図書館本38冊目『闇の中をどこまで高く』 セコイア・ナガマツ
新聞の読書ページで紹介されていて、「暗い物語なんだろうなぁ」と思いながら、気になって借りてみました。なんせ「闇の中」ですもんね。
温暖化の影響で凍土から発見された、三万年前の少女の死体から広がった未知のウイルスに人類が襲われる近未来の話ですが、科学者達がウイルスと闘う物語ではありません。
大事な人を失い残された人、失いつつある人、それらの人々に関わる人、そんな人たちの物語がオムニバス形式で語られていきます。
新聞の本紹介や本書の帯でも興味を持ったのが、「余命わずかな子ども達をジェットコースターで安楽死させる遊園地」と「地球を離れて宇宙船で新天地をめざす人々」の話です。
上記の話はやはり興味深く、他の物語にもちらほらと同じ人物たちが絡んでくるので「あ、あの話に出てた人か…」「この名前はさっきの…」と、ページを行きつ戻りつしながらゆっくり読み進んでいきました。
コロナ禍を経て、このような死別だらけの物語を書かれたのだな、と思ったのですが、パンデミックの前にほとんど書き上げられていたそうです。
解説のところで、
「―― 作者の祖父が逝去し、その悲しみを癒やす一種の自己治療の試みとして書き始め ―――」
と書かれていました。
自己治療の試みとして「書く」。
小説家の方が書くと、こんな壮大な物語にまで発展してしまうのですね。
死を間近にして新しい人間関係が構築されたり、残された人間の関係に、深い亀裂や悔恨が残されたりするど、安易な癒やしや再生の物語になっていないところに現実味を感じます。
コロナ禍の物語ではないけれど、あの暗い数年間を思い出しました。
話が宇宙にまで飛躍し、宇宙移民船には「地球から582光年 飛行期間6000年」、別のところでは「数百万年後」とかいう言葉まで出てきます。
その想像もつかない広大さと時間のおかげで、死別の物語の重苦しさが軽減された気がします。
最近、アニメ『チ。』やドラマ『三体』を見始めました。
宇宙に思いをはせているところで本書に出会い、家でも通勤電車でも宇宙が気になる一週間となりました。
『三体』は去年、図書館で借りて半年ほどかけて読み切ったのですが、部分的にしか内容を覚えていなくて、ドラマを見ても「こんな人いたっけ?」「こんな話あったっけ?」だらけなので、早速、文庫本の『三体』第一部を買ってきました。
一巻買ったからには全巻揃えたくなりますが、再読する勇気がありません…
けれど、ピッカピカの新品文庫『三体』を眺めているとワクワクしてきます。
やっぱり、全巻揃えてパラパラッと読み返したいかも。
通勤電車でなく、家でじっくりと読み直すのもいいな…
(あ、欲しくなってきた…)
(帯の「東大でいちばん読まれた本」という文句で買う気になる人は、どんな人なのでしょうか。未読の状態で私だったら、気が引けて手が出ません…)