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心のビタミン、伊勢うどん:鬱病を救ってくれた味と人

伊勢うどん、それは私のソウルフードです。
そして、人生の師でもあります。

一口食べれば、ふんわりと広がる小麦の香りと、出汁の効いた甘じょっぱいタレが、体と心に染みわたっていく。コシがない、と言われることもありますが、私はその柔らかさにこそ、伊勢うどんの真髄を感じます。

特に、二日酔いの朝に食べる伊勢うどんは、まさに至福のひととき。胃袋をやさしく包み込み、疲れた体に活力を与えてくれます。それはまるで、古くからの友人に慰められているような、そんな不思議な感覚なのです。それは、私に人生のあり方を教えてくれました。

さて、そんな私の伊勢うどん生活を語る上で、欠かせない人物がいます。伊勢うどん大使でもある、コラムニストの石原壮一郎さんです。私が伊勢うどんに巡り会うことができたのは、まさに石原さんのおかげです。

私が初めて本を編集したとき、右も左も分からない私に、親身になって協力してくれたのが、石原さんでした。以来、30年近くもの間、公私ともに交流を続けています。

石原さんと伊勢うどんは、よく似ています。

ふんわりと柔らかく、口にした人を優しく包み込むような伊勢うどん。それは、おおらかで、誰に対しても分け隔てなく接する石原さんの人柄そのものだ。

私は、石原さんのことを、伊勢うどんのような人だと思っています。

私が鬱病を発症したときも、石原さんは、ときどき話をしにきてくれました。そして帰りにはいつも、伊勢うどんを持たせてくれました。その心づかいに何度感謝したことか。

伊勢うどんの優しい味に触れ、石原さんの優しさに触れ、私は鬱のいちばん厳しい時期をなんとかやり過ごすことができました。その頃は自死願望が強かったので、ある意味石原さんは私の命の恩人なのです。

以前、伊勢うどん活動について石原さんに聞いたことがあります。

「最初は、伊勢うどんという面白いうどんを個人的に楽しめればいいな、と思って始めただけだったんです」と、2012年に「伊勢うどん友の会」を設立したころのことを語ってくれました。

石原さんは、原稿書きの合間を縫って、伊勢うどんを食べ歩き、その魅力を発信し続けていました。すると、いつしか伊勢うどん業界の関係者や、伊勢の観光協会などから声がかかるようになり、イベントへの参加や、伊勢うどんに関する講演など、活動の幅が広がっていったそうです。

そして2013年、「食べるパワースポット『伊勢うどん』全国制覇への道」という書籍を出版。さらに、世界初の伊勢うどん大使に就任し、伊勢市観光協会から感謝状を贈られるなど、伊勢うどん界のキーパーソンとしての地位を確立しました。

「人生、何が幸いするかわからないですね」と石原さんは、そのとき笑っていました。

石原さんの人生は、「やればなんとかなるんじゃないか」の繰り返しで、ここまで来たといいます。

石原さんの伊勢うどん活動は、石原さん自身の言葉通り、興味を持ったことを楽しみながら続けているうちに、思いがけない幸運を引き寄せ、大きな成果へと繋がっていったのです。

私は、石原さんの活動を通して、伊勢うどんの奥深さを改めて知りました。

そして、石原さんのように、情熱を持って好きなことに取り組むことの大切さを学びました。

私が都内から関西へ引っ越して以来、石原さんにはお会いできていませんが、夏が来るとときどき私は思い出したように伊勢うどんを食べることがあります。

それは、伊勢うどんの味が好きだから、ということもあるけれど、石原さんとの時間の中で生まれた伊勢うどん的人生のあり方を確認しているからかもしれません。

「誰もが心の疲れを癒やし、そして再出発に向けて力を蓄えるための場所」
私はこのnoteを伊勢うどんのようなそんな場所にしたくて、毎日記事を書いています。

何かと生きづらい世の中ですが、伊勢うどんと心を許せる友人がいれば、人生の9割は大丈夫。

私はこれからも、自分の好きを追い求めながら、伊勢うどんのように生きていきます。そして、それを発信していきます。




 

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つくだとしお|書籍編集者×作家
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