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#007:結局Wacom Intuos Proにした話

おおしまやすゆき です。

Windowsをご使用の皆様、「11」にはもうアップデートされましたか?
僕はまだなのですが、準備にあたっておおよそ障害となるアプリケーションやハードの「対象外」は無く、問題が無さそうであれば2021年年末年始前後で思い切ってアップデートしてみようかな、と考え中です。

ただ1点、それまで使用していた「ペンタブレット」だけが、ドライバの都合上か「対象外」となってしまいそう。
長年連れ添った「Wacom Intuos 4」とお別れし、では代わりにどの機種をお迎えしようか、と悩んだ時のことを記事にしてみたら面白そう、ということで今回作成してみた次第です。

ここしばらく「イラストレーターだったら液タブ」みたいなムーブメントだった気がしますが、最近また「板タブ」もアツい気がしていますから。
よくあるレビューと言うよりは、超個人的なこだわりとただの利用戦歴となりますが、ご購入をお考えの方はよろしければご参考まで・・!

相変わらず長文の記事ですが、最後まで読んで頂けましたら幸いです。


おおしまやすゆき のタブレット歴

ペンタブレット、とかくずっと「板タブ」派の自分ですから、それなりに語ることが出来ることもありそうです。

使用歴は、だいたい次のような感じ。
繰り返しますが、長文ですのであしからず。

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《おおしまやすゆき タブレット使用歴》
[2003~2008年]
当時は大学2~3年生だったはず。
自分にとって初めてのマイタブレットは、

WACOM intuos2 (i-620USB)
(使用アプリケーション:Photoshop 7.0 / ペイントツールSAI)

たぶんこれだったのではないかと思います。
写真が残っていないかな、と調べてみましたが…1枚だけかろうじて映っているものをサルベージすることができました。

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…ブレたり、部屋が汚れていたり…なんか色々すみません。
実家のとある部屋での作業を撮った1枚なのですが、大学の長期休業の際、大学で支給購入のノートPC(これも自分にとっては初マイPC)とintuos2を持って帰省、接続して使用していたのを思い出します。
(自分の部屋じゃないのは、当時は確かネットのLANモデムがこの部屋にあって、ケーブルを自室まで伸ばす発想が無かったからじゃなかったっけ)

とまあ余談は置いておき、初タブレットintuos2の描き心地は可もなく不可もなくというところだったと記憶していますが、逆にそれが今考えると凄いなと。
SAIは今でも軽動作が愛されるソフトですが、大学生でも比較的手を伸ばしやすい価格で購入できますし、何より描画や起動の軽快さが好きで使っていました。
アナログ環境でコピー用紙や大学ノートに鉛筆やシャープペンでラクガキしていた自分が、スっとこの環境で絵が描け、違和感を覚えなかったことでデジタルイラストの世界に違和感なく入れたこと、そして転じてマイガジェットを得られた感動が大きくて、この環境をベースとしたデジタルイラストの世界にのめり込んでいきました。
中学、高校から憧れていたのは憧れていましたし。

実際、大学の卒業制作の課題作品作りにも大いに役立てた他、後にデビューのきっかけとなるイラスト集「虹色眼鏡」に収録されることになるイラストも、在学中にこの環境で制作を始めます。
僕はこんなに絵が描きたかったんだな!という感動すら覚えていました。
手が汚れないし、変に力を入れて握らずとも色んな色を使って絵が描けるし。
何より思い入れが強いのよ、デビュー機だし。

結局、このintuos2はプロになる前後、2008年の(次のセクションで触れる)とある出来事に遭遇するまで、オーバーレイシートが傷ついて尚使い続けることになります。



[2009~2016年]
イラストレーターとしてデビューさせて頂くその年に、とあるイラストコンテストに応募したところ、なんと優秀賞を頂く出来事がありました。
この時期に使用させて頂いていたモデルは、なんとその賞の副賞で頂いたものなのですが、

WACOM Intuos3 グレー(PTZ-631W/G0
(使用アプリケーション:Photoshop 7.0 / ペイントツールSAI / CLIPSTUDIO PAINT)

という、当時としてはそれなりのハイスペックモデルでした。
過渡期ではありましたが、映像や画面の企画が16:9に変化している時期で、その比率に見合う描画スペースを持った、普通のIntuos3よりも少し横長のモデルです。

