【作家志望】誰も、寄生獣の『恐怖の設定』を越えられるものを作れない
こんにちは、アベヒサノジョウです。
みなさんは、「寄生獣」をご存知でしょうか。日本を代表する名作漫画の一つで30年以上前の作品でありながら近年でも実写映画化、テレビアニメ化などを果たし、今年の4月には海外ドラマも放映されていました。
作者・岩明 均さんは『天才漫画家』と言われるほどで、「ヒストリエ」「ヘウレーカ」などのさまざまな歴史漫画も描かれる一方「寄生獣」のようなS F漫画も手がける方です。最近ではディズニープラスで「七夕の国」がドラマ化されることになっています。(こちらもオススメ!)
書籍:寄生獣
著者:岩明 均
この記事では「寄生獣」のとある設定に着目し、ホラー漫画として優れている部分を厳選してひとつ紹介したいと思います。
※多少のネタバレを含みますので、未読の方は漫画を先に読まれることをお勧めします。
結論から言うと、この設定
「相手がパラサイト(寄生生命体)かどうかを証明するには、髪の毛を抜けばいい」
て、天才だ・・・。
———いえ、決して冗談で言っているわけではありません。
本当に素晴らしい設定だと思っています。
この設定がどれだけ素晴らしいかを説明するには「パラサイト」とはどのような生き物かを説明しなければいけません。
つまりパラサイトは本来、頭部が別の生命体にすり替わっていますので「髪の毛を抜かれる」と、痛がるのです。
さて、なぜこの設定が素晴らしいのかポイントを絞り、紹介したいと思います。
それは、大きく分けて4つのポイントにまとめられます。
一つずつ、解説していきたいと思います。
①誰にでも簡単に確かめられること
→専門的な道具や知識はいらず、相手の髪の毛を抜けばいいだけなので容易であること。作中でも、若者の挨拶として流行した。
②納得のできる理由
→頭部がすり替わっているため、髪の毛の先端までパラサイトの一部である。そのため、神経があり抜けると痛がるという、シンプルだが納得のいく理由がある。
③コミュニケーションが必要となる
→いきなり相手の髪を抜くわけにはいかない。きちんと、相手に「すみません、ほら、お互いパラサイトじゃないって、確かめるために髪の毛を抜きませんか?」というように、会話が必要となる。(奇妙な会話だけど)
④相手がパラサイトだった場合「逃げ出さなければいけない」恐怖がある
→これが、最も素晴らしいところである。①から③の理由を総括すると、「難しい知識や道具などは必要なく、気軽に相手とコミュニケーションをとる中で髪の毛を抜く」ことになるが、これは必然的に対象と心理的にも肉体的にも距離を詰めなければいけない。パラサイトかもしれない相手に近づき、会話をし、髪の毛を抜く必要がある。しかも結果次第では、すぐさま相手から逃げ出さないと命の保証はない。
つまり、パラサイトかもしれない相手と関係を築いた上で、髪を抜き、結果次第では死ぬかもしれない恐怖に見舞われる———。
この設定はなかなか、真似できません。
例えばこれを別のモンスター漫画に当てはめたとします。
謎の生命体として人間を襲うモンスター「X」。こいつらは、人間に擬態しており見分けがつきません。しかし、人間は科学の力で「スコープ型の判別器」を開発したとします。
その場合、このようになるかも…。
ほら、全く怖くならない。
もし、ここから「怖い設定」にするのであれば、そのモンスターを強くするほかないのです。(あるいは「そんな便利なものは存在しない世界」として押し切るしかありません。時代を限定するとか)
「相手がパラサイト(寄生生命体)かどうかを証明するには、髪の毛を抜けばいい」
寄生獣のこの設定は、美しいバランスの上で成り立っています。もし、これをホラー小説として使うのであれば、
「身近な人が何かのモンスターとすり替わっているかもしれない。…それを確かめたいけど、バレたら殺されるかも」
というような設定を抽出し、物語の幅を主人公の生活圏内で収めるしかないのかもしれません。(実際にこのような設定のホラー映画や、小説、漫画はたくさんあります)
少し、ジャンルは違うかもしれませんが。
書籍:光が死んだ夏
作者:モクモク れん
詳しくはネタバレになるので控えますが、アニメ化も予定されている話題作です!ぜひ、ご一読を。
結局、この記事にオチはないのですが。
どうすれば『恐怖の設定』にできるのかは勉強中です。
余談ですが…
ちなみに、話題の「七夕の国」「寄生獣」が現在、期間限定無料キャンペーンを行なっています。「七夕の国」は全4巻で読みやすく、非常に面白いです。興味のある方は、ぜひこの機会に!(七夕ですし!)
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