ラモー歌劇「イポリトとアリシ」 Hippolyte et Aricie
フランス・オペラの美学ー音楽と言語の邂逅 by内藤義博2017年10月出版
ラモーの歌劇「イポリトとアリシ」はラモーが50歳で初めて作曲したフランスオペラで1733年に初演されました。ラシーヌの古典悲劇「フェードル」から題材がとられていますが、義理息子イポリトを愛してしまった フェードルの嫉妬と苦悩を描いた原作に対して、このオペラではイポリトとアリシの恋物語に焦点が置かれています。
フランスバロックオペラの研究者である内藤義博さんによると、
(1)ラシーヌの古典悲劇「フェードル」とラモーの音楽悲劇「イポリトとアリシ」の違いについて、①後者は前者の語彙数半分、単語数3分の1、 ②神々、妖精、怪物、地獄などの驚異の可視化(ディヴェルティスマン)がオペラでは行われている、③ギリシャ悲劇では存在した合唱をオペラでは復活させている、④古典悲劇が数十行にもわたって準備する情念の頂点までの過程をオペラでは音楽が引き受けることで数行で達することが可能である、⑤オペラではオーケストラ伴奏が歌詞の意味内容を表現していると、述べています。
また、(2)リュリとラモーのオペラの違いについて
リュリの時代は、キノーの台本が音楽より大切で、リュリは劇詩の韻律、抑揚、拍子を音符化したにとどめるのにたいし(単純レシタティフ)、ラモーはレシの一部を「伴奏つきレシタティフ」にすることによって音楽に支配された個所を増やしたことにある。具体的には和声の理論家&実践家であったラモーは 「優しさ」、「悲しみ」、「嫉妬」「激怒」「後悔」、「絶望」、「喜び」のような登場人物の心理を、旋律によってではなくて、和声によって生み出し、重奏的で、劇的な、不協和音を取り込んだ。ラモーによって、実現された和声の豊かな音楽は、リュリの単純で甘美な音楽とは正反対のものであった、と説明しています。
(1)と(2)について今までわかりにくかったので、最新の研究書を読んで、疑問が解けてすっきりしました。
ともあれ、絶対王政時代の、フランス語の合唱あり、バレエあり、豪華なコスチュームありの華やかなオペラなので、もし良かったら鑑賞してみてくださいね♪イタリアもの、ドイツものとは違う良さがフランスオペラにはあると思います。
参考)ル・コンセール・ダストレ
エマニュエル・アイム(指揮)
収録時期:2012年7月
収録場所:パリ、ガルニエ宮(ライヴ)
注)2018年7月1日過去投稿記事です。
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