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身体の感覚

 わたしは小学生の頃から背骨が曲がっていて、脊椎側弯症と診断されている。先日、同じ側弯症の方から、普通の人は意識していなくても腹の下(いわゆる丹田だろうか)にいつも力が入っているのだが、側弯があると力が抜けている状態なのだという話を聞いた。その方はそれを体感しているというのだが、自分で力が抜けている感覚があるとしても、側弯じゃないひとの通常の状態って、実際にはわからないはずだと思う。そんなこと言わなかったけれど。
 子どもの頃から、どんな風に具合が悪いのか説明することができなかった。切り傷みたいな、はっきりした痛みならまだわかる。(これも、いつからこの感覚を「痛み」だと認識することができたのか不思議に思う。)痛みにしたって、すりむいたときのヒリヒリした痛みと、頭痛のズキズキした痛みと、神経痛のピリピリ感はまったくちがって、言葉をざっくり当てはめただけだし、他人の感じる火傷や頭痛や神経痛と同じなのかわからない。
 もともと身体は丈夫なほうではなく、二十代であちこち調子を崩すようになり、いつから自覚したのか、お腹の左側に何ともいえない嫌な感じがずっとある。固い棒が入っているような、ぎゅっと押し付けられているような、重苦しい感じ。医者に行っても説明することができず、検査してもよくわからない。過剰に心配されてしまうと困るので近しいひとにしか話したことがないというのもあるけれど、今のところこれをわかってもらえるひとに会ったことがない。本や映画といったフィクションの中にも見つけられていない。
 感覚を他人と共有できないこと、共有できたと思ってもきっと錯覚だろうということが、わたしのさみしさの一部になっている。


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