これ以上の幸せがあるかしら
「真奈美さん」
ドアが閉まると、後ろからふわりと抱きしめられた。纏わりつくシトラスの香り。鼻腔を擽る彼女の匂い。
ああ、どうしよう。途端に胸の鼓動が早まってくる。緊張してぴくりとも動けない私の姿に、彼女が小さくくすりと笑う。
「緊張してますか?」
耳元で囁かれると、耳が熱を持つ。
この状況で、緊張しない人なんていないんじゃないかしら。
特に、私は。
誰かに触れられたこともない、もちろん触れたこともない。キス以上のことは全くもって未経験。
気が付けば、もうすぐ40歳。彼氏