![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/160029847/rectangle_large_type_2_1a87018e77eed4bb21a637604d8769df.jpeg?width=1200)
やぶれかぶれ
久しぶりに、いい予感しかしなかった。
10月27日のF1第20戦メキシコGPで、フェラーリのカルロス・サインツ・ジュニアが優勝した。今季でチームを去る(去らなければならない)カルロスは「フェラーリを後にする前にもう一度勝ちたかった」と、本当にうれしそうだった。
今回こそ勝てそうだと思ったのは、決勝前に本人が「I have less to lose than everyone around me.」と語っていたからだ。チームメイトやライバルチームのレーサーらとは違って、余計なことを考えずに走れるという点では強い。予選後の表情や身のこなしも晴々としていたし、マシンも相当調子がよさそうだった。おかげで颯爽とトップを走り続ける赤い車をニヤニヤ眺めながら、久々に最初から最後までレースを楽しむことができた。
カルロスはレースを振り返りながらも「I have nothing to lose.」と言っていたのだが、この言葉が妙に心に刺さった。「失うものは何もない」などとよく訳されるが、何となくかっこつけすぎているようで、しっくりこない。結局は「やぶれかぶれ」みたいなものだ。日本語だと「捨て身」とか「体当たり」とか、投げやりなニュアンスの表現はたくさんあるが、とどのつまり「吹っ切れた感じ」で全力を尽くそうとするのだから、同じことではないか。人間、そうなると強い。ただ、そこで「怒り」や「憤り」が伴うと、成功率は下がるだろう。「やぶれかぶれ」と、ニヤリとしながら戦いに挑むくらいの余裕がほしい。
素直な気持ちで、まっすぐ目標を見据えながら、自分の力を出し切る……すがすがしいカルロスの姿に、実に感銘を受けた。チームもライバルも関係なく、皆がカルロスの優勝を喜ぶ様子も見ていて気持ちがよかった。
今季のレースも残すところあと4戦。まだ優勝のチャンスはある。
![](https://assets.st-note.com/img/1730360151-mBCobvsSEfJiqVgwcW09dLUj.jpg)
![](https://assets.st-note.com/img/1730360183-EFyGVofMI3xdOSZgPkKQrDeA.jpg?width=1200)