【ネタバレあり感想&考察】ゼンブ・オブ・トーキョー、ゼンイン・ユーショー
公開から遅れること1日。運良く六本木ヒルズで行われた公開記念舞台挨拶を引き当て、本日無事に見に行くことが出来ました。
ネタバレに気遣いながら、ダラダラとハッシュタグをつけて小分けにポストするのも面倒なので、noteで一纏めに遠慮なく内容に触れながら感想を書きたいと思います。
本当ならストーリーに沿って書きたいところなんですが、この映画が場面転換をしまくりながら、幾つものストーリーを並行させて進行していくという構成で、正直どの順番で転換したとか覚えてるわけもないので、行動グループごとにまとめたいと思います。
①羽川・辻坂ペア
まず、かほりん演じる羽川と、りんちょ演じる辻坂のペアから。
この2人は、守谷という男子を巡って争う間柄。
辻坂が体育会系の性格ということもあり、羽川に少し分が悪いパワーバランスになるかと思いきや、辻坂が電話している隙に羽川が出し抜いたり、パワータイプと頭脳タイプのバトルが面白かった。
特に、辻坂が羽川の腕を掴み、パトカーのサイレンが遠くから響く中で「あっちで話そっか」と茂みの奥深くに連行しようとする場面では大きい笑いが起きてました。
結局、守谷という男子も他のキャラクター同様に目的があって班から離脱した生徒の一人で、明治神宮で待ち合わせの予定をしていたぽっと出の女子に告白して、その女子も2つ返事でOKしてゴールインというオチ。
推測ですけど、目の前で整理券が無くなって目当てのグッズをゲットできなかったという苦い経験をしたばかりの角村に「欲しいものは早めに取りに行ったほうがいいよ」的なアドバイスをもらって、ただのデートプランから速攻で告白するプランに切り替えたのかなぁ。
縁結びも強い明治神宮で待ち合わせするあたり、したたかさも持ち合わせてそうですけど。
てか、角村に話しかけられるぐらいには女子から抵抗感持たれて無くて、辻坂と羽川に惚れられながらも気づかずに別の女子に思いを寄せるってどんな人生送ってんだ守谷よ。お前、人生だいぶ損してるぞ。
一連の闘いを通して戦友となった2人はもんじゃへ。どことなく、りんちょならではの男臭い外食癖を感じさせる場面。
これを見た下町育ちの若様もご満悦でしょう。
②桝谷・花里・満武グループ
小西演じる桝谷は、池園班を抜け出したメンバーで唯一「成し遂げたい目的がある訳じゃなく、ノリについていけなくて抜け出したメンバー」ですね。
確かに、昔住んでいた街を今更巡る上に、池園が組んだ分刻みのハードスケジュールをこなせと言われたら、抜け出したくなる気持ちもわかるかも。僕は迷わず池園に付いて回りますけどね。オープニングでスケジュール表を渡された時に引き気味な態度を示しながらも、屋上で提案を皆で聴いたり、班行動をしているときはその感情を押し殺して、チャンスが来たらまっしぐらに逃げ出すのがリアルで怖かった。
その後なんやかんやあり、オタクを隠してクールを貫きたい側の桝谷&満武と、東京育ちのクール女子に憧れる花里のすれ違いコントが幕を開けるわけです。
桝谷はオタクを隠すためにオシャレな街として下北沢に乗り込むのですが、ニコニコ文化に染まりきって、ぼっち・ざ・ろっく!も通ってきた自分としては「下北沢のチョイスもだいぶオタクでは?」と思ったんですが、もう世間一般的にはオシャレの中心ってことになってるのかな。
何気に花里が毒舌キャラで、居合わせた池園を桝谷が潜伏しているトイレから遠ざけるために「たぶん臭いし、長引いてるから駅のトイレにしたら?」と勝手に桝谷をとんでもない状態に仕立て上げたり、本来の性格をバラされるやり取りでも「本当は臭いの?」「臭い方が良かったー!」と下の方から離れたがらない。
池袋を散策する時も「さっきより情報量濃いね」とグサッとくる一言を差し込んでくる花里。「春日依存症」「XLの操られ人形」というパンチラインを短時間で繰り出せるひらほーの遺伝子?