とにかく世間に認められた嬉しさしかなくて、その証拠の品だ、くらいに思っていたので、本当に当時は命の次に大事なもののように扱っていました。
だって、現に今も続けているwebサイト掲載の「ポートレート」写真が、作業する手元を映す=ペンタブを映す構図になったのも、この宝物をどうやったら格好よく自慢できるかを考えた末のものだったんですから。

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▲当時のポートレート写真

手に入れたストーリー含めとても嬉しく、本当にマシンOSの動作推奨期限ギリギリまで使わせて頂いておりました。
記憶が確かなら、恐らくWindows7 ⇒ 10更新時にタブレットのドライバが動作対象外になってしまったんじゃないかな。
それこそプライベートや、当時転じて絵しか描けないような精神状態になってしまったことにも後押しされて一番絵を描くことにのめり込んでいた時期。
最終的にオーバーレイシート(描画領域に貼られたシート)もすり減ったペン先が付けた傷が広がって2回くらいボロボロにしましたし、最後はスライダーパッドが手あかなのかこぼしたコーヒーなのかでだいぶ汚いことになっていましたが、本当に骨の髄までしゃぶるように使い倒させて頂きました。
多少頑丈に当たっても全部受け取ってくれるような、懐の深い相棒でした。

何だか今思い出すと、今のマシンやアプリケーション間の不具合にみられるような誤作動も少なく、とても快適にデジタルイラストを描かせて頂けていた夢のような期間でしたし、その期間に自分の絵の力で手に入れたマシンで絵だけに集中出来た至福の時間でした。

今戻れるとしたら、この作業環境で絵が描けていたこの時期かなー、と言えちゃうくらいです。


[2016~2021年]
この時期は自分なりに「次のステップへ」が目標の、人間的にもイラストレーターとしても1個階段を上ることを課し、課せられていた時期で、デジタルイラスト界隈的にも色んな過渡期になっていて、色んなものって重なって、リンクしているんだなぁ、なんて改めて感じます。

人間的には結婚を見据えた交際と、伴う収入の高額、安定化。
イラストレーターとしても、まあそれとイコールというか地続きで、より世間に受け入れられる表現の習得や、業務での受け答えの正確さ、そもそもの業界やシステムの理解など、絵を描く以外のことを沢山身に着ける必要が出てきて修行の期間の始まりでした。
そんな中、先にも書きましたWindowsOSのアップデートに伴って、愛機である我がIntuos3は今後一緒にデジタルイラストを描くことが出来なくなりました。

当時は本当にお金も無く、贅沢をすれば最新機種であるIntuos Proも発売はされていたためもちろん候補として散々迷いましたが、結局落ち着いたのは

Wacom Intuos4 Large(PTK-840/K0
(使用アプリケーション:Photoshop CC / CLIPSTUDIO PAINT)

という2グレードくらい前の型品でした。
しかも基本的に潔癖症だったので、手が触るのが当たり前のタブレットにおいて、自分的に禁じ手にしてはいたものの、はやり金欠には勝てず、「中古品」を購入することに…。
せめても!ということでサイズだけはLargeを選ばせて頂きました。
このころは出張などが多く後にノートPCを新調していて、それ用、というか出張用に一回り小さなWacom Intuos4 Medium(PTK-640/K4も購入することになりますが、こちらも中古で後を追って買うことになります(一回中古に手を出しているので、もはや抵抗が無くなっているやつ)。
いずれもそこまでひどい損傷はなく、購入後ほっとしましたが、やはり手に触れるペンだけはどうしても気持ち悪く、

Wacom ラバーグリップ ACK-30002(ちょいと太く出来るグリップ)

を買って試してみるもやっぱりペン全体が気になって、

Wacom Intuos Proペン キャリーケース (KP503E)(新品のペン)

