【24/10/12】不思議な出会い

※ファンタジー要素



池袋駅にたどり着く。
駅構内はそこそこの人であふれていた。

改札をくぐった先は4つのホーム。
3年前の改修工事により、それぞれのホームは線路をまたいで行き来できるようになった。そのため、亜里沙はとりあえず何も考えずまっすぐ進んだ。

(どの電車に乗るんだったかな)

いつも乗っていたはずなのに、駅の様相が変わりすぎてよくわからない。
線路は変わっていないのだし、昔と同じ位置の近くから乗れる電車なら行先も同じだろう。と安直に考えた亜里沙は4番ホームの一番奥まで、まっすぐに進んだ。

ホームの端っこにたどり着くと、生垣で区切られたホームがもうひとつあることに気づいた。
これはなんだろう。
首を伸ばして区切りの奥を覗くと、やや普通の電車よりも豪華そうなつくりをした電車が停車していた。

(特急かな……)

そう思いながら近くをウロウロしながらふと顔をあげると、同じくらいの背格好の女の子と目が合った。
栗色でやや長めの、縦ロールの髪。ふわりとゆれる柔らかそうな生地のロングスカートを見た亜里沙は、ロリータ服が似合いそうだな、と思った。

「これに乗るんですか?」

女の子は言った。
亜里沙はううん、と唸る。

「どこに行くのかわからないから、様子を見てたんです」
「ああ、私もなんですよ」

亜里沙の言葉に、彼女はにこっと笑顔を見せる。

「私、ゆなです。いきなりの提案で恐縮なんですけど、もしお時間あるならちょっと一緒に乗ってみませんか?発車までまだ時間があるようですし」
「たしかに。時間があるなら少し入ってみるのもありですね。気になるし入ってみましょうか。私は亜里沙です、よろしくです」

ゆな、と名乗る女の子の提案に便乗し、亜里沙は彼女の後に続いて車両に足を踏み入れた。

瞬間、5~6畳ほどの何もない空間と赤い絨毯が視界を埋める。
楕円形?のように広がる空間の壁際には、2~3個の窓がついていた。
窓枠は白いサッシで覆われ、壁も白塗りされて清潔な場所だった。

「高級そうな雰囲気ですね……」

亜里沙はやや緊張気味に、ゆなに声をかける。
ゆなはきょろきょろしながら、進める足を止めない。

「やっぱり特急みたいですよね。ふつうの電車と全然違いますし……どこに行くんだろう……」

突然。
ピーーーー、と発車ベルが鳴り響いた。
えっ?と、亜里沙とゆなは顔を見合わせる。

「時間、まだ全然はやいのに?」
「とにかく出なくては」

ゆなに急かされ、そうだそうだと亜里沙もあわてて出口に向かう。
奥まで足を踏み入れてはいなかったものの、勝手のわかりづらい列車の中は焦ると異様に歩きづらさを感じるものである。何度かつまづいたりしながら、よろよろと出口を目指す。

と、突然、ゆなが足を止めた。

「どうしたんですか?!」
「……わたし、せっかくだからこのままこの新幹線に乗ろうかな」
「えっ?」

ゆなの言葉に、亜里沙は顔をしかめる。
しかしゆなはどうやら本気のようだった。

「すみません、私、このまま乗ってみることにします」

亜里沙を振り返り、ゆなはまっすぐな目をして言い切った。
突然どうした。大丈夫なのか。
亜里沙は、降りたい気持ちとゆなが心配な気持ちで体をゆらゆらさせながら「えーと、うーーん」と小さく唸る。

ゆなはそんな亜里沙を、車外に押し出した。

「一緒に来てくださってありがとうございます。
 せっかくなので、この新幹線がどこまで行くのか見届けてみます」
「危ないですよ!下がって!!」

私はゆなに押された勢いでしりもちをついた。
そんな私に向けて、ゆなの声にかぶせるように車掌さんの大きな声が響く。

ピーーーーーーーーー

もう一度発車ベルが鳴った。
列車のドアが閉まる。

ゆっくりと進み始めるこの列車は、いったいどこへ行くのだろう。
亜里沙は列車を見送ったあと我に返り、振り返る。
そこにはすでに、車掌さんや駅員さんの姿はなかった。

ふわりと亜里沙の前に降り立った彼女は、この初めて見る列車でいったいどこへ辿りつくのだろう。

(明日が土曜日でよかったね)

亜里沙はそう心のなかでつぶやいて、生垣を超え、ふつうのホームに向かって歩き出した。


◆To be continued...

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