理系女と文系男/特別編;ペーパーレスの方が実は資源を浪費している
資源の浪費を防ぐと称してペーパーレス化が推し進められ、昨今では電子書籍が台頭しつつある。
「紙に文書を印刷するのは時代遅れの悪いこと」のような風潮すら感じれる。
しかし、これは本当なのか? 私は疑問に思っている。
私が疑問を抱く理由は次の通りだ。
紙は一度印刷してしまえば、もうそれ以上資源を浪費することはない。
対して電子書籍は見る度に電気を浪費する。電気を得る手段は様々だが、最もメジャーな手法は化石燃料を用いた火力発電だ。
つまり、電子書籍を見る度に石油が燃やされて消費されている、と言っても過言ではない訳だ。
そう考えた結果、
「実はペーパーレスは却って資源を浪費を促進しているのでは?」
と思えて仕方なくなった。
これを数値で証明しようと、私は考えた。
ここで、以降に登場する単位の説明を事前にしておく。
J(ジュール)とは、熱エネルギーや電気エネルギーの量を示す単位である。
W(ワット)は電化製品などでお馴染みの単位だが、これは
『1秒間に何Jのエネルギーを消費するか』
を示す単位である。
つまり『消費電力100W』の機械を3分間動かした場合、消費する電気エネルギーの量は
100[W] ✕ 180[秒] = 18000 [J]
となる。
友人のスマートフォン(以下スマホ)の充電器に20 Wと記載されていた。
この値より、スマホを1秒間使うためには20 J の電気エネルギーが必要と仮定し、これを電子書籍を読む際の消費電力とする。…①
紙はセルロースという物質でできている。
セルロースは、多数のブドウ糖(グルコース)が結合して構成されているので、紙をブドウ糖に置き換えて考える。
ブドウ糖を呼吸で消費した場合、ブドウ糖180 g あたり約2881 J の熱エネルギーが得られる。…②
呼吸という化学反応は、有機物が酸素と反応して二酸化炭素と水に変化するという点では燃焼と同じだ。よって呼吸で生じる熱エネルギーの量を、ブトウ糖を燃やした際に生じる熱エネルギーの量として考える。
では、A4用紙1枚に書かれた文書を、紙で読む場合と電子書籍で読む場合について考えてみよう。
A4用紙1枚は4 g。つまり、4 gのブドウ糖と考えればいい。1枚のA4用紙を燃やして得られるエネルギーは、②より
2881 [J] ÷ 45 ≒ 64 [J]…③
①の値から考えると、このエネルギー量ではスマホを3.2 秒しか起動させられない。
(64[J] ÷ 20[J/秒] = 3.2[秒] )
3.2秒で A4用紙に書かれた文書を読みきるのは困難だろう。
A4用紙1枚に書かれた文書を、電子書籍で1分間読むのに必要な電気エネルギーの量は、①より1200 Jだ。
(20 [J/秒] ✕ 60 [秒] = 1200 [J] )
この量のエネルギーをA4用紙を燃やすことで得る為には、③より約19枚のA4用紙が必要である。
(1200[J] ÷ 64 [J/枚] = 18.75 [枚] )
これらの数値を見ると、やはりペーパーレスの電子書籍は却って資源の浪費を促進しているのかもしれない。
何でも最新技術の方が優れていると思い込まず、慎重に考えてより良いものを選んでいきたいものである。