「剣」にはちょっとだけ問題提起があって、かなり現代的な気がしてる。

何をもって新時代劇と言っているかというと
今までのアクションや伝奇要素の無い物語と
現実にある問題点を込めようとしているから。

今回は主人公が我儘で傲慢である事が重要で
特に視野が狭い、判断力が弱い部分を持っています。

時代を背景にした考え方をしているので、ある意味でこの時代の武士層のフラストレーションを代表していると思ってます。

そんな主人公が武士を美化し、ひけらかし、振るう事によって、自分が知らなかった命のやり取りに巻き込まれる。

作り方としては、とても現代劇だと思います。

「殺す」だの「死ね」だの簡単に口にしても、リアルにその場に放り込まれれば泣きたくなる。
その上でどうにか生きたいと願うと思うんです。

イキがってる事と、ホントに傷つけ合う事や人を殺すかもしれない事には隔たりがあります。

よしんば相手を殺したとして、普通の感性が有れば震えは止まらないと思う。

逆にそれが無いのなら、感覚と感情を何処かに置いてきたか、もはや忘れたのか?

大沢美好という男はまだ老いぼれてはいないが、頭が固まっている事は老いと同じかもしれない。

そんな彼が怖い連中を見て、否応なく関わり、果たして上手くやれるのか。
そして追い込まれた思考は何を導き出すのか。

何てお話になります。

感覚が麻痺する前に、思考をアップデートしなければならない。
現代に生きる我々は、この早いスピードで流れる時を順応してこなしている。

大沢美好は時代の大きな変化の中に、今は流されまいとしている。
しかし、やはり世の有り様には従わなければ生きてはいけないのです。

暴力とSEXで彩られた昭和の劇画も、今は無い。
タイマンでケリつけようぜぇい!なんて戦いも
今は生き延びて勝つのが至上の目的になる。

正々堂々と一騎打ちで勝負をつけようぞ!
大沢美好の思い描く戦もまた、何処か夢物語に過ぎないと思う。

自ら闇に踏み込む事となる彼が、どう答えを出すのかが、本作の試しなのです。

今はわざと仰々しく話させておりますが、語り部が現れたこの先は、客観的になっていきます。

今回は少しまた変わった切り口と、この男の武士像で
リアリティに寄り添ってみたいと思っています。


マブ

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