ワーグナー歌劇「ニーベルングの指環」の原作、ドイツ中世叙事詩「ニーベルンゲンの歌」のハーゲン像 Das Nibelungenlied :Hagen
ワーグナー歌劇「ニーベルングの指環」に登場するハーゲンは、英雄ジークフリートの急所(背中)を槍で突いて殺害する卑怯なキャラクターとして物語られています。しかし原作「ニーベルンゲンの歌」のハゲネは陰謀に長けた人物としてだけでなく、武人として誉れ高い男でした。
夫ジークフリートを殺害された妻クリームヒルトが、ハゲネへの復讐のためフン族の王に嫁ぎ、ハゲネら一族を祝宴と偽って呼び寄せたとき、逃れられぬ運命を悟ったハゲネは渡し舟をすべて叩き壊し(自国に戻る唯一の退路を断つ)敵国に乗り込むのです。
(第29歌章)クリームヒルトがハーゲン謀殺の計画を立て、取り囲むクリームヒルトの軍勢4百名なのに対し、ハゲネ勢はヴァイオリンの名手で武人の友フォルケールのたった2名。
しかし、クリームヒルト勢は恩賞で財宝をくれると約束されても、恐怖のため誰もハゲネと戦おうとしませんでした。
武士の一人が言った言葉。
「ハゲネのこと、若い時分から知っている。わしは22回の戦いで彼を見かけたが、それによってあまたの婦人が心から嘆く仕儀となったのだ。
ハゲネとスペインの武士とは幾たびも遠征を試み、ここエッフェルの許で国王のため数々の戦いをなし、それが幾度ということを知らぬほどであった。それゆえ人々が彼の名誉を認めるのは当然のことなのだ。
そのころ彼はまだ年が若かった。だが往年の若者が今はなんと老巧者となったことか。その後知恵が勝ってきて獰猛な男となった。それに邪にも手に入れたバルムンクの剣(ジークフリートから奪った剣)をたずさえている
Dennoch war der Recke an Jahren ein Kind.
Die Damals Knaben waren, Männer sie nun sind.
Er ist klug geworden , und ist ein grimmer Mann.
Auch trägt er den Balmung.Dagegen trete ich nicht an.」
「勇士たちは引き返していった。王妃クリームヒルトは情けなく感じた。」
ニーベルンゲンの歌を読むと、ジークフリートより「英雄」的でかっこいいハーゲン像が浮かび上がり、ハーゲンの見方が変わるかもしれません。私は原作のハーゲンが勇ましくて好きです。