話しかけないで×話しかけていいよ/感覚の相違
わたしは不器用な人間です。
シングルタスク型、と言うのでしょうか。
…いや、でもその割に単一作業すらまともに出来ていない気がします。
ただ、間違っても同時進行で様々なことを執り行う事の出来るマルチタスク型でないことは確かです。
例えば読書をしているとき、わたしはその世界に入り込んでいます。
外界と隔てられた物語の海に沈んでいて、わたしは時に登場人物のひとりであり、時に彼らの間に漂う空気か何かです。
だから本を読んでいるときに話しかけられても、現実世界に戻ってくるのにしばし、時間が掛かります。
例えば夜、夢を見ていて、何かの拍子で目覚めたけれども今どういう状況か判断がつきにくいときみたいに。
所謂「夢うつつ」というやつです。
だってわたしは今、東大生に軽視されてどんどん追い詰められていく頭の悪い女子大生だったし、颯爽と風の中を飛んで妹たちにエサを運ぶ蜂だったし、とにかく家に帰りたい人たちを見守る雨だった。
だから「今日何食べる?」とか「週末、雨降るかなあ」とか話しかけられても「…え?何の話?」となるわけです。
本に限らず、ドラマでもゲームでもスポーツ中継でも仕事でも、どのくらい入り込むかというのは、人それぞれ違いますね。
わたしは割と没入して我を忘れるタイプ
夫は集中していても自分のままでいるタイプ
だから夫は、ドラマで感情移入して涙を流しているわたしに「この俳優さん、演技うまくなったね」などと話しかけて、何度か大目玉をくらっています。
でも、いつ何時でも「自分」でいる夫は、なんで怒られたのか分からないみたいでした。
思ったことを言っただけなのに、と。
感覚の相違。
夫も何かに集中していることはもちろんあって、そんなときにわたしが話しかけると驚くほど生返事になります。
絶対聞いてない。心ここにあらずだ。
というのがもう明らかに、たちどころに分かる返事。
でも夫は、話しかけられることに怒ったりはしません。どうやら夫には「今話しかけないで」という感覚が無いようなのです。驚くべきことに。
何?心が広いの?
集中しているときは話しかけないでほしいわたしと、別にいつでも話しかけていいよ、あんまり聞いてないけど、という夫。
結果的に、わたしが話しかけてほしくないときは、夫に事前申告することにしました(ちょっとこれ、真剣に見たいから終わるまで待ってて)。
また、夫が生返事だなと認識したときは、用事が終わるのを待つことにしました(だって話ちゃんと聞いてほしいから)。
全然違う理由なのに、最終的に「相手が集中しているときは話しかけずに待つ」という結論は同じでした。