円安は国売り
日本は歴史的な円安に襲われている。遡ればコロナ禍と呼ばれた時代から、日本の円の価値の暴落を続けている。地政学的リスクに直面していない先進国の通貨としては、あまりにも異常な下げ幅だ。
本記は、その背景がどのようなものであり、その原因・責任が何処にあるのか、読者に理解いただきたく、寄稿する。
①Nisa: 株高を功績としたい岸田政権
Nisaは利用者の貯蓄・投資活用の枠組みと思われるかもしれない。それは間違ってはいないが、その制度が国によって推奨された本質的な背景は、端的言えば”株高”誘導である。もっと言えば「岸田政権化での”株高実績”」である。岸田は自身の政権化で株高を達成したと言いたいのである。
株高は通貨安をもたらす。しかもNisaは日本株だけでなく米国株を推奨する。これは日本円が放出され米ドル・米株を保有する流れだ。それはすなわちドル高・円安をもたらす力が強いということになる。
②米国金利: 日米の金利差を広げる日銀
アメリカ(ないし欧米諸国)が、インフレ抑制を目的とした金利上昇をここ数年おこなっている。金利が高ければ長期預金される。長期預金は通貨の流通を減らし、通貨高をもたらす。ゆえに米ドルの価値は高まっている。
逆に日本銀行は、”マイナス金利(またはゼロ金利)”を続けてきた。米ドルとは逆の動きである。結果として、米ドルの価値が上がり続ける反面、円は下がり続け、ドル円相場としては異常なほどの円安をもたらした。
また日銀は株の大規模な買い支えを実行しており、それは①による円安効果を加速させた側面が強い。
③円の信用喪失: 異常なボラティリティを黙認する財務省
元々円は”有事の円買い”と言われるほどの為替安定性・信用性が評価されてきた。しかしここまで述べた理由を背景に円のボラティリティ(変動幅)があまりな大きなものとなり、同時に「安定資産としての信用」を完全に失った。普通に考えてみてもらえればわかると思うが、価値があまりに上がったり下がったりするような通貨に自分の資産を委ねたくはない。それは国内在住者も外国の人間も同じ心理だ。それゆえ、元々存在していた円が買われる大きな動機が、人々の心から失われた。
原因と対策
以上の問題は、既に”通貨危機”との呼び声も高い。またこの規模の問題は国政による抑止や解決を必要とする問題だ。
一方、この状況を産んでいるまたは黙認しているのが、国の経済政策の主導である、岸田政権・日銀・財務省だ。
岸田首相が株高を誘導し、日銀がそれを支え、財務省はその結果の円安・円の信用喪失を黙認し続けた(為替介入は一度したが雀の涙程度。その後は口先介入のみ)。
円安がもたらすのは「国買い」だ。土地も企業も円安であるほど海外企業・投資家にとっては買いやすい。日本は今、”国策円安”により、盛大に売られている。
現状を主導しているのは、異常に支持率の低い岸田政権である。彼らは国内・国民からの支持を捨て、株高や外国企業、観光客の誘致によって、それを自らの功績として確保しようとしているのが明かだ。だから円安・実質賃金の低下を顧もせず、株高誘導をしている。
国のトップが自らの功績のために国を売っている。
これを売国いわず何と呼ぶのか。改めて考えて欲しい。