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同い年のバリキャリ女性、現る ◇うつ回復記 その3◇

うつ発症から1年が経った2020年3月。
コロナウイルス発生により、世界が大きく変容し始めた頃。
うつの症状はひとまず底を打ったのか、少し落ち着いてきていて、仕事は続けられていたが、安心できる状態ではまったくなかった。
この先どう生きていくかと考えると、心にずっしりと大きな重しが乗ったようで、暗澹たる思いだった。

◆◆◆

そんな中、職場に新しくアルバイトの人、Aさんが入ってきた。
私がAさんに業務を教え、ペアで仕事を進めていくことになっていた。
初日の自己紹介では私のほうがハラハラドキドキし、彼女は元気はつらつ、実に快活な人だった。

Aさんは私と同い年で、本業はヘアメイクアーティスト。芸能人やモデルも担当しているが、コロナ拡大で芸能界の仕事の自粛や中止が始まったため、本業と並行して週2、3日の、このアルバイトに応募したという。

ひゃー、そんな華やかな世界で働いている人なのか!
うつ状態に加えて言葉がどもる私が、うまく仕事を教えられるだろうか。
この人とうまくやっていけるかな・・・。
だが、それは杞憂だった。

◆◆◆

Aさんは非常に高いコミュニケーション能力とバランス感覚のある人だった。
職業柄、どんなタイプの相手にも明るく感じ良く振舞うことが身についているというのもあるのだろうが、生まれ持った素質でもあるのだろう。

彼女がいろいろ話してくれると、その明るい波動に乗せられてこちらも気分が上がり、普段は会社で自分のことをあまり話さない私も、つい「私は~」と口が開き、さほど言葉がつまることもなく会話を楽しんだ。

他の社員たちとはだいぶ遠い、離れ小島のような一角が2人の仕事スペースだったのをいいことに、仕事をしながらおしゃべりに花を咲かせた。

◆◆◆

バリバリのキャリアウーマンだから、さぞ高収入なんだろうな、住んでいるマンションもいい所なんだろうな、なんて下衆な想像をしながらも、うつが絶不調だった時と違い、Aさんと自分を比べて落ち込むことはなかった。

症状が良くなってきていたことに加えて、彼女がまるで嫌味がなく、生き方に筋が通った説得力のある人だったから、そして、自分とはまったく別世界の人だったからだろう。

◆◆◆

今でも印象に残っているのは、彼女が徹底した食生活管理をしていたことだ。
基本的に「白いものは食べない」と決めているという。
白米、白砂糖、白いパン(市販の食パンとかかな?)などなど。
家でカレーを作ることもあるけれど、白米ではなくブロッコリーにかけたりして食べるという。
えっ、カレーなのにご飯じゃないの?!
カレーの日は食欲旺盛な男子高校生並みに食べる私とは、健康管理に関する意識レベルにおいて、大人と子どもほどの差があった。

◆◆◆

時は過ぎ、1年ほどで契約終了ということで、2021年4月にお別れとなった。
その後しばらくは時おりLINEのやりとりをしていたが、ここ1年半ぐらい連絡をとっていない。
コロナ禍も落ち着いた今、元気にあちこちの現場を飛び回ってご活躍のことだろう。

◆◆◆

最終出社日にAさんからいただいたウンベラータの苗は、3年半が経つ今、我が家で元気に育っている。
昨冬に一度丸裸になってしまったが、今年の6月に鉢替えをしてから勢いを取り戻し、ここまで大きくなってくれた。



Aさんと過ごした1年間は、確実に私のうつ回復に影響を与えてくれたと思う。
Aさん、ありがとう。
これからも我が家のウンベちゃんと一緒に、私もゆっくり成長していきま~す!


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