告白の言葉が
だったんだけれども、尺の問題でアニメでは私の好きな太字部分がカットされているんだよな!!!!アニメで唯一悔しいところ!!!!!!
ただ、原作ではごちゃごちゃしていた文化祭編をすっきりまとめるなど、アニメという漫画とは全く別のメディアで『村井の恋』という作品をどうコンバートすべきか、ハイスコアガール信者の私が深く敬愛する山川監督を始め、制作陣の皆さんは本当に考え抜いて、上手に取捨選択してアニメ化してくださったと思う。
他にも原作コミックスでは、独特な感性で絵を描いていた桐山やメイクに興味を持っていた平井を村井が肯定したことをきっかけに、3人が仲良くなるエピソードが描き下ろされているなど、アニメや漫画本編以上に「他者を肯定すること」「ありのままの自分を対外的に表現すること」の素晴らしさが丁寧に描かれている。
アニメだけ、LINEマンガだけで『村井の恋』に触れているという方は、ぜひこれを機に原作コミックスも手にしてほしい。
最後に
本noteの執筆時点では、週末にテレビで山門主任初登場回が放送される予定である。
テレビでもう一度アニメ『村井の恋』を視聴し、大好きな山門主任の姿を堪能できることが、今からとても楽しみである。
皆さん『村井の恋』を見てください!