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ハイネ「流刑の神々/精霊物語」~タンホイザー伝説より

「古代異教の神々は、キリスト教勝利ののち地下の隠棲場所に引きこもり、他の精霊たちと同居して、魔神的生活をおくらざるをえなかった。」

「ドイツ民族のなかでもっとも独特で、ロマンティックで奇異な響きを持っているのは、女神ヴェヌスの伝説である。(略)あの偉大な王の(ソロモンの)雅歌を別にすればヴェヌスとタンホイザーの対話よりもこまやかな愛情に燃えている歌を私は知らない。この歌は愛の戦いのようだ。そこには真紅の生き血が流れている。」

 ハイネ「流刑の神々/精霊物語」は、キリスト教がヨーロッパに浸透し、その非寛容性を持って古来ゲルマンの信仰を邪教として抹殺していった様相を描いたエッセー。古代ゲルマンの信仰は、森、山、畑、川と共に生きる農民たちの生活圏の中で、「こびと」「コーボルト」、「ノルネ」、「フェー」などの精霊伝説として民衆に伝承された。ハイネは、「グリム童話」を書いたグリム兄弟や柳田邦男の民俗学と同様、民族の文化や民衆信仰に光を見出そうとした。

 タンホイザー伝説が異教の神々の例として挙げられているのが、印象深いです。ハイネは自分自身でもヴェヌスとタンホイザーの詩を書いており、1834年パリで魅惑的なマティルデと激しい恋に落ちた事が、官能的情熱をもってタンホイザーの歌を書かしめたそうです。

 ワーグナーはタンホイザーを作曲する際、ユダヤ人であるハイネのこのエッセーを参照したのか個人的に気になりました。ハイネとワーグナーは文学的趣味が合いそうですね。

音楽は、ワーグナーのタンホイザー序曲。神々しくてとても好きな曲です。https://www.youtube.com/watch?v=mU4RVrJ-SRg

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