見出し画像

(45141文字)初学者でも堂々と指導ができる「呼吸のイロハ」(胸郭システム、痛みと呼吸、インナーとアウター、ポリヴェーガル理論からの視点、横隔膜の機能解剖、FMSと呼吸の関連など)



追記2023/12/09)タイトル変えました!新人、若手でも呼吸が苦手意識を持つことなく、かっこよく指導できるようになってほしい!ぜひ読んでくださいね!


追記:2024/05/16)
上に、noteのリンクを貼っております。どれだけ学んでも、ガイドライン通りに全てが行くわけじゃないもどかしさ、奥深さ、悩ましさを綴っています。よければ読んでください。

アスリートを中心に呼気エクササイズが浸透してきているように感じます。
団体として、PRI、DNSなどが有名どころで、海外で呼吸の研究をしながら普及活動しているようです。

もちろん日程を合わせて講習会に出ればいいんでしょうけど、、
・金銭的なハードル
・場所的なハードル
これらは必ずついてまわると思います。

自分は周りに資格者がいて臨床に取り入れているため、お金をかけずに概要を学ぶことができました。
そのため、あまり的がずれた情報を取り入れずに独学に励めるのかなと思います。
足りない部分も本家団体の方からしたらもちろんあるでしょうけど、なるべく臨床に役立つ、根拠がある、そして安価で手軽。
これらを目指して、まずは自分の持っている情報を出していきたいと思います。

追記)2022年は本家のセミナーを受講しました。当然その内容を直接出すことはできませんが、独学で得た情報たちは間違いではなかったと感じています。なので自信としてはより深みが増しました。
また、臨床での効果もやはり感じています。


呼吸との出会いと背景、挫折

学生時代から多くの資格を取得し、様々な現場経験も積んできました。

オンラインサロンでの活動も重ね、多くの患者さんからは感謝と指名を得ていたと自負していました。しかし、全ての患者さんを治すことができたわけではありませんでした。

特に一人の患者さんが、僕の治療で改善しなかったことから、他のスタッフに変更を求められたのです。

そのスタッフが取り入れていたのが「呼吸エクササイズ」でした。この方法によって、その患者さんは良くなり、僕は大きなショックを受けました。

それがきっかけで、呼吸エクササイズの重要性に気づき、その学びを深めることを決意しました。

最初は先輩がずっと面倒を見てくれて、一緒に評価して治療して評価して治療してと繰り返していました。呼吸の微細な評価や治療方法を学び、臨床でのアプローチが根本から変わり始めました。

代償動作の理解も新たなものとなり、従来の治療法では見過ごしていた患者さんの症状改善につながることが増えました。


そうしていると見方、見え方が変わってきました。ヒト全体のシステムを考慮するようになり、代償動作の考え方が変わりました。呼吸の勉強を通じて、臨床そのもののスタイルが変わりました。

従来のやり方でうまくいくこともありました。従来の方といってもそれ自体も練習や勉強は繰り返していますから。

しかし、やっぱりうまくいかないときに遭遇します。そんなときに、今度は役に立ちました。呼吸エクササイズを通じて、症状の改善に繋げることができたのです。
実際に、一度は担当を拒否された患者さんも、3ヶ月の間に呼吸エクササイズを通じて活動的になり、症状が改善していきました。

その方はどちらかというと厳しい方で、さらに、以前に担当拒否をされた方を彷彿とさせるものが正直ありました。「この仕事をしてよかった」と心から感じる瞬間を迎えました。

この変化は僕自身の治療スタイルだけでなく、患者さんのアウトカム、特に生活の質にも大きく影響を与えました。以前は難しいとされた(思っていた)ケースでも、呼吸エクササイズを通じて、明確な改善を見せる患者さんが本当に増えました。

今でも定期的に学びを続け、呼吸エクササイズを含む治療アプローチを体系的に構築しています。スクラップ&ビルドを繰り返しながら、日々新しい知見を取り入れ、患者さん一人一人に最適なケアを提供しています。

呼吸エクササイズの効果や学びの重要性がより明確に伝わり、読者が呼吸エクササイズに興味を持つきっかけになると思います。

↑インスタでも解説してます!!

