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新宿駅で出会った、朝顔のような恋

第一章 偶然の出会い


遥は新宿駅のホームで、時計を見た。もうすぐ電車が来るはずだった。遥は仕事に行く途中だったが、今日は特にやる気が出なかった。

最近、仕事が忙しくてストレスが溜まっていた。上司に怒られたり、同僚に無視されたり、クライアントに文句を言われたり。

遥は自分の人生に疑問を感じていた。こんな毎日が続くのだろうか。本当にやりたいことは何だろうか。

遥は空を見上げた。今日は七夕だった。子供の頃は、短冊に願い事を書いて飾ったものだが、大人になってからはそんなこともしなくなった。

遥は自分が何を願えばいいのかもわからなかった。

そんなとき、遥はぶつかった。振り返ると、そこには女性が立っていた。

遥は謝ろうとしたが、そのとき、女性の浴衣に目が留まった。朝顔柄だった。白地に青や紫の花が咲いている。

遥はなぜか、その浴衣に惹かれた。女性も遥を見ていた。

黒髪に眼鏡、落ち着いたダークグレーのスーツという普通のサラリーマンだったが、女性はなぜか、その眼鏡に惹かれた。

「すみません、大丈夫ですか?お怪我ありませんか?」遥は声をかけた。

「ええ、大丈夫です」女性は笑顔で答えた。

お互い会釈をして遥は電車に乗ろうとした時、浴衣の柄が気になり思わず聞いてしまった。

「あの、すみませんが、その浴衣はどこで買われましたか?」

驚いた顔をした女性は答えた。

「え?あ、これは母親の形見なんです。手作りなんですよ」

「本当ですか?すごいですね。私の亡くなった母親も同じ朝顔柄の浴衣を着てましたよ」

「偶然ですね、母も私も朝顔が好きなんです。」

「なるほど。私も朝顔が好きですよ。子供の頃、毎朝見ていました」

二人は自然に話し始めた。電車が来ても乗らなかった。二人は互いに興味を持っていた。遥は女性の名前を聞いた。

「もしよろしければお名前を教えてもらえませんか?自分は遥と言います」

「美優と言います」

「美優さん……素敵な名前ですね」

二人は笑った。しかし、次の電車が来るとき、遥は時計を見て驚いた。

「あぁ、もうこんな時間、仕事に遅れちゃう」

「え?あ、私も」

二人は慌てて別れを告げた。

「今日はありがとうございました。お話できて嬉しかったです」

「こちらこそありがとうございました。私も楽しかったです」

「じゃあ、連絡先を交換しましょう」

「はい」

二人は携帯電話を取り出した。美優の名前を入力するとき、遥は言った。

「美優さん、今日は七夕ですよね」

「そうですね」

「じゃあ、一つお願いがあります」

「何でしょう?」

「今度会うときにも、その浴衣を着てきてください」

「え?でも……」

「お願いします。それが私の短冊です」

遥は笑って言った。美優は少し戸惑ったが、笑って言った。

「わかりました。それが遥さんの短冊なら……」

二人は連絡先を交換して別れた。

第二章 再会とデート


遥と美優はその後何度もメールや電話で連絡を取り合った。

二人は気が合ったことに驚いた。遥は美優のことを考えると、仕事も頑張れた。美優は遥のことを考えると、浴衣に自信が持てた。

二人は互いに励まし合ったり、笑わせ合ったりした。しかし、仕事や予定の都合でなかなか会えなかった。

ある日、遥は美優にメールを送った。

【明日休みだけど、どう?】

すぐに返信が来た。

【私も休みだよ。会いたい】

遥は嬉しくなった。

【じゃあ、新宿駅で待ち合わせしよう。11時に】

【わかった。楽しみにしてる】

遥も楽しみにしていた。

翌日、遥は新宿駅に向かった。11時になっても美優の姿が見えなかった。遥は心配になった。もしかしたら、来ないのかもしれない。

