【24/10/8】足音 被害者(?)Ver

コツコツコツ。
足音がずっと被ってきている。

夜8時。
怖い道だよ、本当に。
まわりに広がるは畑ばかり。
所々、あってないような外套しかなくてさ。

コツコツコツコツ
カツカツカツカツ
コツコツコツコツ
カツカツカツカツ

足とともに、心拍数が上がっているのがわかる。

腹立たしい。本当に。
目的地であるマンションが見えてきた。

カツカツカツカツカツカツカツカツ
コツコツコツコツコツコツコツコツ

エントランスは目前。

あの子がくれた鍵をポケットから取り出し、
我ながら手際のよい動きで鍵穴に差し込む。
ウィーンという音とともに自動ドアが開き、
エントランスのオレンジ照明が僕の目を刺した。

後ろからは間違いなく、あいつの足音。
示し合わせたかのように1階に到着したエレベーターが
大きく口を開けた。

振り向きざまの僕の視界に、奴がちらついた。
閉まりかけた扉が、ガッと音を立ててもう一度開く。

「間に合ってよかった」

男の声がした。

間に合っただあ?
何にだ?僕の感情が沸点に達するその瞬間にか?

僕はさ、気になっていたんだ。
ずっとずっとずーーーっと気になっていたんだよ。

慣れないロングヘアーの髪の毛をかきあげ、
目の前に立っている男を見上げた。

目が合った。
相手は訝し気な顔で僕を見つめる。

「誰の許可を得てストーカーなんてしてるわけ?」

言葉を紡ぎながら、口調とは裏腹に勢い余るスピードで
奴の胸倉を掴み引き寄せる。

「お前、誰なの」

僕の彼女に何か用があるの?
僕が聞くけど、何?

そう続けると、男は僕の腕をふりほどき
エレベーターをガコンガコン言わせながら、
そそくさと走り去っていった。

ひとりになったエレベーターを、彼女の家がある10階へ向かわせる。
背が高くないことが功を奏したのは今日が初めてだった。

もう来ないかな、アイツ。来ないよね、きっと。
ふう、と息を吐いて、彼女の家へと向かった。



少女漫画的な雰囲気とも、ホラーとも。
お好きな世界を脳内に展開していただけたら幸いです。

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