長いものは巻け
権力とは人間にとって脅威であり、一種の憧れでもある。
時は大就職氷河期。
我々は完全なる子飼いだった。
上司からのパワハラ・モラハラは当たり前だった。
営業職だった私は、数字が悪いと上司から怒鳴られ、夜中まで残業させられ、ある時は灰皿を投げつけられた。
それが当たり前だと思っていた。
「長いものには巻かれろ」
なんて言葉、サラリーマンのためだけにある言葉だと思っていた。
あれから25年。
私は、その権力をある程度コントロールできるようスキルを得ていた。
「それはあなたの仕事なのであなたがやってください」
「だからあなたに誰も従わないんじゃないですか」
「あなたがそこまでおっしゃるなら私辞めさせていただきます」
本当に辞めたこともあった。
でも、きっと他に違った手段があったはずだ。
会社を、上司を脅し、おとしめたところで、私には何もプラスに作用しなかったのだと、最近知った。
私もまた、人に指導する立場になっていたから気づいたのだ。
もしあの日、自分が発した言葉が自分に返ってきたらどうだろう。
耐え難いものがある。
もしあの日に戻れるのなら、あの言葉たちを回収したい。
そしてこんな言葉をあの日の自分に届けたい。
「長いものは巻け」
権力に逆らえということでない。
スパゲッティは箸でなく、フォークで食え
という意味である。
箸で食うと日本人はほぼほぼススる。
ススるとソースが飛び散る。
そいつが権力であり、今の日本人の最大の脅威だ。