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「感性」の重要性への最近の気づきと反面教師のMLB

今後の「感性」の重要性:私の直近の経験

 私が参加している福岡市のスタートアッププログラム「Global Challenge」。選抜者が英語でピッチを行いトップ5がサンフランシスコのスタートアップイベントに参加し英語でピッチを行うのが、この研修の「売り」の1つと言える。先日、書類選考の段階でまずトップ10が選ばれた。タイトルや表紙しか現時点ではわからないが、全体に「感性に訴えるサービス」が上位を占めた感じがある。この件の続きはまた末尾に。

 そのちょっと前、小阪裕司先生のFacebook Liveを見た。YOUTUBEにもアーカイブのリンクが載っている。
https://youtu.be/9214aw7XH94
 その要旨は、以下の通り。
・コロナ禍の時代を経て、これからのビジネスは「便利なもの」「意味あるもの」のどちらかに振り切る必要がある。その真ん中は選ばれない
・どちらかに振り切って集中投資することが大事

 「便利なもの」は便利なものや火急なもの、「意味あるもの」は愉しいもので不要不急なもの。いわゆる「DX」は前社に該当する。データや分析、セイバーメトリクス的なものは前者になるだろうか。小阪先生が重視するのは、後者の「意味あるもの」だ。言い換えれば「感性」。

 この上記の2つの経験を踏まえると、ユーザーに訴えるには、これからは「感性」が重要視される一方、データやセイバーメトリクスはこれを妨げる「邪魔者」になってしまうのだろうか?

反面教師のMLB

 その「反面教師」が私に浮かんだ。私がファンである、MLBだ。

 MLBの課題の一つが、Z世代をはじめとする若年層を中心としたファン離れ、ファンの高齢化である。その理由として、試合時間が長すぎ、動きが少ないことなどのほか、私は、小阪先生の言葉を借りれば、「便利なもの」を重視し、「意味あるもの」「感性」が後回しにされるようになったことがあるように思えた。その「便利なもの」とは、「セイバーメトリクス」「データ分析」といえる。
 映画「マネーボール」に見られるように、21世紀に入っていこう、MLBではデータ分析を戦略に活用する流れが目立ってきた。打者により極端に守備位置を変えるシフト、「フライボール革命」と呼ばれるホームラン狙いのアッパースイングの浸透がその例であろう。「トラックマン」と呼ばれるトラッキング機器の浸透や映像解析システム、さらに組み合わせた「スタットキャスト」と呼ばれる仕組みの確立により、ボールの回転数、軌道、変化の大きさ、打球速度、打球角度などの細かなデータが入手できるようになった。MLB公式HPでは、ファインプレーの際の「キャッチ確率」や打球を追いかける野手の速さも表示できる。そして、各選手の投球や打球の傾向、1球1球の回転数や変化の大きさ…様々なデータがデータベース化されてその多くが公開されている。そして、ファンにもその細かなデータを楽しむ感性がついていった。私も実はその典型的な1人だ。
 そこでMLBに起こった弊害は何か…プレーが「三振かホームランか」の単純なものになってきたことだ。上記のデータ解析により、「失点の確率が一番低いものは三振、得点の確率が一番高いものがホームラン」という理論が定着し、それに従った投球やスイングが行われるようになった。守備シフトもデータに合わせたベンチからの指示が増えてきた。ここで失われてきたものは…そう、「感性」だ。結果、コアな層と野球を知らない層との分断が起き、球場に行っても試合を見ずにスマホばかりもてあそんでいる層、さらに競技に全く関心を持てない層を生んだように映る。それを助長したのが、実はファン自身かもしれない。私も含め、データ解析を称賛ばかりし、ひいきチームが負ければデータ分析技術も非難し、結果勝敗ばかりに走り…MLBの無関心層の目線に立てば、「なんて奴らだ」「別世界の人間」と思われる可能性がある。

 この弊害、実はイチロー氏も松井氏も気づいている。イチロー氏は2019年の引退時の記者会見の中で、松井氏は去年NYで撮影されたNHKでの上原氏とのインタビューでほのめかしていた。そして、先日ご逝去された水島新司氏の、Numberによる追悼記事。