③説田・角村・梁取・門林グループ
たまにゃん演じる説田、りーお演じる角村、すみれ演じる梁取、はるはる演じる門林の4人組。
説田が待ち合わせ場所で待機していた3人と合流するなり、グルグルと回りながら作戦会議、決まると「散!」と叫んで各所に散らばるという始まりが印象的でした。
舞台挨拶での監督の話によると、グルグル回るのは、スケジュールの都合で夕焼けになってしまい、カメラの影が写り込まないように考えての策。「散!」はNARUTOから拝借したらしいです。
場面を見た限り奇行以外の何物でもないんですけど、女性オタクと隣り合わせの環境で過ごす自分としては、結構リアルだなぁと思いました。
何の脈絡もなく「にゃー!」と叫びだしたり、黒板に「ブラジャー、ブラジャー!」とうめき声を上げながらブラジャーをリアルに描いたり、オタク女性の集まりは結構奇行で出来上がってるんです。
散らばった後、説田はオタクの聖地の座をアキバから奪い取った池袋でクレーンの行列。角村は原宿で整理券の確保。梁取は新宿でグッズ購入へ。門林は上野で整理券の確保へ。
説田のクレーンゲームから。僕もそこそこゲーセンにも通った経験があるんですけど、1つの箱に行列ができてて、1人5回の回数制限があるのって見たことないんですよね。今は転売ヤー対策にそうなってるのかな。
苦戦するところへ、オタクを曝け出して気楽になった桝谷たちが合流し、先ほどまであまり目立たなかった満武がオタク早口で理論を展開する無双開幕。
しかし、理論派の満武でもクリアできないクレーンゲーム。1回5プレイの制限付きで、都度スタッフが位置をリセットするのはだいぶ難易度高くないですかね…
梁取は地下で迷子に。職場が近くて新宿の地下街もそれなりに散策したことがあるんですが、新宿駅構内だけでなく、紀伊国屋本店、伊勢丹やマルイなどの百貨店、都庁まで色んな地下鉄駅と繋がりながら大規模に張り巡らされてるんですよアレ。
電波が通りづらい上に、いろんな名前の地下街が何層にも重なりながら形成されてるので、「GPSが不確か+階層を把握してないとさらに混乱」というダブルパンチ。
数々の経験から個人的に見つけた攻略法は、目的地に近い出口の番号を調べてからスマホとは向き合わず、ただひたすらに案内板に書かれている番号と矢印に従って突き進む、ですかね。
使いこなせるようになると、新宿駅周辺の人混みや待ち時間の長い信号、悪質でしつこいキャッチのストレスから一気に解放されるのでおすすめ。
門林は整理券を確保して余裕で上野の流行グルメを満喫。しかし、いつの間にか整理券は手から落ち、鳩に蹴飛ばされ、風に乗り何処かへ。あまりにもはるはるすぎる。社会人経験はあって、秘書的なスキルは抜群なのに、めちゃくちゃ抜けててグダグタになるんだよなぁ。
角村は整理券が目の前で無くなり、その教訓を守谷に伝えて間接的に背中を押すトリックプレー。
迷子の梁取を救出に向かうも、迷子が2人になっただけで限界を感じて座り込み。ちなみに座り込んでたのは「新宿サブナード」という地下街ですね。羽川と辻坂が遭遇した階段も、実は「新宿サブナード」の入口。何故かCG加工で看板が変わってましたけど、たぶんそう。
あの手すりが低いくせに急な階段を降りて彷徨くと、座り込みスポットにたどり着くということです。地下道の解像度高い自分にかかれば、あの2人を目的地に送り出して好感度稼ぐのも容易いのです。
そして、池園に助け出され、門林も合流した計4人は無事に新宿でグッズ確保。1人1個の制限も、池園が説田の代わりを務めるという形でクリア。桝谷ほどまでは行かなくても、即池園の下を離れるほどには彼女への想いが軽薄だった説田にも、終盤で力を貸す恩義が生まれる流れ、めちゃくちゃ構成上手くないですか?
