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(読んでみた)心はこうして創られる 「即興する脳」の心理学ニック・チェイター 講談社選書メチエ

 【読むことにしたきっかけ】
 Amazonが私の検索、購入履歴に紐づいてお勧めしてきた。レビューの数と星が多かったのと、「無意識の思考など存在せず、心は表面だけしかない」という説明に惹かれて購入。

【感想】
 正直に言います。難しくて読みにくい。著者や訳者が悪いわけではなく、この手の本は読みにくくなることが多い。もちろん内容が難しいこともあるのだが、表現が遠回りなのと、内容があまりかみ砕かれていないことがその原因だと思う。もしも書店で出会っていたら、ちょっと試し読みをして、最終的には買うのをやめるタイプの本。「ちょっと何言ってるか分からない」という部分が多く、理解するために立ち止まってしまうのでびっくりするくらい進まなかった。

 途中で何回か投げ出したので、この本を読み始めてから終わるまでに別の本を五冊は読んだと思う。Amazonで買ったことで(自分にとって)読みにくい本を手にしてしまったわけだけれど、買ってしまった手前頑張って読破したから、結果オーライだったのかは分からない。ただ、今回のことでやっぱり本は本屋で買ったほうがいいな、という結論になった。


 というわけで、難しい上に通しで読んでいないので浅い理解ではあるが、

 「心というものは、表面に出ている部分(つまりは認識できている部分)はほんの一部で、その大部分は水面下に隠れており、私たちはそれを認識することはできないが、まさにその部分が我々の思考や判断をつかさどっている」それが今までの考え方だった。しかし実は水面下に隠れている部分など存在しない。なぜならば心というものはその瞬間、その部分といった限定的なものしか認識することができないからだ。つまり心には表面しかないのだ。

 というのが本書の趣旨である。この話を補強するために様々な実験結果が紹介され、心というものは自分が思うよりも薄っぺらいものであるということが繰り返し説明される。

 じゃあ我々は何を使って判断をしているのか。さすがにそこまで書いてしまうとネタバレが過ぎるので控えておくが、終盤で、我々の判断を方向づけるシステムが明かされる。


 前半を読んだ時点で、心には表面しかないという著者の主張は理解できるのだが、そうはいっても「じゃあ私たちはどうやって色々なことを判断しているんだ」という疑問が生じる。その答えが最後に明かされたとき、正直なところ「いやつまりそれが水面下に隠れているものってことになるのでは? 」と感じてしまった。
 確かに私たちが普段イメージしている「水面下に隠れているもの」は、例えるならば「思っているよりも超絶賢い自分」なのだが、後半で明かされるのは「手札を探して当てはめる機能」みたいなものなので、明らかにイコールではない。しかしいずれも「無意識に様々なものをジャッジする存在」と言ってしまえばどちらも同じなのではないだろうか。つまり、「水面下に隠れているものは、私たちが思っているものとは違うものです」というだけの話なのではないか、と感じてしまった。

 何度も言うようだが、難しいし読みにくい上に他の本に浮気を繰り返しながら思い出したように時々開く、といったペースで読み続けていたので、本書への理解は非常に浅い。ただそれは、最初に本の紹介で読んだ時のワクワク感は、読み進めていくうちに消えてしまった結果でもある。

 そうは言っても「心って、思ってたんと違うで」という内容自体は興味深いものである。もうちょっと簡単に読みやすく書いてあればもっと楽しめたのにな、という感じ。難しい本や長い言い回しに慣れている人には面白いかもしれない。

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