- 運営しているクリエイター
記事一覧
【ホラー小説】 あじゅなみ様 ♯1『私(マユミ)の場合』
私の家には「のっぺらぼう」がいた。
そいつはダイニングテーブルの客席ににいつも静かに座っていた。決して動くことのないそいつを、私は「のっぺらぼう」と呼んでいた。名の通り、顔がないからだ。
正確に言うと、顔は日によって変化する。ある時はワイドショーに出演する有名人の顔をしており、ある時は私の友人の顔になっている。不思議なことに顔によって服も変わるようで、友人の時は私と同じ高校の制服を着ている。どこか
【ホラー小説】 あじゅなみ様 ♯2『母(ナオコ)の場合』
娘は金魚を認識できないようだった。
それに気がついたのは、娘がようやく話せるようになって、おぼつかないものの会話が成り立つようになってからである。
「口をパクパクさせているのー」
「そうねぇ、かわいいわねぇ」
私は最初、金魚のことを言っているのだと思っていた。ダイニングテーブルの客席の前には水槽があり、そこには金魚がいたのだ。夫のタケヒコが買ってきたもので、赤色の立派な金魚である。
これを、娘は仕
【ホラー小説】 あじゅなみ様 ♯3『父(タケヒコ)の場合』
妻は、死んだ娘の幻覚を見ている。もう何年もだ。
娘は中学生の時、自宅で意識を失って倒れ、そのまま帰らぬ人となった。心不全だった。
その事実を知って、妻も立て続けに倒れた。娘を失ったショックは、相当大きかったのだろうが、それ以外にも理由はあるようだった。
娘は自宅のソファの上で亡くなっていたのだ。妻は確かに息も脈拍もあったと言うが、気づいた時には冷たくなっていた。娘が亡くなったことがわかってから
【ホラー小説】 あじゅなみ様 ♯4『弟(ノボル)の場合』
俺は弟ではない。
この家族は、狂っている。全員だ。全員、狂っているのだ。
俺は三年前にこの家に忍び込んだ殺人犯だった。年齢も、中学生どころか、その時には既に三十五歳は超えていた。
あの日、俺は二階の窓から侵入し、クローゼットに隠れていたが、二階には誰もいないことを空気感から感じ取ると、部屋を出て階段付近で身を隠していた。姿は見えなかったが、一階からは若い女の声と、その母親の声が聞こえていた。俺は下
【作家志望の挑戦】『note』でしか表現できないホラー小説を書いてみた。
こんにちは、アベヒサノジョウです。
note創作大賞に向けて、日々執筆をおこなっているところではありますが、この度『あじゅなみ様』というホラー小説を応募させていただきました。
実はこの作品……
『noteで読むからこそ恐怖が増す作品』にしています。(なるように頑張っています……)
作品はこちら▼
※必ず、順番に読んでいただければと思います。
第一話
第二話
第三話
第四話
第五話