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なぜ人は「予定より早く目が覚める」のか-目覚ましより早く目が覚めるという、無駄な才能-

今日は8時からの重要な会議。普段より30分早く目覚ましをセットした。そしたら案の定、その45分前に目が覚めた。なんなんだ、この無駄な早起き力。誰に褒められるわけでもない特殊能力。

時計を見る。6時45分。
また時計を見る。6時47分。
さらに時計を見る。6時48分。

この、時間を確認するという無意味な行為を、目覚ましが鳴るまでの1時間近く続けることになる。人生の大切な時間が、こんな形で消費されていく。

面白いもので、目覚ましが鳴るまでの時間の方が、むしろ眠い。なのに寝られない。二度寝すると、本当に起きられなくなる可能性を、体が覚えているから。結局、ボーッと天井を眺めながら、だるさと戦う羽目になる。

昨日も「明日は絶対早く起きなきゃ」って思いながら寝た。でも、そんな心配は無用だった。むしろ早く起きすぎて、余計に疲れそう。この予定より早すぎる目覚め。誰に言っても自慢にならない微妙な才能。

枕の横には、スマホの目覚ましに加えて、置き時計もセットしてある。電池切れとか、電源切れとか、ありとあらゆる可能性を想定した予備の予備。この用心深さで、他のことができていれば、もっと人生上手くいってたかもしれない。

時計を見る。まだ7時前。
このまま、目覚ましが鳴るまでの残り時間を、無意味に浪費していく。時間を持て余すというか、時間に持て余されているというか。

結局、人間って、急いでいる時ほど早く目が覚めるように出来ているらしい。でも、その設計者に聞きたい。なんで休日の目覚ましは、3回鳴っても起きられないように作ったんですか?

また時計を見る。本当に、時間って遅い。
今日という大事な日に、既に疲れが溜まっている自分が可笑しい。

身体の不思議な記憶力

学生時代、コンビニのバイトで朝4時から入るシフトがあった。毎朝3時45分に目が覚める。目覚ましより15分早い。まるで体内に、几帳面な目覚まし爺さんが住み着いたみたい。

で、驚くのが、バイトを辞めて半年経っても、その時間に目が覚めること。もう行く必要のない時間に、体が勝手に「はい、コンビニの時間ですよ」って起こしてくる。誰に頼まれたわけでもない、この几帳面さ。

電車の中でも不思議な才能を発揮する。目的駅の一つ前で、ピッタリ目が覚める。寝過ごしそうで寝過ごさない、絶妙な調整。この能力、マジで特許取れるんじゃないかって思うくらい。

でも、すごく限定的な能力なんだよな。例えば宝くじの当選番号を覚えるとか、株価の変動を予測するとか、そういう役立つ記憶力は一切ない。なんなら、今日の会議資料すら頭に入ってない。なのに、体は「4時15分になったら起きろ」っていう、20年前のバイトのスケジュールだけは覚えてる。

出張前日も同じ。始発で行かなきゃいけない時なんて、目覚ましより1時間も早く目が覚める。その代わり、普段覚えておくべき顧客の名前は、全然頭に入ってこない。この偏った記憶力って、誰に感謝すればいいんだろう。

この前なんて、新幹線の中で「次は東京〜」のアナウンスの前に目が覚めた。周りの乗客が寝てる中、一人だけ早起き。まるで、体内時計マウントを取ってるみたい。でも、その自慢を誰にもできない。だって、普通に聞いたら、ただの神経質な人でしょ。

そういや、タクシーの運転手さんが言ってた。「20年以上、毎朝4時に目が覚めるんですよ」って。その時は「すごいですね」って言ったけど、内心「それ、呪いですよ」って思ってた。今、私もその呪いにかかってる。しかも、役立たずな時間帯で。

結局、この才能って何なんだろう。使いたい時には使えなくて、要らない時だけ発動する。まるで意地の悪い目覚まし妖精が、体の中で好き勝手してるみたい。

時計を見る。また15分経っただけか。
今日も無駄に早起きした朝が、ゆっくりと過ぎていく。

休日の裏切り

休日前日。「明日は少しゆっくり寝よう」と、平日より2時間遅く目覚ましをセットした。そしたら、この野郎、5時に目が覚ました。しかも、完全覚醒。何このタイミング。誰に謝ればいいんだ、この無駄な目覚め。

「まあ、二度寝すれば...」

この言葉、休日の墓標に刻んでおいてほしい。二度寝したら、見事に昼過ぎまで爆睡。結局、休日の予定が全部パー。「ちょっと寝る」が「完全に寝る」になる、この法則。英語で何て言うんだろう。まあ、どうせ忘れるけど。

平日は目覚ましより早く起きる体内時計。休日は目覚ましを無視する耳。この差別化された機能って、誰がプログラムしたの?地球上で最も無能なエンジニアとして表彰したい。

先週なんて、日曜日の朝5時に目が覚めて、「せっかくだから朝活でも」なんて意識高い系の考えが頭をよぎった。結果、二度寝して昼の2時起き。朝活どころか、昼活も怪しい。このブーメランみたいな生活リズム。

面白いもので、休日の目覚ましアラームって、鳴ってる音は確かに聞こえてる。でも、体が「ああ、今日は休日だから」って勝手に判断して、脳に「無視していいよ」って指令を出してる。この高度な情報処理能力、仕事中にも使えよ。

「休日くらいゆっくり寝たい」

この願いに対する体の回答が、「じゃあ、5時に起こして、その後爆睡させるね」って。なんなの、このズレた解釈。AIじゃないんだから、もうちょっとまともな対応できないの?

