負け続けのわたしたち
順番は抜かされるし
横入りされるし
注文は通らない。
わたしは、負けがちな人間です。
思い起こせば小学生の頃、中学受験をしようかしまいか、という話になったとき、他の子を押しのけてでも上に立とうという意気の無いわたしの性質を、母に大層嘆かれたものです。
あの頃(30年くらい前)の理想的小学生は
将来の目標を明確に持って夢を語り
勉強や運動において負けん気があり
家族やたくさんの友だちを大事にして
率先して課外活動(ゴミ拾いとか)を行う
…みたいな感じだったような気がします。
闘争心も向上心も無く内気だったわたしは
明らかに、受験戦争に向いていませんでした。
スタート前から、負けていた。
母は臆せず前に出るタイプで
兄は勉強が出来て大将気質
(父はいずれにも当てはまらないが我関せず)
家族の中でわたしだけ、これといった特技も特徴も無い上に臆病で人見知りでいつも何かに怯えていたので、母も兄も、さぞやわたしにヤキモキしたことでしょう。
三つ子の魂百まで、とはよく言ったものです。
わたしは大人になる過程で、無理をしたり世間に合わせようとしたりと紆余曲折あったものの結局、闘争心も向上心も無い内気なおばさんになりました。
幸いなことに夫も似た性質の持ち主なので、わたしたちは敵意や野心を剥き出しにしてくる他者から受けた傷を、互いに労りあい慰めあい、何とか生きています。
わたしたちは2人で連れ立って歩いているときも口数が多くないので、周囲からペアと認識されないことがままあります。
結果、2人の間を横切って歩かれたり、電車内で間に入られて、いっとき別行動を余儀なくされることもあります。
でも特に抗議したり横入りし返すこともないまま身を委ね、周囲が空いたタイミングでまた、そっと寄り添います。
特に、不都合はありません。
たまに、どうしてそんなに強気なんだろう?
という人に行き合うことがあります。
彼らはいつも自信満々で、何か問題が生じると必ず相手に対して修正や謝罪を求めます。
自分の考えそのものに誤りがある可能性について顧みたり内省したりすることはありません。
なぜ、そんなことになってしまったのか。
もしかしたら、あまり「負ける」という体験をしてこなかったのではないか、と推測しています。
負けることは損だ。
自分はそんな弱い人間ではない。
人の気持ちなんか知ったことか。
自分に付いてこれない者は放っておけ。
あのくらいで音を上げる奴に価値は無い。
自業自得。
努力が足りないだけでしょ。
なんでこんなことも分かんないの。
…
勝ち続けて鈍感になるくらいだったら
負け続けても敏感なままでいたいと
わたしは、思います。