新聞紙を敷いて観たもののけ姫
1997年の夏休み、TOHOシネマズで「もののけ姫」を観た。
父、母、私、弟の4人で出かけ、「ロスト・ワールド/ジュラシックパーク」をみる母弟チームと、「もののけ姫」をみる父と私チームに分かれた。同日公開の2作でどちらも人気絶好調だったが特に「もののけ姫」は宮崎駿が作るアニメの最後にして最高の作品であるという噂や、アニメーション技術の進化と豪華な声優陣も話題を呼び、連日ものすごい人で溢れかえっていることをニュースで報じていた。
出かける前に父は「立ち見になるかもしれないから」と新聞紙を用意していた。
そう、立ち見…!
1997年の当時はまだ「流し込み」と呼ばれる制度が主流で、指定席でみるなんてことはなかった。
だから席がなくなれば、後ろの柵のところで立ち見をしたり通路に座って観たりしたのだ。
新聞紙は通路に座る場合に使うのだった。
父は「この映画3時間くらいあるで、もし立ち見になったら大丈夫か?」と心配していたが、娘の私は「大丈夫やろー」と軽い返事であった。
チケットは窓口販売のみ。
人気のある作品は、映画館の外にまで長蛇の列をなしているのも当たり前だった。
そのため、映画をみる日は朝早くから出かけていった。
「もののけ姫」は案の定、立ち見であった。
次の回に見送ればもしかすると座れるかもしれないが、ジュラシックパークチームとの待ち合わせもあるためそれはできない。ちなみに当時は携帯電話もないので、一度離れると時間通りに待ち合わせの場所に行く以外落ち合える方法はない。
入場までもずっと立って並んでいた為、足の疲労はピークに達していたが、ここで父親の持参した必須アイテム、「新聞紙」が役に立つ。
私たちは、通路の端に新聞紙を広げ、観賞することに成功した。
映画を観ている間は集中しており、あっという間だった。
後で無事に落ち合うことができたジュラシックパークチームに「どうやった?」と感想を聞くと「恐竜が突然わ!って出てきて怖かった❗」と言っていた。そういうびっくりしたり怖い系が苦手でジュラシックパークを選ばなかった私は心底自分の選択を自賛した。
しかし、よく考えてみれば、「もののけ姫」の後半に出てくる人面鹿の様なシシ神様やデイダラボッチなどの方がよっぽど怖い。怖いというか不気味である。だが私はどうやら不気味なものにはある程度抗体があったらしい。
そして、内容はといえば正直よくわからなかった。その当時は特に。
でも衝撃は受けた。
だから父と2人揃っての感想は
「なんかようわからんけどすごかったなぁ」
だった。
しかし、24年経った今でも鮮明に覚えているほど思い出に残る1日だった。
中学1年生の、夏休みの話しである。
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