図書館本 借りるのをやめて買った本②『北極圏一万二〇〇〇キロ』 植村直己

冒険家の植村直己さんが、グリーンランドのヤコブスハウンを1974年12月20日に出発し、およそ一年半後の1976年5月8日、アラスカのコツビューに到着するまでの、北極圏単独犬橇旅の記録です。

私が小学校高学年か中学生の頃に、子ども向け雑誌の、読者による本紹介のコーナーでタイトルを見たのが最初。それをずーっと覚えていましたが、未読のままでした。

図書館にあるのは検索して知っていましたが、開架ではなくて、すでに書庫に入っている本でした。そのうち出してもらおうと思いながらも、読みたい本が次々と目の前に現れるので、「心の積ん読」の一冊となっていました。

今更ながらでも、読んで良かったです!
面白かったー!(紹介してくれた少年、ありがとうっ。確か、男子だったはず。)

第一次南極越冬隊隊長の方が、序文で
「元来、真の探検家は危険を冒さないものである。」
「植村君には今日まで営々と築き上げられてきた探検家としての素養がある。」
「探検家は危険を避けるために出来得る限りの準備をロジックの上に構成する」
「身のこなしから始まり、心の持ち方、直感力等々の人間的能力――テクニックの体得を行い――」と述べられていますが、本書を読み始めてすぐ、

「おーい、危険は冒さへんのと違うんかーい!」
「それで大丈夫なんかーい!」
「引き返そうやーっ!」
「もうやめようやーっ!」
「さっきの隊長さん、なんとかゆーたってーっ!」
と、心の中で叫び続けることとなりました…

旅が始まって1ヶ月の間に・・・

  • まず、日本の出発が計画より1ヶ月以上遅れている。

  • まさかの、海が氷結していない。薄氷に怯える。…だから、

  • 雪のない数百メートルの高低差をを二度も越える。(300㎏の橇で…)

  • 寒さに順化していない。凍死の恐怖。

  • 犬の食料が欠乏…  そして、

  • 犬、一斉に逃走・・・「いっぺん自分で橇引いてみろやーっ!」と捨て台詞を残したかどうかはわかりませんが、犬11頭が、極寒&暗黒の世界に、300㎏の大荷物と植村さんを置いて走り去りました・・・

ほどなくして、リーダー犬のアンナ(雌)が5頭を引き連れて戻って来てくれました。
(「どう、これでこりたでしょう?」と、アンナが言ったかどうかはわかりませんが)
植村さんは「生きて還りたいのなら、もうこの旅は中止すべきだ。」と気分が落ち込み、なんと、ビールを買ってきて、テントの中で泣きながら飲んじゃいます…
(極寒の中でビール?!寒すぎるっ!と思いましたが、こんな時は飲んじゃうんだーっ、と親近感。)


そして、出発から1ヶ月半後…

頑丈な古氷上を進むべき、と知りながらも「思い切って」薄い新氷に橇を乗り入れてしまい、氷が割れる!
なぜそこで思い切ったーっ?!
荷物もろとも橇が水没!
水落ちから逃れた植村さんの手に残ったのは、1本のムチのみ!!
涙も流れますよ。

が、しかし、沈んだ橇が荷物も一緒に浮いてきました。
犬たちも無事です。
神様ありがとう!

まだ、グリーンランドも出てないうちに、最低2回は死にかけてます。
453ページの文庫本なのに、まだ95ページ目です。
ドキドキとハラハラで私の血圧も上がりっ放しだったでしょう。
(やっぱり、若い時に読むべきだったか…?)

旅の途中、色々なものをなくしたりするのも私は気になって、付箋を付けてメモしました。以下、紛失物一覧。

  • 石油ランプ 

  • 「トウ」・・・氷に穴を開けるための、ノミの付いた棒

  • カリブーのコリッタ(羽毛服よりあったかそうな防寒衣)

  • 羽毛のアノラック(あったかい服)

  • 50万分の1の地図 ―― とても大事なやつ

  • あったかいカリブーの毛皮のパーカ(フードの周りに白い狼の毛皮を、普通のものの倍の大きさにつけた特製品)

  • 犬の餌用(人間用にも?)にもらった3日分のアザラシの皮下脂肪

  • 麻袋(白熊の靴、カリブーの手袋が入っていた)

  • シュラフ

他にもあったでしょうね。
50万分の1の地図と、特製のカリブーのパーカはかなりショックだったようです。
読んでる私も落ち込みました。(特にその格好良さ気なパーカ)

文章がうまいんでしょう。どんくさい話(失礼っ)も面白く、引き込まれてしまいました。
こんな感じで、旅はグリーンランドからカナダ、米国アラスカへと進みます。(全行程を走り抜いた犬はアンナだけです!姉御~っ!)


ゴール目前でスピードアップして飛ぶように走る犬たちに、「やっと着いたんだ。ゆっくり、ゆっくり走れ。」と声をかける植村さん。
私も「ハーッ」と、安堵のため息をつきました。

この本を紹介してくれた少年に感謝しながらの、夏場にちょっと涼しい通勤電車読書となりました。(植村さんは汗かきまくってましたが…)







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