結局、休日の朝って、誰かの悪意を感じるくらい早く目が覚めるか、誰かの呪いを感じるくらい起きられないか。中間地点がない。このオール・オア・ナッシングな休日の過ごし方。

「今度の休日こそは...」

いや、もうその願いは諦めよう。どうせまた、5時起きか昼過ぎ起きの、どっちかになるんだから。

人生って、こういう些細な裏切りの積み重ねなのかもしれない。
...とか考えてたら、また二度寝しそうになってきた。

緊張と目覚めの関係

プレゼン前日の夜って、脳が特に意地悪になる。「もし寝坊したら?」「目覚まし、鳴らなかったら?」「地球が突然46時間回転を始めたら?」。意味不明な心配が次々湧いてくる。

昨日なんて、目覚ましのバッテリー残量が82%あるのに、「これ、意外と少ないんじゃ...」とか考え始めた。82%って、スマホの充電では「まだまだいける」ってレベルなのに。この選択的不安症候群。

で、結局そわそわして、目覚ましが鳴る2時間前に目が覚める。起きたは良いけど、まだ暗い部屋の中で、「このまま二度寝したら...」っていう新しい不安と戦うハメに。せっかく早く目が覚めたのに、その時間を不安で潰すって、なんか人生の無駄遣いしてる気がする。

緊張して眠れないのに、その緊張で早く目が覚めるって、二重苦もいいとこ。しかも、早く目が覚めた分だけ疲れが出る。プレゼンの本番で、あくびを必死に我慢する羽目になる。この完璧な自滅システム。

「誰も起こしに来ないかも」っていう不安。いや、そもそも誰も起こしに来ないって分かってる。でも脳は「でも、もしかして...」って。この無意味な期待と不安の同時進行。精神の無駄遣い選手権があったら、間違いなく入賞できる。

昨日の夜、目覚まし時計を3個セットした。スマホのアラームも4個。さらにタイマーも2個。この準備の過剰さを誰かに見られたら、絶対に引かれる。でも、これくらいやらないと、逆に眠れない。

面白いもので、この異常な緊張は、目が覚めた瞬間に「あ、無駄だった」って分かる。毎回分かってる。なのに、また次の大事な日の前には同じことを繰り返す。学習能力の完璧な無視。

「今日こそはちゃんと眠れる」

この言葉を言った瞬間、逆に眠れなくなるジンクスができあがってる。もう、言わないことにした。でも、言わないって決めた時点で、その言葉を思い出して眠れなくなる。

結局、人間の脳って、こういう無駄な心配のために進化したのかな。
...とか考えてたら、また新しい心配が浮かんできた。

また明日も大事な日

夜の11時。明日も大事な会議がある。いつもの準備が始まる。

スマホのアラーム:3個
置き時計:1個
目覚まし時計:1個
タイマー:念のため2個

この徹底的な準備を見たら、きっと誰かに「神経質すぎ」って言われるんだろうな。でも、これ、逆に神経質じゃないんだ。だって、どうせ全部鳴る前に目が覚めるって分かってるんだから。これは「無駄な準備をする」という、毎晩の儀式なんだ。

時計を見る。まだ11時5分。
「早く寝ないと」ってプレッシャーが、余計に目を覚まさせる。

考えてみれば、不思議な才能だよな。目覚ましより早く起きられるなんて。でも、なんでこの能力、株価予想とかに使えないんだろう。宝くじの当選番号を予知するとか。せめて、電車の遅延を予測するとか。いや、そもそも昨日の会議の内容を覚えておくとか。

この前、友達に「羨ましい」って言われた。目覚ましより早く起きられる能力のこと。でも、これって「ハゲてきたね」って褒められてるような感覚なんだよな。誰も本当には欲しくない特技。

布団に入る。また明日、目覚ましより早く目が覚めるんだろうな。その時間、何をして過ごそうか。スマホを見るのも疲れた。天井を眺めるのも飽きた。この「誰にも自慢できない早起き時間」の使い道。

そういえば、この文章も早朝の無駄な時間に書いてる。誰かの目覚ましより早い目覚めを、誰かの目覚ましより早い目覚めの時間に書くという。なんか、インセプション的な。

時計を見る。11時15分。
明日も、きっと全部の目覚ましより早く目が覚める。
この無駄な才能を誇りに思おうか、それとも呪いと思おうか。

結局、人生って、こういう使い道のない特技の集まりなのかもしれない。
...とか考えてたら、また余計に眠れなくなってきた。

明日の早すぎる目覚めが、もう待ち遠しい。
...なんて嘘。


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