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腰痛経過観察(三週目)

五月十八日 家宅捜索
過日、日記に「初めて読んだ中島らもの文章が気に入らなくて」「該当する本は忘れたけど」云々という文章を書いた。これでは余りにも無責任な文章だと思ったので、何が気に入らなかったのかを調べる為、蔵書の山をひっくり返して大掛かりな捜索を行い(毎回、この捜索には小一時間程度を要する)、該当する本を発見して(『心が雨漏りする日には』『牢屋でやせるダイエット』共に青春文庫)、読み返したのだが、自分でもよく分からなかった。読んだのが今よりもずっと若い時分であったから、感受性や性格が今よりもおかしかったのかも知れない。詳しくは書けないが実際に当時の私はおかしかった。詳しくは書けないのでこの一連の件にオチはない。まだ法的にクリーンなイメージを保っていたい。

五月二十日 下されていた診断(一月)
痛み止めの注射を定期的に打つ、という野蛮な手段で腰の件が一旦の落着(?)を見たので、就活に勤しむ為、昔に購入した履歴書を探そうと書類の山をひっくり返す。書籍といい資料といい、私の家は紙だらけだ。電子の時代に生きる人間とは思えない。こうなると中島敦の『文字禍』と大差ない世界観だ。
履歴書と一緒に、先般に受診した整形外科でのMRI結果や、内科でのレントゲンの診察結果の資料も出てくる。もしかしたら面接で尋ねられるかも知れない。
「最後に仕事を退職されてから約一年ほどの空白期間があるようですが、いったい何をされていたのですか?」
「引っ越しと腰痛の治療・療養を行っておりました」
断じて嘘ではない。生来の怠惰な性格や、精神疾患の影響で遅れたとは思うが。
と、そういえば、診断結果は医者から口頭で云われただけだからロクに目を通していなかったな、と思い、しげしげと資料を眺める。そこに、
「変形性腰椎症」
とある。
……ん? 聞いたことのない病名の診断が記されている。一種の符牒ないしは暗号だろうか? これは一月某日に受診したMRIの結果だ。私の記憶が確かならばその折には医師から「異常は見受けられませんね」と冷厳に言い渡されたのだ。その時の心情も過去の日記に殴り書いた。だからわざわざ、その後も内科でレントゲンまで撮影したのだ。安くも無い医療費まで捻出して。
「異常があるのに異常なしって言われる事もあるのかよ……」
迂闊だった。或いは「(脊椎に)異常はないですね」という意味だったのかも知れない。私には医師の心の機微とか行間を読めないのだと思った。糞糞糞糞糞がよと思った。
早速、変形性腰椎症という不可思議なる宿痾に就いて簡単に調べるが、杖をつかなければならないほどの痛みを伴う病気とも見えない。
とにかく、詳しくは次回に調べる事にして、今日は履歴書を書かなければいけない。私は筆圧が強すぎるので、腕までおかしくなりそうだ。




(※私用メモ 日記のオチは後日考える事にして、一旦投稿だけ済ませる。「利き腕だけ鍛えられて蟹のシオマネキみたいになっちゃった~」とか適当に云っておけば大丈夫。どうせこんな日記は、まともなユーモアを解する読解力も持ち合わせない連中しか読まない筈だ)

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