などを新品で購入し宛がって、ようやく自分の作業環境 ver.3が整いました。

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▲当時のポートレート写真

この頃からデジタルイラストを取り巻く環境として、使用アプリケーションやガジェットにも選択肢が増えて来ましたよね。
iPadにもApple pencilが登場して商業的に納めることの出来るクオリティで絵を描くことが出来る状況になってきた、つまり絵を描く環境が外に持ち運べる時代になってきたり、デスクでの環境にも液晶タブレットの足音が聞こえて来て、絵を描く姿勢・体勢がアナログの絵を描くときのそれとほぼ変わらないものにすることが出来るようにもなって来た。

そんな中、板タブレットを選択したのは単にお金が無かったことだけが原因ではなくて、板タブレットと歩んだ自分とデジタルイラストの時間は、この板タブレットで描画するスタイルになじみ切っていていたから。
そういう意味で、今後も世間が完全に液晶タブレット市場に流れていってしまわない(=板タブがこの世から無くならない)限り、生涯板タブスタイルを貫こうという誓いをを早くも立てていた気がします。
だって、圧倒的に体への負担と電気代、熱の影響が違いますからね。
出来るだけクリーンに、エコに出来るならそっちの方がいいよね、という考え方はありました。
(そう、余談ですが、使用目的が異なるためiPadの作業間環境はサブ的に支持派です)

肝心の使用感も、中古であることを除けば気になる部分もカスタムしているわけですので特に問題は無かったのですが、当時から今も続くアプリケーションとOS、タブレットドライバとの摩擦で時々起こる不具合との闘いがこの辺から激化したようにも感じます。

・筆圧機能が時々落ちる
・アプリケーションごとに微妙に読み取り方=ペンの走り方が異なる
など

デジタルで絵を描く人口が増え、描き方、付き合い方も多様性が認められて色んな媒体やソフトが出て来た。
そんな中僕のような往年のスタイルの維持を望む声も沢山あるだろう中で、声に応えるべく変わらないやり口も残して下さっている板タブ市場は素晴らしいと思います。
これら近年特に顕著な不具合とある程度上手にお付き合い出来ているのも、それまで同じタイプのガジェットを使い続けてきている自分の杵柄というかノウハウのお蔭という部分も感じつつ、でもやはりアナログの道具と同様、まさに手に馴染んだ道具は出来るだけ長く使い続けたい心理もある中で、そんな変化の激しい5年という期間、同じIntuos4を使わせて下さったWacomさんには感謝しています。

それこそ、この環境下でそれなりにお金も稼がせて頂きましたし、誰それの一生の思い出となるウェルカムボードとか、色紙の下絵なども沢山描かせて頂けました。
中古での購入ということは、新品で購入された元のマスター様の絵描き人生も併せて背負ってくれたということで、正にこちらも名機だなと思う3代目の相棒も、次のWindowsOSとの兼ね合いで使えなくなることが自分の中での別れの唯一の原因だったりします。
使用感はまさに安定のWacom時代を感じさせる「普通に良いもの」でしたし、ワンサイズ大きなものが当時連載させて頂いていたweb漫画の原稿を描くのにはとても相まって良く、重宝致しました。

本当にこの作業環境の時代に戻っても全然差支えないのですが、本音を言うと、新品の購入でIntuos4とは出会いたかった。
本当に頑張り屋さんだったと思います、二度の引っ越しにも耐えてくれてありがとう、大好き。


[2021年~]
そして満を持して先月購入させて頂いたのが、

Wacom Intuos Pro Large(PTH-860/K0)
(使用アプリケーション:Photoshop CC / CLIPSTUDIO PAINT)

でございます。
実はこれ、2017~2019年にお世話になったお仕事の現場で使用させて頂いておりました。
なので「まあ下調べする中で特にこれより良さそうなものがなければ絶対これにする」と決めてはいたのです。

使用感に関してはまだまだこれからお付き合いを重ねて…、というところではございますが、個人所有ではIntuos5を飛び越えてのProですから、早くも進化の恩恵を感じてはいます。
大きくは3つ。

【筆圧レベル】
これをあまり感じない、変わらないという意見もよく目にしますが、個人的には「どれだけキャンバスを引いた状態で細かく描き込みが出来るか」ということなのだと感じました。
明らかにIntuos4時代よりも引いた(縮小した)キャンバスに細かく描くことが出来ています。
僕も気にしていませんでしたが大きな恩恵です。
絵のバランスに関わりますしね。
ラフ制作とか凄く良いですよ。

