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140字れっすん。140字の百合小説④

【ひどくして】

「…ひどくして」ぎゅぅ、としがみついてくる彼女の言葉に戸惑う。「そんなこと、出来ないわ」「いいから。ひどくして欲しいの」そう言って私の服を掴む手が、震えている。ねえ、怖いの?それなのに、どうしてひどくして欲しいなんて言うのかしら。今すぐぐずぐずに甘やかして蕩けさせてあげたいのに。


【カッコいいって言って】

「ほんとに可愛い…」優しく微笑む彼女が、そっと私の頭に手を伸ばす。撫でるつもりだ。「ねえ、カッコいいって言って?」彼女の手を掴んで、ぐいと引き寄せた。顔が近付く。目を見開いた彼女の顔がゆっくりと綻んだ。「無理よ…こんなに可愛いのに」頬が包まれて、そのまま柔らかな唇が私を塞いだ。


【30秒のハグ】

「今から30秒間ハグするね!」高らかにそう宣言して、嬉しそうにぎゅっと彼女がしがみついてくる。30秒?ちょっと良く分からないけれど、貴女だったらいつまでもずっとこうして私に抱きついていてくれてていいのに。「もう経ったんじゃない?」優しく髪を撫でると、彼女がまだと言ってしがみついた。


【生きていけない】

「彼女がいなくなったらどうすんの?」あんまり私が彼女の話ばかりするから、友人が溜息混じりで呆れ顔。いなくなる?そんなこと考えたこともなかった。いつも優しく微笑んで抱きしめてくれる彼女がいなくなるなんて、そんなの。そんなのやだ。「…生きてけない」友人がお手上げとばかりに空を仰いだ。


【可愛いの】

「ほんとに貴女は可愛いわね」これは彼女の口癖。甘い甘い声色で、それはそれは優しく髪を撫でてくれる。褒められて、ぐずぐずに甘やかされて、幸せが擽ったくて落ち着かない。「か、可愛くなんて、ない」「いいえ。反論は認めないわ」嬉しそうにそう言った彼女が、口ごもる私の唇を柔らかく塞いだ。


【貴女に首ったけ】

好きだの愛してるだの、普段は一言も発しない彼女だけれど、愛し合う時だけは違う。散々愛され尽くして、ぐったりとなった身体をそれはそれは丁寧に抱きしめられて、囁かれる愛の言葉。「愛してる…」ねえ、こういう時だけそんなこと言うの、ずるくない?こっちはもうとっくに貴女に首ったけなのに。


【目を閉じて】

「ねえ、目を閉じて」そう言うと途端に真っ赤になってしまう彼女。ぎゅっと目を瞑って、ふるふると震えている姿に思わず笑みがこぼれてしまう。だって、それ以上のことは何度もしているのに。キスとなると、いつも緊張したように固まってしまう彼女。そんな可愛い貴女に私は今日も優しくキスをする。

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