《追悼》『ドカベン』『あぶさん』水島新司さんは少年野球マンガの何を変えたのか? 「野球は巨人」「打者は全打席ホームラン」が定番だった
https://number.bunshun.jp/articles/-/851666?fbclid=IwAR1Y9l49h0vDt9iHR5HPvfRMNlF6LfptmPGljTh_92D6VvRqxzYASFyGUBc

この3Pを引用させてもらおう。

 それまでの少年野球漫画は「投手は毎回、三球三振を奪い、打者は全打席ホームランを打てば勝てる」的な野球観が主流だった。昭和40年代、『巨人の星』でボールは消え、『侍ジャイアンツ』で硬球を握り潰し、『アストロ球団』では魔球でバッターを殺害してしまう殺人投法まで登場するなど、何でもアリな荒唐無稽路線こそが主流となりつつあった。昭和40年代後半はオカルトブームが到来。時期的にもそろそろ念力や超能力を持った選手が活躍してもおかしくはない雰囲気でもあった(実際にその手の漫画も存在した)。
 だが、昭和47(1972)年に連載スタートした『ドカベン』にて、水島先生は「野球を熟知した作者のみが可能な、絶妙なサジ加減の荒唐無稽」によるキャラクター作り、物語の展開で少年読者のハートを鷲づかみにしつつ、ルールや配球の妙などで、野球の魅力を伝えることに成功。野球強者のインフレを阻止すると同時に、後に続くリアリティをも重視しつつ、それでいて漫画ならではの荒唐無稽でワクワクさせてくれる野球漫画の礎を作った。

 そう、水島新司先生は野球の「意味あるもの」「不要不急なもの」「感性」に光を当てて、新たなファンをつくったと言える。そして、この前の『「投手は毎回、三球三振を奪い、打者は全打席ホームランを打てば勝てる」的な野球観』これが、データ重視やセイバーメトリクスにより、MLBが向かってしまった方向性ではないか。

 今、MLBはロックアウト中で、スプリングトレーニングはおろか、例年通りの開幕も危ぶまれている。これもマンフレッドコミッショナーなどの「感性」の欠如の問題かもしれない。労使双方とも「感性」を取り戻してほしい。

「MLB発セイバー・データ汚染」の私

 MLBを離れ、最初のトピックに立ち返る。
 私が出したGlobal Challengeのピッチアイデアは、はじめ書いた上位10位からは「落選」した。そんな馬鹿な…というのが正直なところ。そこで敗因を考えたら、思いついたことのひとつが「感性」。私のアイデアは、データを踏まえた予測を重視したもので、MLBの「セイバーメトリクス」的な観点で組み立てられたもの。スポーツビジネスで流行しているデータ、解析を応用したものと言い換えられるが、第三者にとって「感性」に欠けていたのかもしれない。小阪先生の言葉を借りれば「意味あるもの」に言い換えられるか。その背景には、「データ重視」「セイバーメトリクス」絶賛の志向に染まってしまった私の「悪い感性」があるのだろう。だから、いくらユーザー目線で言っても心の底からそうなり切れないのだろう。

 そのいい例があった。KBCアサデスの天気予報を「天気図がなく将来予測をイメージできないのでおかしい」と批判的にみて書いた過去のNOTE記事だけど、そもそもこの私の「感性」自体、一般人には間違っているのではないか。

天気予報の「UI」の方向性
https://note.com/clutchman/n/n39297c02d5f0

 というか、さらにいえば、私が応援するもの、サポートするものは、斜陽、沈みゆくものばかりで、上り坂のものはごく少ない気がする。その原因は、私自身、一般人がツイッターやインスタで興味あるもの、バズっているものには結構「鈍感」なことがあるかもしれない。そこも「課題」かな。


 そう書いてもね…私自身の気性は修正できても根本的には変えられないのも現実。そして、データやセイバーメトリクスが必要なもので、特にスポーツ界では選手のコンディション管理も含め大きく貢献しているのも現実。捨てることはもちろんできない。「データ」×「感性」この観点でビジネスアイデアをブラッシュアップするとなると、今度は小阪先生の教えに真っ向から反することになる。

 MLBファンじゃなかったらもっと感性を踏まえたユーザー目線に沿ったビジネスを考えられたのにな…でもMLBは捨てられないな…

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