そんなことを考えていると、遥は人混みの中に美優を見つけた。美優は浴衣を着ていた。朝顔柄だった。遥は驚いて走っていった。

「美優さん!」

「遥さん!」

二人は抱き合った。

「美優さん、来てくれてありがとう」

「遥さん、待たせてごめんね」

「いいえ、全然。その浴衣……」

「遥さんの短冊を忘れていませんよ」

美優は笑って言った。遥も笑って言った。

「ありがとう、美優さん。あなたがその浴衣を着てくれて本当に嬉しいです」

「私もです、遥さん。あなたが私に会いに来てくれて本当に幸せです」

二人は手を繋いで歩き始めた。新宿御苑やカフェや雑貨屋を回った。二人はどんどん仲良くなった。しかし、二人はまだ恋人ではなかった。

遥は美優に告白したいと思っていたが、なかなか言えなかった。美優も遥のことが好きだったが、彼の気持ちがわからなかった。


第三章 朝顔の告白


ある日、遥は美優に言った。

「美優さん、今日は朝顔市に行きませんか?」

「朝顔市?」

「そうです。新宿駅の近くにあるんですよ。朝顔の花がいっぱい売られています」

「本当ですか?それは見てみたいです」

「じゃあ、行きましょう」

二人は新宿駅から歩いて、朝顔市に着いた。そこには色とりどりの朝顔が並んでいた。遥と美優は目を輝かせて、朝顔を見て回った。

「この朝顔、綺麗ですね」

「この朝顔、可愛いですね」

二人は同じことを言って笑った。遥は美優に言った。

「美優さん、この朝顔を買ってあげます」

「え?でも……」

「お願いします。これは私のプレゼントです」

遥は笑って言った。美優は少し戸惑ったが、笑って言った。

「わかりました。ありがとうございます」

遥は朝顔を買って、美優に渡した。美優はそれを受け取って、嬉しそうに言った。

「遥さん、この朝顔、私の浴衣と同じ色ですね」

「そうですね。それに気づいて買いました」

「本当ですか?すごいですね」

遥は美優の手を引いて、近くのベンチに座った。美優は遥の隣に座った。遥は美優の方を向いて、深呼吸した。

「美優さん、私はあなたのことが好きです」

遥はついに告白した。美優は驚いて言った。

「遥さん……」

「私と付き合ってください」

遥は美優の目を見つめた。美優は遥の目を見返した。遥の目には真剣な想いが溢れていた。美優は心が揺れた。彼のことが好きだという気持ちは確かだったが、彼と付き合うということはどういうことなのだろうか。自分にできるのだろうか。美優は不安になった。

「遥さん……私もあなたのことが好きです。でも……」

美優は言葉に詰まった。遥は美優の手を握って、優しく言った。

「でも、何ですか?美優さん、何か心配なことがありますか?」

美優は遥の顔を見て、正直に言った。

「遥さん、私はあなたと付き合いたいです。 本当に。でも、私はあなたにふさわしい人なのでしょうか? 私はただの浴衣屋の娘です。 あなたは立派なサラリーマンです。 私にはあなたの世界についていける自信がありません」

遥は美優の言葉に驚いた。彼はそんなことを全く気にしていなかった。彼は美優の人柄や笑顔や優しさに惹かれていた。彼は美優に言った。

「美優さん、そんなことを言わないでください。私はあなたがどんな職業や家庭や背景を持っているかなんて関係ありません。私はあなたが好きなんです。あなた自身が好きなんです。あなたは私にとってふさわしい人です。私はあなたと一緒にいるだけで幸せです」

遥は美優の頬にキスした。美優は遥の愛情に感動した。彼は自分を受け入れてくれる人だった。

彼は自分を大切にしてくれる人だった。美優は遥に抱きついて、言った。

「遥さん、ありがとう。私もあなたと一緒にいるだけで幸せです」

二人は朝顔の花を見つめながら、幸せに微笑んだ。

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