ロードショー中のエピソード
ロードショーって、まず言葉の響きがワクワクしますよね。
市場デビューの実感が少しづつ湧いてくる感じで。
この期間中、主幹事証券会社の会議室をベースに、彼らが用意してくれた車で機関投資家をまわって終日IRやりまくります。昨今はオンラインでやったりもするのかな。
ただ、始まって3日目くらいの朝にふと気が付きます。
朝から夕方までびっしり外出で、仕事の時間が全く取れないことに。
夕方最後の訪問が終わると、社長からは
「反省会がてら、軽く飲んでから帰りますか?」といったゆるい言葉が。
いやいや、こっちはこれから仕事本番だから。
しかも上場直前で現場はドタバタ、通常の倍以上の負荷です。
やがて、毎回同じアイスブレイク、同じタイミングでの問いかけ&同じギャグに、愛想笑いで付き合う余裕もなくなってきたあたりから、隣でこっそり仕事をするようになりました。
そんなある時、メンバーから至急の指示を求めるメールが。
やむを得ず、社長の話を適当に聞き流しながら、そこそこ長文のメールを返すことに。
社長も横で私が関係ないことをやっていたのに気づいたのでしょう。
その訪問先からの帰り、いつもはとても温厚な社長がエレベーターのドアが閉まったとたん、思いっきり壁を殴ったかと思うと、
「人がしゃべってるときにタイピングの音させてうるさいんだよ、気が散って話せんわ」
と激怒。
私も反射的に、
「あんたは次の1軒終われば今日は終わりかもしれんが、こっちはそれから仕事スタートなんだよ、タイピングの音くらいで文句言うな」的な感じのことを言い返してしまいました。
きっとお互い限界だったんでしょうね。
仕事の場でガチで声を荒げたのは、後にも先にもこの時だけです。
そこからの車中どれだけ雰囲気が悪かったことか。運転手さんはどう思っていたんだろうか。
その後、その日最後の投資家訪問が終わり、会社に戻ってメンバーと夜遅くまで打ち合わせていると、ふらっと社長が差し入れを持って会社に戻ってきてました。(ちょっと酔っぱらってましたが)
一言、
「さっきはすまんかったです」
無事、元の温厚な社長に。
と、まぁ、上場前にはこういったエピソードであふれています。
全部良い思い出になっているのは、幸せなことだなという話でした。
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