ポエム「愛と絆の語り詩」
[The prologue]
時は14世紀、地球から遠く離れた宇宙に赤く輝く新しい星が生まれました。
数年後、先に生まれた星と同じぐらい青く輝く星が生まれました。
地球ではイタリアのトスカーナ地方で、其々の星が生まれた時期に男子と
女子が誕生しました。
男の子は代々、国王の側近の騎士を務める家柄に産まれ名前はアンジェーロ、彼が産まれた3年後に貴族の家に産まれた女の子はラピサーナと名付けられました。
やがて、アンジェーロは逞しく美しい若者に成長しました。叉、ラピサーナは思慮深く優しい少女に成長しました。[前世編]
数百年の時が過ぎ現在の世に生まれ変わった、スペイン人のロサーリオと日本人の瑠璃香。二人の家紋から前世の縁が明らかに、幸せな結末へと繋がります。[現世編]
[愛と絆の語り 詩]前世編
古のイタリアは
トスカーナの宙に
青く輝く星うまれ
其の地に産まれし乙女子は
青い瞳のラピサーナ
蝶よ、花よと育まれ
美麗な淑女と育ちゆく
ラピサーナには思い人あり
野に出でて花摘む彼女の目の前に
偶然装い現れた騎馬の若者アンジェ―ロ
赤き星と共に産まれたアンジェーロ
黒き瞳の其の奥に
恋の炎が燃えていた
野生的なる振る舞いと
高貴な心に触れたとき
恋に陥る乙女の心
あぁ、ラピサーナとアンジェーロ
両家には代々伝わる根の深い
敵同士の曰く因縁の話あり
逢瀬を重ねる恋人同士
燃え上がる恋の炎に逆らえず
枝を交わせし暁に
割り無い仲と成りにけり
さて、二人の運命や如何に
時隔て乙女に舞い込む数々の縁談
親の眼鏡に叶いたる
騎士の家柄、名家の子息
騎士ロベルトから
求婚の申し出あり
乙女の意思とは裏腹に
2人の婚約整いて
周囲は歓喜に包まれん
憂い顔したラピサーナ
親の決め事逆らえぬ
彼女の心、知る人ぞなく
盛大に執り行われた
騎士ロベルトとの婚儀も終わり
初夜の床入り過ごせども
ラピサーナの心開かず
優しい言葉も受け入れず
其の身は人形の如く
苛立つロベルトの心中や如何に
ラピサーナに心を残すアンジェーロ
身は引けど心残した若者は
時期を伺う数か月
真夜中の陰に紛れて忍び入り
ラピサーナを誘い出し
楽園目指して逃避行
怒り心頭ロベルトは
追手を率いて探索に
数日後、未明の宙に
輝く2つの星ありて
遥か遠くに二人の姿
月の明りに照らされて
平原走る馬の背に
抱き合う2人の姿見え隠れ
走れ、走れ.....追手を逃れ
2人の国を目指して走れ
愛よりも嫉妬に狂うロベルトは
端正な面差し変わり
馬に鞭うち駆けさせる
有り明けの断崖に
二人の姿鮮明に
波打ち際の絶壁に
泡立つ波が打ち付ける
ロベルトの追手の捕縛寸前に
ラピサーナとアンジェーロ
あぁ~此処までと
固く抱き合い唇吻を
2人の足は地を離れ
逆巻く波間へ消え行きぬ
崖の上、呆然と佇む失意のロベルト
慟哭は海を越えて響き渡る
時過ぎて岸に上がるは2人の屍
死して尚、固く抱き合い分けられぬ
野を行く聖者の杖軽く触れる時
両者の腕はゆるりと解れ
穏やかな面差し生けるが如し
隣り合わせに葬られん
其々の墓から伸びた忍冬の蔓
抱き合うように絡み合い
花咲けば漂う香りゆかしき哉
花の言葉は「愛の絆」
「愛と絆の語り詩」現世編
ラピサーナとアンジェーロの
悲恋の話から数百年の時を経て
現世の西班牙はトレドの地
代々の家柄誇る名家にて
健やかなる産声聞こえ
男子生誕に歓喜の声
宇宙に煌く赤き星
更なる輝き地に放ち
スクスク育つ男子の名前はロサーリオ
早3年の時を経て
東方の日いずる地の
深窓に生を受けし女の子
瑠璃香と名付けられたまう
宇宙に煌く青き星
更なる輝き地に飛ばす
18年の時が過ぎ
ロサーリオは21となり
運命に背中を押されて
愛用のギターと共に
代々伝わる伝承の詩を頼りに
縁の糸を求めて旅に出る
西の国から東へと
足の向くまま気の向くままに
バックパッカーの旅は続く
大陸を渡り海を越え
日いずる地に辿り着き
出合うは前世の導きか
出逢うべくして出逢った二人
ロサーリオと瑠璃香
見詰め合う瞳と瞳
通いあう心と心に言葉は要らぬ
時空を超え夢に見た
その愛は静かな光に導かれ
前世の二人に導かれ
交わす思慕の心には
絡まる縁の見えぬ糸
乙女の家に伝わる花紋は「忍冬の花」
若者の家に伝わる「スイカズラ」
二人してルーツを辿る道行きは
吟遊詩人が受け継いだ
家に伝わる時代を超えた伝承歌
二人の心に吹き込まれ
二人が受け継ぎ現世に
ギターを奏でるロサーリオと
瑠璃香の澄んだ歌声に
人々の心は打たれ感動と涙を誘う
倹しい旅にも宝は要らぬ
熱い愛の心が有れば
支え合い慈しみあい
続ける旅も辿り着く
懐かしき古都トレドの館
ロサーリオが
家を出てから5年の歳月
縁の乙女を連れ帰り
積もる話は延々と...
ロサーリオと瑠璃香の更なる旅は
終盤の地イタリアへ
トスカーナの
二人の前世の墓にある
石に刻まるスイカズラ
絡み合う2本の忍冬麗しく
時空を超えた前世の憂いは
永久の愛をもたらした
幸せの鐘の音響きロードを行く
現世の愛の軌跡は数十年の
堅い絆に結ばれて子孫を残し
夫亡き後を追うように
妻も天へと上り逝く
スイカズラの香りに包まる
愛と絆の物語...
此れにて終わりを迎えます
参考にしました下地の物語は[トリスタンとイゾルデ]です。
中世騎士道物語の中でも私の好きな物語の一つです。
幻想ケルト音楽「野生の生命」を聴きながら
前世と現世の縁を妄想してみました。
トレド:ルネサンス期のスペインを代表する
ギリシア人画家のエル・グレコが活躍した町として有名ですね。
画像は一部、ネットより。花画像は私の写真集から。
お立ち寄り下さり有り難う御座いました。