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✨詩✨お父さんの味噌汁

じゃがいもは入れないで
と言っても
いつも入れてしまうお父さん
人参は固いから早く入れてね
と言っても
なにもかもいっしょくた
それ以外、覚えてないお父さんの味噌汁

料理なんてしたこともなかった
男子厨房に入らず
お茶さえ 淹れたことがない

定年して
家にこもったお父さんは
毎日 ソファに座り
無言で何を考えていたのだろう
楽しみは巨人の野球
勝てば幸せ
負ければ‥‥

仕事が終わると
鳩みたいに家に帰ってきた
そんなお父さんを支えて
お母さんは
十も歳上女房
まるで 弟か息子のように
きっと 可愛がっていたのが
今ではわかる

年月が経ち
朝 起きれぬお母さんに
目覚めの早いお父さんは
お腹が空いて
味噌汁を作り出した

それにしても
ある日 突然に
台所に居たお父さん

「おい、食べろ」
と差し出された味噌汁は
食べれたものじゃなかったけれど
娘が知らない愛が
きっと あったのです

それから
味噌汁作りに目覚めて
お父さんは
早朝から
男子厨房に入り
なにもかもいっしょくたに鍋を操った

固い人参が浮かぶ味噌汁
朝からもったりと
馬鈴薯が浮かぶ味噌汁を

不器用で
上手くは生きられなかったあなたを
感じながら 独り 生きている

わたしの中にあなたがいる
免れない血が
身体中に巡って
あちこち ぶつかりながら
なにもかもいっしょくたの
あなたの味噌汁を感じながら

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