![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/126423695/rectangle_large_type_2_2a8630f1049dc1e0c793d640b207743a.png?width=1200)
勉強がつらいと感じたら
1. はじめに
受験や資格勉強というのはとても心身に負荷のかかることですから、逃げ出したいと感じることもあると思います。この記事は、そのような方々へ私の体験談を書くことで少しでも力になれれば、と思い作成したものです。それでは、よろしくお願いします。
2. 紹介したい言葉
2.1 「All Things Must Pass」より
初めに紹介するのは「つらいことはずっと続いていくわけじゃない、すべてのものは過ぎ去っていく」というものです。
中国の古い書物である「老子」の中に
希言自然、飄風不終朝、驟雨不終日、
という一節が綴られており、これを日本語訳にすると
常におしゃべりであることは自然に反する。同じ理由で、防風は朝中吹き続けることはなく、激しい雨が一日じゅう降り注ぐということもない。
となります[2]。様々な解釈があると思いますが、私はここで元The BeatlesのGeorge Harrisonの解釈を紹介します。彼はこの節をもとに「All Things Must Pass」という楽曲を作成しており、その中でこの一節は
Sunrise doesn't last all morning. A cloudburst doesn't last all day. Seems my love is up and has left you with no warning. It's not always gonna be this grey
という言葉になっています。また、この後に彼の歌では
All things must pass. All things must pass away.
という歌詞が続きます。「つらいことがずっと続いていくわけではない。すべてのものは過ぎ去っていく」ということになります。
現状がどれだけ辛くても、その先には必ずいいことが待っている。なぜなら、つらいことはずっと続かないのだから。かなりこの世の真理を突いていると思います。
2.2. ジョジョの奇妙な冒険より
ジョジョの奇妙な冒険に
『一番の近道は遠回りだった』『遠回りこそが俺の最短の道だった』
という言葉があります[1]。これは、ジャイロというキャラクターが自身の死を悟ったときに、相棒であったジョニーというキャラクターに対してはなったセリフです。一見すると矛盾しているような発言ですが、これはとても深い意味があると私は思います。たとえ話として、アンドリューワイルズという数学者さんのことを紹介します。彼は非常に有名な「フェルマーの最終定理(またはフェルマー・ワイルズの定理)」を証明したことで知られており、数学の世界におけるノーベル賞のようなものを受賞しています(彼は賞の年齢制限に引っかかっていましたが、業績の偉大さから特別に受賞されたそうです)。
彼は10歳のころに最終定理を目にし、これを証明するために数学者になったそうです。しかし、彼が大学院時代の指導教官に「最終定理を証明したい」と言ったところ、指導教官はそれを止めたそうです。なぜなら、この時点でフェルマーの最終定理は300年以上証明されていない予想であり、この問題に取り組んで数学者としてのキャリアを台無しにしていた人を何人も指導教官は知っていたからです。結果、ワイルズはそれを了承して、またほかの「楕円曲線」という数学の分野を専攻することになります。しかし、ある数学者がこの「楕円曲線」という分野と、フェルマーの最終定理が関係しているということを指摘し、これを耳にしたワイルズはすぐさま最終定理を証明することに取り組みます。彼ははじめ、「岩沢理論」という方法を使用してフェルマーの最終定理を証明しようと試みていたのですが、どうしてもその方法ではうまくいかず、他の方法に切り替えて証明することにします。新しい方法はフェルマーの最終定理を証明するのに対してとても有用であり、彼は1993年にとうとう証明を完了したと宣言するに至ります。しかし、論文を査読してみると証明のある部分が不十分であり、ワイルズはこの不十分な部分を訂正する作業に移ります。これは最初簡単な作業であると思われていたものの、実は非常に難しい問題であることが徐々にわかってきて、ワイルズも諦めそうになってしまいます。しかし、彼はふと「岩沢理論」がその不十分な部分を補完するのに使用できるかもしれないと気づきます。結果的にこの考えは正しく、彼は証明を完全なものとします[3]。
この話の中で彼は二回遠回りをしています。一つ目は、最初からフェルマーの最終定理に取り組まず、楕円曲線の研究に取り組んだ点、二つ目は、最初に証明に岩沢理論を使用していた点です。しかし、上の話から分かるように、これらは最終的に彼がフェルマーの最終定理を証明するときに必要不可欠であった知識です。つまり、一見彼は遠回りをしていたように見えますが、実はそれこそが証明に対する最短の道だったのです。彼がフェルマーの最終定理を証明すること一本道で研究をしていたとしたら、彼が証明をなすことができていたか、と考えると、私はそう思いません。多分、他の数学者が挑戦していた時と同様、部分的な解決にしかならなかったと思います。
このようなことから、私は最初に紹介したジャイロの言葉を贈りたいです。また、後で紹介する(かも)私の受験も、遠回りの連続でしたが実はそれが最短の道でした。今がどれだけ無駄に思えても辛くても、それがあなたのなしたいことや人生には必ず必要なものであるはずです。
2.3 かわいそうだね?より
最後に紹介したいことばは、綿矢りさ氏の小説「かわいそうだね?」からのことばで
『正しくなくても、幸せじゃなくても、どうしてもやりたいことがあるなら、時には貫いてもいいんじゃない?』
というものです[4]。言葉と言うのは文脈が大切ですから、それ込みで簡単に紹介します。
主人公のさかきには、亜美という友人がいます。亜美はとても美人で友達が多く、対してさかきは地味な女性です。そんな亜美が結婚をするという流れになるのですが、その結婚の相手がちょっと危なそうな(黒とまではいかないまでも、かなりグレーっぽい)人なのです。亜美の友人はそのことを心配して、さかきに電話を掛けます。そこで
亜美の友人『亜美だっていまは夢中になっているから分からないだろうけど、あとで絶対後悔するよ。幸せになるためには、正しい道を選ばなきゃ。』
という発言が出た後に、序盤で紹介した『正しくなくても~』という言葉が出ます。おそらくこのときのさかきは本音を話していて、また、亜美を見放すために言っているわけでもないです。彼女が亜美に対して本当に思っていることを言っています。
自分がどうしてもやりたいことを実行しようとすると、ほとんどの場合何かしらの困難が伴います。また、時には誰かに何か心無い言葉などを言われてしまうかもしれません。しかし全くそんなことを気にする必要はなく、また、その行っていることが他の人から見て正しいとは思えない事でも、自分のやりたいことを貫く、ことこそが大切なのです。
2.3. 参考資料
[1] 荒木飛呂彦 「ジョジョの奇妙な冒険SBR 21巻」 集英社(2015)
[2] 小川環樹・森三樹三郎 「世界の名著 老子・荘子」 中央公論社(1968)
[3] サイモン・シン 著 青木薫 訳 「フェルマーの最終定理」 新潮(2006)
[4] 綿矢りさ「かわいそうだね?」 文春(2023)
3. おわりに
この二つが、私の紹介したい言葉です。少しでもこれらが皆様のお力になれれば幸いです。勉強を頑張っている姿と言うのはとても素敵ですから、ぜひ、頑張ってください。拙い文章でしたが、ありがとうございました。