不確実性への対応力を高める、組織づくりの新常識[チームアラインメント1]
ビジネスの世界で不確実性を扱う(共にダンスする)シナリオプランニングが脚光を浴びたのは、先世紀のことでした。今世紀に入るとますます世界の動きは複雑になり、綿密な計画だけではその状況に対応できなくなってきました。
かつて問題が構造的に解析できた時代
大問題は中問題、小問題に分解して末端の小問題が全部解けると大問題が解けるという時代がありました。
物事は比較的構造化しやすく、商品開発もしっかり計画、正しく実行することが重要でした。人も組織も機械のアナロジーで効率化できました。チームは決まったこと(割り当てられた小問題の解決)をそれぞれに確実にやり遂げればよかったのです。
複雑に絡み合うシステムを相手にする時代
ところが今や、社会も、市場も、商品も、あらゆる物事の構成要素が複雑な因果で絡み合うシステムになってしまいました。
その結果起きることを、例えば商品開発で言うと、「品質」を確保しようとしたら、互いに影響しあう多数の因子(-ilitiesと呼びます)の折り合いをつけねばならなくなったのです(下図参照)。あちらを立てればこちらが立たずという状況です。末端の小問題対策(つまり個別ilitiesへの対応)をバラバラに実施しても、対策の影響が思いもよらぬ場所で思いもよらぬ方向で表面化することがあります。
システムが複雑に絡み合っている現代、図のようにあらゆる関連因子が因果関係を持っているので、問題を単純に分解するだけのアプローチが通用しづらくなっています。社会においても、組織/専門家チームにおいても全く同様の構図が見られます。
ここでは予め定められた計画が役に立たない可能性があります。この複雑性は予測不可能だからです。
予測不可能な複雑性に対応する鍵を創るための因子:組織と関係性システム
"X-Events",2012 著者のJohn L.Casti博士は、このようにシステムの複雑性がもたらす予測不可能で影響が巨大で必ず発生する事象のことをX-Eventsと呼んでいます(突然の異常気象や経済の破綻など)。
対処については、組織の弾性力(レジリエンシ)が鍵であると言っています。これはあらゆる状況にあらかじめ対応を決めて事を進めるのとは正反対の姿勢です。
予め予測できないので、事象発生に応じて即座に必要な機能を判断、それらが繋がって体制をとり対応するのです。これを可能にするのは組織の関係性であり、普段からの深い、広帯域なコミュニケーション(別記事)です。
前述のilitiesへの対応も関連部署や機能が互いに有機的につながって即応体制をとって問題に対応していくほかはなく、その瞬間にその検討を可能にするハイアラキによらない繋がりがこの上なく重要になってくるのです。
関係性は複雑性システムを生き抜く鍵
実は現代においては、チームや組織の関係性が、ビジネス上も解けない問題を柔軟に解いていく鍵です。
「関係性」というと、流行った「心理的安全性」という言葉も想起されて、昭和の飲みにケーションや、仲良しクラブのようなことを想像される方もいらっしゃるかもしれません。それも重要ですが、あくまでビジネスの成果を考えての関係性はもっと深く広帯域なものです。
John L.Casti博士によれば、X-Eventsに対応するレジリエンシーの反対語は、「効率性」だそうです。それは企業がこれまで最重要視してきたファクターではありませんか。その反対語のレジリエンシーを構築する「関係性」の構築にしっかり向き合うことがビジネスの成果、チームパフォーマンスの向上に結び付いているのです。
既存の概念をひどく揺さぶられるのもわかりますね。対応能力をつけようとする組織に外部支援者(システムコーチ)が必要なゆえんです。
関係性、安全性というものが、ビジネスを行うチームパフォーマンスとどう関係しているのか、はこの記事をご覧ください。