追記:2023.8.28)ライト版呼吸のnoteを書きました!その名も「呼吸の教室」。まずは気軽に、という方おすすめです。

では、本題です。どうぞ!



導入〜呼吸とエビデンス〜

色んな研究がされています。後半のnoteを読みながら、このへんの研究も思い出してもらえるとより楽しいかなと思います。

呼吸は生命の基本的なプロセスであるだけでなく、人体の様々な生理学的および心理学的プロセスに深く関わっています。

特に筋骨格系の健康と機能において、呼吸パターンとその制御の役割は重要であり、多くの研究によってその関連性が明らかにされています【1】-【5】。

呼吸メカニズムと筋骨格系

人間の呼吸メカニズムは、ガス交換のために設計されていますが、横隔膜、腹部、胸郭の筋肉がこれを制御しており、これらは筋骨格系と直接的に関連しています【2】【3】。
Hodges et al.による研究では、呼吸が脊椎の安定性に影響を与えることが示されており、特に横隔膜の活動は腰部の安定性に対して重要な役割を果たしています【1】。

呼吸不全と筋骨格系障害

呼吸不全、特に慢性的な呼吸パターンの乱れは、腰痛や他の筋骨格系障害の発生や持続に影響を与えることがあります。

これは、不適切な呼吸パターンが筋肉の緊張や姿勢の不均衡を引き起こし、それがさらに筋骨格系の痛みや機能障害を誘発するためです【4】【5】。

呼吸の臨床的評価と介入

臨床的な設定においては、呼吸の評価は患者の筋骨格系の評価の一部となるべきです。

これには、呼吸パターン、呼吸筋の力と持久力、そして胸郭と腹部の動きの評価が含まれます。

また、HodgesとSapsfordは、筋骨格系の障害に対する呼吸介入の有効性を示しており、特に機能的な呼吸トレーニングが腰痛患者のリハビリテーションに有用であることを報告しています【1】【5】。

呼吸と腰痛

腰痛は世界で最も一般的な健康問題の一つです。多くの研究が、腰痛と呼吸パターンの関連性を探っています。

例えば、Hodges et al.による研究では、腰痛患者は非患者に比べて異なる呼吸パターンを示すことがわかりました【1】。

この発見は、腰痛管理における呼吸介入の潜在的な価値を示しています。

呼吸の再教育とリハビリテーション

リハビリテーションにおける呼吸の再教育は、慢性腰痛の改善に重要な役割を果たす可能性があります。
Sapsford et al.は、骨盤底筋と腹筋の同時活動を促進する呼吸介入が骨盤底機能と腰痛の状態に良い影響を与えることを発見しました【6】。

このエビデンスは、筋骨格系の障害の治療における包括的アプローチに呼吸トレーニングを組み込むことの重要性を強調しています。

腹腔内圧と腰痛

内腹圧は腰痛と密接に関連しており、呼吸は内腹圧の調節に直接的に関わっています。
Hodges et al.【1】およびCresswell et al.【7】の研究は、呼吸活動が内腹圧の変化に影響を与え、それが腰部の安定性に寄与することを示しています。

したがって、適切な呼吸パターンの促進は、内腹圧の管理と腰部のサポートを改善し、腰痛患者のリハビリテーションに有効です。


呼吸、ストレス、筋骨格系の痛み

ストレスは筋骨格系の痛み、特に腰痛の重要な要因です。BarkerとBriggs【8】は、ストレス時の呼吸パターンの変化が筋緊張の増加と関連していることを示しました。

この変化は筋肉の不均衡を引き起こし、痛みや不快感につながる可能性があります。

さらに、Louw et al.【9】は、治療的神経科学教育を通じて患者の痛み認識を変えることが、ストレスと痛みの経験を管理する上で重要であると指摘しています。このアプローチには、効果的な呼吸パターンを学び、適用することが含まれます。




姿勢、呼吸、筋骨格系の健康

ここから先は

41,863字 / 8画像
この記事のみ ¥ 1,500
期間限定!PayPayで支払うと抽選でお得

よろしければサポートをお願いします! しっかり投稿に還元していきます!