④はぐれた後の池園
序盤は順調に計画を進めるも、もんじゃ焼きが満員だったところから計画が崩れ、単独行動になってしまったしょげ演じる池園。
てっきり、「パラレルワールド」や「デスゲーム」という発想はTheオタクで中二病なしょげっぽくて池園発信なのかなぁと思ったのですが、パラレルワールドは桝谷、デスゲームは羽川でしたね。
小西とかほりんと考えれば全然あり得るし、ノリを始めた桝谷が実はオタクという部分も踏まえると、実は結構な伏線だったりするんですよね。
内心寂しさを感じながらも、1人で計画をこなすメンタルは確かなようですが、アレって現実的に回れるのかな。時間と体力があったら試してみたい。
ルートを見た感じ、何となく上野から山手線に入って、渋谷から京王線、また山手線準拠に進んでる気はするんですが…
彼女の欲望として、「全部回りたい。堪能したい。」という気持ちは充分分かるんですが、ちょっと独りよがりかなぁとは冒頭からずっと思ってました。しょげだから受け入れられてるけど、これが仮に全然違う人だったら余裕で苦手なタイプ。
生徒側の登場人物で、1番人間的に問題を抱えてるのは実は彼女な気がします。
ただ、上野の時点で計画なんて深層心理ではどうでもよくなってるんでしょうね。やることがそれしかないから、仕方なくこなしてるというか。
下北沢でちゃんと班員と話し合う結論は出してるし、本当に計画を遂行することで頭がいっぱいなら、サブナードで座り込んでる2人を助けたりしないはず。
桐井の前でスケジュール表を破り捨てる前から、新宿の時点で「計画遂行<人とのつながり」にシフトしてたんじゃないですかね。
⑤桐井、そして合流のクライマックスへ
正直、個人的にゼンブオブトーキョーの真の主人公と呼んでいる、りなし演じる桐井。
今回の撮影に際して、監督の指示でショートカットにしたみたい。監督としては、「アイドル・渡辺莉奈」ではなく、「アイドル志望の未完成な人間・桐井智紗」として撮る意図があったようですが、正直おひさまの1人としてファインプレーと言わざるを得ないです。
桐井のエピソードは、分かりやすく4期生の経験談が反映されてました。ひらほーの「渡邉美穂に日向坂のメンバーになるように勧められた」というエピソード、りなしの「小坂菜緒に憧れてアイドルになった」というエピソードの集合体。
有川凛を演じる人はメンバーにもギリギリまで伏せられていたようで、こさかなだと分かった時には4期生大歓喜だったとのこと。
正直、ありりんのオーラはマジでレベルが違いました…たったワンシーン程度の出番なのに、観客の脳裏にガッツリと刻まれる活躍でした。
桐井はアイドルのオーディションの最終選考に行くため単独行動。最終選考まで行くのは当たり前みたいになってる。桐井は共に行動する同級生がいない代わりに、路上喫煙タクシードライバーの五十嵐、担任のヒヌケン(ヒムケン)、大人気アイドルのありりんが取り巻いています。
会場に着くと、オーディション用の写真?(正直自信ないので違ったらスイマセン)を撮る桐井。最終選考用に写真撮るなんてことが有り得ない気がするので、単に自撮りの線が濃い気はするんですが、同じくオーディションに来た女性の写真を頼まれてたり、よく分からんですね。
自撮りを終えると、その後ろには五十嵐がいて、写真を消すように強要。これだからヤニカスは…
ヒヌケンが何とかしてくれて、助け舟かと思いきやスマホ没収という悲劇。
ヒヌケンに呼び出されたものの、ヒヌケンがソラマチで発生したトラブルを収めるために飛び出したせいで事情がわからない池園が泣いている理由を聞いた時、僕は「オーディションの本人確認でスマホが必要なのかな」と推察していたのですが、単にありりんのチェキが無いと勇気が出ないと。
多分桐井は引っ込み思案すぎて、だいぶありりんに依存してたんでしょうね。描写こそされてませんでしたが、何か嫌なことがあると首にかけてるヘッドフォンを耳に当てて、ありりんの曲を聴いてたんだろうなぁ…
スマホを奪い返す第1段階としてヒヌケンの場所を特定するため、みんなに協力を求める池園。
元々比較的池園に好意的だった羽川はともかく、桝谷や説田にも、「直接会って気持ちを伝えたいから」「グッズを手に入れる手助けをしてくれた恩人だから」という理由付けをちゃんとしてるのが良かった。
アニメなどで敵キャラとのなぁなぁな和解する展開に疑問を抱かずには居られない性分としては、非常に助かりました。
すっかり親友になった羽川&辻坂はソフトクリームを分け合って、ちゃっかり一口ずつ頂いてから準備完了。桝谷組も、満武が実力を証明するために取りまくった小物の中にあったビリビリスマホを準備。本当になんでもないようなところが伏線になってるんすよね。
遂に作戦を決行し、上着にソフトクリームをつけて、あたふたしている隙にスマホを入れ替えることに成功。上映前、一発で行くつもりがなかなか上手くいかず、ダッシュでクリーニングに行くほどヤバい状況だったというエピソードが飛び出していたのもあり、結構笑い声が出てました。
そして池園にスマホが渡る時に、まさかの落下させて受け取る方式だったのがヒヤッとしたけど、無事に桐井に届けることが出来て、小さく息をついてしまいました。
