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「Like the Wind」を読んでマニラを走りたくなった

愛読しているランニングカルチャー雑誌「Like the Wind」日本版第3号を読了した。
出版されたのは8月なので、ずいぶん遅れてしまった。

本号の特集タイトルは「南へ」。

東南アジアやアフリカなど、独自の文化を形成してきた「南」は、ランニングのレンズを通して今どのように見えるのか。
ヨーロッパやアメリカ、日本にある政治的、象徴的な「南」は、どのように語られるのか。

「Like the Wind 日本版03」19ページ

インドネシア・ロンボク島の100マイルレースに参加した日本人トレイルランナーのインタビュー。

南アフリカ共和国で最もきついとされるマラソンレースの紹介。

1968年メキシコ五輪の200m走で2位となり、1位と3位の黒人選手の人種差別反対のアクションに賛同を示し、それによってその後母国で冷遇される人生を送ったオーストラリア人選手の話。

などなど、「南」を軸として展開する9編のストーリーが収められている。

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特集の中で私が最も興味を惹かれたのは「マニラのカルチャークラブ」と題する記事である。

筆者は「マニラで走るのは難しい」と言う。

早朝にこっそり走るにせよ、夕食前にさっと走るにせよ、マニラ名物「カルマゲドン(Car + Armageddon)と闘う通勤者の海の中で、あなたがたったひとりのランナーである可能性は高い。マニラでランナーでいるのは、ちょっぴり変わり者だということだ。危険に晒されるために、わざわざ外に出るわけだから。

37ページ

フィリピンにランニングが浸透しないもう1つの理由は、国民を分断する格差問題だ。

もし楽しみや健康のためにランニングができるなら、それはとてつもなく幸運なことだ。たくさんの友だちや新しい仲間同士が集まって楽しんでいるこのスポーツは、これまでに多くの良いことをもたらしてきたが、この国の凝り固まった社会問題を解決することはできないし、そのための手段でもない。

39ページ

そんな社会状況の中で、少数の「幸運な変わり者」(39ページ)たちがグループで走る活動を始め、少しずつフィリピンにランニングを普及させようとしているらしい。

毎週50~60人が一緒に走っている「EZ・ランクラブ」の主催者は、クラブをそれぞれのセーフスペースを作る場とし、人と人をつなぎ、体を動かす喜びを伝え、挑戦することを応援し合うサポートシステムを構築している。

さまざまなジャンルのクリエイターが木曜の夜に集まって走っている「レッドライン・ランクラブ」のランでは、

マニラで最も高級な住宅街のひとつ、ロックウェルを通り、橋をわたって国内有数のふたつのビジネス街に入り、歓楽街の不気味な中心部を抜けてレストランに戻る。8kmのコースを走りながら感じる匂い、景色、音を通じて、マニラの裏側をちょっとだけ覗き見ることができる。

44-45ページ

読んでいて強く思った。
私もマニラを走りたい。
この人たちに混ぜてもらって一緒に走り、この都市の裏側を覗き見たい。

フィリピンに行ったことはないし、治安が良くないことも承知だけれど、マニラを走るというこの記事に強く心を惹かれ、イマジネーションを刺激された。

◆◆◆

「日本人はランニングが好きですね~。中国では街を走っている人がいたら、周りの人がびっくりして、『どうしたの?何かあったの?』と聞かれてしまいます」

昔、同じ職場で一緒に働いていた中国人女性から聞いた話だ。
街なかを走っていると何事かと思われるらしい。事故とか事件とか、緊急事態が発生したのか、と。
それぐらい中国ではランニングは人気がないとのことだった。

その時はそうなんですね~と笑い合ったが、12年ぐらい前の話である。
ネットで調べてみたら、ここ数年で中国のマラソンは急成長している様子。
諸外国のランニング事情を知るのは面白い。

◆◆◆

世界のランニング状況を知り、エリート、一般を問わず、ランナーたちのライフストーリーを読むことのできる「Like the Wind」は、私にとって貴重な情報源であると同時に、走ることと生きることについてさまざまな示唆を与えてくれる。

第4号は本日発売。

特集タイトルは「もうひとつの声―― in a different voice」。
「もうひとつの声」って何だろう。ワクワク。
さっそく読まなくては。

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