「望月の烏」
なんだろう、とてつもなく虚しさを感じてしまったのだ。
それぞれが出来ることを、やりたいことをやりたいようにやる。
落女の澄生の語る、真赭の薄と澄尾の方針だという上の言葉は、今の私にも突き刺さる。
雪哉(敢えてこう呼ぶ)も凪彦も澄生もみんな、山内の弥栄を願っているというのに、このすれ違い方よ、酷く虚しくないか。
登殿の儀と聞けば空恐ろしくなり、冒頭の人物相関図を見るだけでもいろんな想像が駆け巡り、ええっ!この子まさかの!に続いて出てきた名前にここからが本番か、と思い知る。
雪哉、雪哉よ、裏切られたとて貴方を捨てきれないのよ……
期待?希望?分からないけど、君が何とかしてくれって思ってしまう。
この緻密に構築された小さな世界がとても愛おしい。
正に、弥栄に幸在らんことを願う。
というわけで、早く次を読ませてくださいm(__)m
「望月の烏」 阿部智里 (文藝春秋)