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天候を踏まえたマラソンでの水分補給方法の「正解」は?-直近の大会の気象データからみて-

 マラソン中に必要な水分補給量の予測対象として以下の大会を取り上げてきた。

・筑後川マラソン
https://sportdgstaka.world/2023/10/18/hydration_of_chikugogawa/

・富山マラソン
https://sportdgstaka.world/2023/10/21/hydrationoftoyama2023/

・福岡マラソン
https://sportdgstaka.world/2023/10/28/fukuokamhyd2023/

 今回の趣旨を簡単に書くと、これを書いている時点ですでに終了した、
・筑後川マラソン(2023.10.29)
・富山マラソン(2023.11.5)
における脱水量や必要水分補給量の予測に対する「答え合わせ」だ。つまり、現実の天候に合わせた場合、実際に必要と推定される水分補給量はどうだったか、予測との違いはどうだったかを示す回になる。なお、付記として、これまで取り上げなかった「下関海響マラソン」(2023.11.5)に関しても、実際の開催日の天気から適切な水分補給を推定する。
 条件は以下のとおり。

・時速10㎞で走る体重65㎏のランナーを想定(走破時間は4時間13分10秒)
・発汗の仕方は、私自身の2022年の走行・水分補給・体重変化、および走行時のWBGT(暑さ指数)の記録から求めた相関式に準拠。つまり、汗のかき方はこれを書いている「私」の身体条件に準拠する。
・WBGTの実績値は、OPEN-METEOサイトの過去データ(気温、湿度、日射量、風速)から計算して求めた。同サイトは過去の予測値も一定期間公開している。通行地点の緯度・経度に応じた気象台発表データはないため、同サイトの「過去の予測値」を地点ごとの実績値とみなした。
・上記のランナーのスタート時、10㎞通過時、20㎞通過時、30㎞通過時、40㎞通過時のWBGTの平均値を、走行中のWBGTの平均値とする。
・上記走行速度や体重を前提に、走行中のWBGTの平均値、コースの獲得標高及びスタート/ゴールとの高低差から脱水量、さらに必要水分補給量を割り出す。

 結果は以下のようになった。

(1)筑後川マラソン
・WBGT
 スタート(8:30):13.4℃  10㎞(9:30):15.2℃
 20㎞(10:30):16.4℃   30㎞(11:30):18.1℃
 40㎞(12:30):18.5℃
 平均:16.3℃
・脱水量
 4.4ℓ
 (幅を持たせて)
 50%の確率で4.0~4.8ℓ
 70%の確率で3.8~5.0ℓ
・必要な水分補給量の予測
 3.1ℓ
 1時間あたりの量:735㎖
・水分補給がない場合、12.4㎞(1時間14分34秒)でパフォーマンスが低下

(2)富山マラソン
・WBGT
 スタート(9:00):18.4℃  10㎞(10:00):20.5℃
 20㎞(11:00):19.9℃   30㎞(12:00):20.1℃
 40㎞(13:00):21.4℃
 平均:20.1℃
・脱水量
 5.5ℓ
 (幅を持たせて)
 50%の確率で5.1~5.9ℓ
 70%の確率で4.9~6.1ℓ
・必要な水分補給量の予測
 4.2ℓ
 1時間あたりの量:995㎖
・水分補給がない場合、約10㎞(59分50秒)でパフォーマンスが低下

 最初の予測値に比べてWBGTが低下した筑後川マラソンではこれに応じて水分補給量の推定値も低下した。富山マラソンはその逆になった。
 富山マラソンは11月にしてWBGT20℃超えになった。これは、マラソンにしては非常に暑い条件である。また開催日の11月5日は全国的に「異常な猛暑」が報道された。さらに富山マラソンでは、中間地点付近に高低差の大きい新湊大橋が存在する。旧ツイッターでも、ここで足を取られた、ここでスピードが落ちたとの報告が次々とあった。さらに、水分補給のためのコップが足りなくなったとの投稿もあった。やはり、天候に応じた水分補給予測の重要性を改めて感じさせる一方、新湊大橋のような極端な急勾配、極端な条件の反映が課題ともいえる。

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<追記>
2023年11月5日には、山口県下関市で「下関海響マラソン」も開催された。福岡県の2マラソンを取り上げるのなら、近傍で開催されるこのマラソンも予測対象として記事に取り上げるべきだったかもしれない。

同マラソンの詳細は下記の公式HPを参照。
https://kaikyomarathon.jp/

以下のサイトによれば同マラソンの獲得標高は192m。スタートとゴールは同地点なのでこの間の高低差はない。
https://gen-running.com/post-3057/

上記と同様に、下関海響マラソンについて脱水量、必要水分補給量を現実の天候をもとに推定すると以下のようになった。

下関海響マラソン
・WBGT
 スタート(8:30):21.9℃  10㎞(9:30):21.8℃
 20㎞(10:30):22.3℃   30㎞(11:30):22.2℃
 40㎞(12:30):22.1℃
 平均:22.1℃
・脱水量
 6.3ℓ
 (幅を持たせて)
 50%の確率で5.9~6.7ℓ
 70%の確率で5.7~6.9ℓ
・必要な水分補給量の予測
 5.0ℓ
 1時間あたりの量:1,185㎖
・水分補給がない場合、8.7㎞(52分29秒)でパフォーマンスが低下

 WBGTは、環境省の熱中症予防情報サイトでも「注意」にランクされる水準だ。この水準になると脱水量や必要水分量は多くなる。一方、1時間あたりに置き換えると「脱水量が体重の2%を超えない」ための最低の1時間あたり摂取量は1.2ℓ近くにもなる。単純計算では物理的に飲める量を超えているかもしれない。パフォーマンスが低下しても、ある程度速度を落として安全に走らざるを得ない水準になるかもしれない。

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