スマホを受け取った桐井は、池園がアプリで手配したタクシーで会場へ急ぐことになります。本当に準備は完璧なんだよなぁ池園。
そして運転手は騒動の発端になった五十嵐。
でも五十嵐はヤニカスで写真に写りたくないだけで、素は案外良い人。素直に桐井に謝罪して、送り届けることで償うことを選びます。結構この場面、五十嵐が頼れる大人を体現していて、さっきまでとは打って変わり、カッコいいなと思ってしまいました。
その頃ヒヌケンは、ベチョベチョになった上着を持ちながら、トボトボと押上を歩き、例のスマホのスイッチを押して叫びながら転倒。
桐井たちにとって敵だった2人にもこうして見せ場や笑いどころを作ることで、ネガだけの感情で終わるキャラが1人も居ない作品になってて、この映画を幸せな作品だと感じる一因になってた気がします。
個人的には、桐井を見送る五十嵐が「頑張れー」とエールを送った後、タバコをゴミ箱に捨てるシーンが刺さりました。
真っ黄色の箱を見て「アメスピかー!」と何かに納得してる自分がいました。絶対にフレーバー入ってるオシャレなタバコ吸ってる人の吸い方じゃないですからね。
しかし、ご都合主義というわけにもいかず、桐井は間に合わず最終選考辞退扱いに。駆けつけたみんなと一緒に砂浜にいき、クライマックスらしいキラキラした青春の時間を過ごします。
そこで池園は桐井に、「自分が作った完璧な計画で全部楽しむつもりでいたけど、周りの人の意見も取り入れて、皆のやりたいことを皆でやらないと楽しめないことに気づいた。」という旨を言っていたんですよね。
パンフレットで制作工程を見た時、この一言は「監督のやりたいことだけでなく、メンバーに長時間インタビューして、エピソードを各所に入れ込んだりして反映させる」という方式で作った、この映画の全てを凝縮した一言だったんだなと気づきました。
余談なんですが、湾岸に住んでる身として東京湾の水って正直アレなイメージがあって、池園たちがじゃれ合ってパシャパシャ掛け合ったりしてて心配になりました。まぁ、人工海岸としてちゃんと営業してる水域だからちゃんと水質は担保されてるとは思いますけど。
⑥卒業式
そして時間は流れ、冒頭の制服姿の池園がヘッドフォンをつけてる場面に戻ります。
胸ポケットに刺さってる花で察しはついていたんですが、後ろの黒板で卒業式だと確信。
修学旅行で絆を深めた池園班他数名が会場に行く道中、桝谷が着実にオタクの根を深く伸ばしていること、ゲットしたグッズを大切に保管していることなど、近況が何となく見えてきます。
そして取り出したアクスタには、ありりんと同じ衣装を身にまとった桐井の姿。おい、やっぱりあのアクスタ盛大なネタバレじゃねぇか。これについてどこにも深い言及が見当たらず、インタビューで桐井の根気強さを証明する場面としか説明されてなかったので完全に僕の妄想になります。想像以上に膨らんだので、別でnoteにまとめます。
追記 書きました
総括
正直、この映画を見終わった時、確かに面白かったけど、今まで見てきた作品と比べて少し平坦な話だなぁと感じました。僕の中での映画って、爆発だったりアクションのイメージが強くて、いわゆる青春映画を通ってこなかったから、自分の中でハードルを上げすぎたかもしれないと落ち込んでいた部分もありました。
しかし、パンフレットにこんな一文を見つけました。
ゼンブオブトーキョーは大きな事件が起きないし、上手くいかないことも多い。だから、青春なのだ。
これで自分の感覚は正解で、この映画も正解で正しい形なんだと100%理解することが出来ました。
言ってしまえば、ただの修学旅行なんです。大きな大スペクタクルに巻き込まれることの方が現実的じゃない。
もしかしたらスペクタクルにすることも出来たかもしれないけど、それをしなかったからこそ共感できる、或いは手に入れられなかった経験を補完できる、素晴らしい青春映画になったのかなと思います。
また、キャラクターと演じているメンバーが、生き写しでもなく、全くの別人でもない、絶妙な距離感なのも良かった。
あまりにもかけ離れてる人間性のキャラを無理矢理演じて、拙い感じで見ていられなかったらどうしようと思っていたんですが、製作陣におひさまが多い上に、色んな役を演じさせて、違和感がないキャラでGOを出した過程があったから、メンバーも素の状態で演技が出来て、演技面で誰一人として浮くことがなかった。
脚本やキャラクターを誰も傷つけること無く思うがままにできる、オリジナル映画の強みだと感じました。
正直、アイドルドラマにはあまり良い印象がなくて、日向坂であっても多分贔屓目が入っちゃってるから、自分に刺さっても他の人には胸を張って勧められないかもと臆する部分もあったんですが、この作品は誰にでも胸を張って勧められる自信があります。
さらに、メンバーとキャラクターの乖離が無いおかげで、この映画を見て日向坂に興味を持った人が、映画で持ったイメージとのギャップを感じることがなく、すんなりと日向坂にハマれるという相互的な行き来が出来るようになってるのも凄いと思います。
映画作品として、アイドルのプロモーション映画として、おひさまも、それ以外の人も、皆が得しかしないこの映画、まさしく「ゼンインユーショー」なのではないでしょうか。