アプリケーション間でのストロークの差
これはIntuos4を長く使い過ぎたため逆に感じてしまう進化なだけな気がしますが、主に使用しているAdobe PhotoshopとCLIPSTUDIO PAINT両間で、多少ペン位置に対する画面内のポインタの位置に差があったり、ストロークに対するカーソルの移動感に誤差を感じていたところが正直Intuos4の時代はありました(これ我慢しながら漫画連載していた僕は偉いと思うんだ)。
その両間の誤差が、Intuos Proに変えてからかなり無くなり消えたという印象。
特にCLIPSTUDIO PAINTでの線画が圧倒的に描きやすくなりました。
(感覚的にはIntuos3時代に限りなく戻ったイメージ)
これは漫画や線画を沢山描きたくなるモチベーションに繋がる良き変化です。

やはりWacomという信頼感
今や勢いが止まらないのが、海外メーカーによる各新ブランドのタブレット。
かつては質が…などと言われていましたが、昨今そんなことなさそうですよね。
正直今回Intuos Proと最後までどっちにしようかなと悩んだ機種があって、XcenselabsさんのBPH1212W-Aというモデル。
諸々のレビューでもかなり高評価で、見ていて相当悩みました。
結局決め手になったのは、Intuos4時代の作業環境からいかに変化少なく使い始められるか、なのですが、

Largeサイズが今のところ販売されていない
 └ 前環境より描画領域の小さなタブレットは基本考えられなかった
有線接続したい
 └ コードの挿し口位置と形状
  ・[Intuos pro] (右利きの場合)Intuos4と同じく板右辺(しかもコード先端がL型!)
  ・[Xcenselabs] 板上辺中央で挿し口L型ではない ⇒ 有線接続の場合板の奥にものが置きづらい:現状キーボードを置いているので自分にとってかなり都合が悪い
ペンの形状
 ・[Intuos pro] プロペンとプロペン2はほぼ同じ形状かつグリップも流用可
 ・[Xcenselabs] 形状こそプロペンと似ているが、グリップが付けれられなさそう

と、当たり前ですが同じメーカーであるWacom製のIntuos Proへの移行の方が、細かな部分で作業環境の変化が少なく、精神的な負担も少なそう。
正直、道具を変えることで今まで苦労して構築してきた、自分にとって最高だと思えるモノの配置、描画時の姿勢まで変える必要があるのはちょっと違いますよね。
…軍配が上がりました。

たぶん、お絵描き道具を買い替えるって、人が思うよりもとても大きい問題です。
単に性能うんぬんではない、タブレット以外のガジェットとの相性とか、ペンと手の相性とか、その辺も見極めを失敗すると、生産性に直結しますから。
なので浮気心も出ましたが、今までWacomさんでやってきたし、やっぱりWacomさん、という選択をするに至りました。

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▲さっそく撮影した最新のポートレート写真

また現時点でさっそく感じた不満点と言うと、ペン先の削れる速さが異常、というところでしょうか…。
新品なのでオーバーレイシートもまだまだ摩耗がなく摩擦があって良いのですが、1日作業するとペン先が削れてほぼ無くなってしまうペースに驚愕しています。
以前よりも柔らかくなっているのかな。
何かしらの策を考えなくては、と思っています。

とはいえ、不満点は今のところこれくらい。
やはり数年前に出たとは言っても最新機種、圧倒的に使いやすいですね。
彼との思い出も沢山語れるくらい、これからがしがしお絵描きしていきたいです。


最後に

いかがだったでしょうか。
半分備忘録、というかこういう側面の情報をどこかに残しておくのも良いかもなという考えで、せっかくの機会ですしまとめてみました。

お気づきの通り、基本的には作業環境変えたくない人間ですので、試行錯誤や道具の買い替えは少ない人間ですが、それでも必要に駆られ更新を重ねてかれこれ十数年で大きく4代目の変化を迎えています。

ポートレートの写真にちょくちょく写っている左手ガジェットも、時代を経て変化しているので、また機会があればそちらに関する記事も描かせていただこうかなと思います。

ペンタブ、重要ですよね。
これからも時代と対話しつつ、自分が満足出来る環境下での作業を願っています。


では、また別の記事で。

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