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まほろば流麗譚

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2024年5月の記事一覧

思慕一途柳問答 2

「勇也ぁー!大丈夫!?」

流園と勇也の元に傘を差した美代が駆けて来た。

「ああ!また物の怪だぜ!」

「えっ!?またぁー!」

「ありゃあ、何だ?首の長くてウネウネした奴?」

「ろくろ首で御座んすね。」

「あーそうだ!あの女ろくろ首だ!」

「女!?今度は女なの?ダメだよ!勇也!」

「へ?何がよ?」

「女の相手はダメだって言うの!」

「いや、相手って物の怪だぜ!?」

「もう女に関わ

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思慕一途柳問答 1

江戸の町には人足たちが住む長屋がある。
仲間同士で寄り集まって暮らす小さな部屋がズラリと並び、側には川がある。
川の水がまだ井戸の変わりをしている。
その川の前を歩いて行くと大きな柳の木がある。
枝垂れた葉は全て落ちているが、江戸の恋仲が約束の場所に定めるのは冬になっても変わりはしない。

顔立ちの整った一見女と見間違える男が、この柳の下に現れる様になったのも、寒い冬になってからの事であった。

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