オウム事件17年目の告白
1995年3月20日東京都で発生した死者14名、負傷者6000名以上を出した戦後最大にして最悪の無差別テロ事件「地下鉄サリン事件」を知っていますか。この事件は、松本智津夫(麻原彰晃)元死刑囚を教祖とする「オウム真理教」が計画・実行しました。私が今回読んだ本は、オウム真理教の元幹部で現在は脱会し、ひかりの輪の代表である上祐史浩さんの著書である「オウム事件17年目の告白」です。この本はオウム真理教の内部情報や地下鉄サリン事件や、坂本弁護士一家殺害事件などオウムの数々の事件の真相を明らかにしている本です。著者である上祐さんを始めとした、当時の若者がなぜオウム真理教、麻原彰晃のことを盲信することになったか、オウム真理教が彼らに与えた希望や救いなど、入信した人々の心理や思考、またその理由や背景も明かされています。一方で、上祐さんがオウム真理教の盲信から脱却するまでの苦悩や再生の道のりも描かれています。
私はカルト問題に興味があり、関連する書物や動画で勉強する中で、これまで教団による事件の被害にしか着目したことがありませんでした。ですがこの本は元信者であり元幹部である上祐さんにしかわからない当時の心情や思考、脱会後の苦しみも書かれていてカルトによる被害を別の一面から知ることができました。私はこれまでオウム事件で殺害された方やサリンの被害に遭われた方々のみを被害者として認識していました。もちろん一番の被害者はこの方々ですが、オウム真理教を信仰していた信者自身もある意味被害者であるのかな、とオウム真理教の元信者の上祐さんの視点から書かれている本のならではの新たな気づきがありました。12章にわたるこの本の中で興味深かった章は第二章「オウム入信と麻原への帰依」です。この章の中には、上祐さんが入信したきっかけが書いてあり、それは他人事ではなく、特に現在の若者に読んでほしいと思いました。それは、上祐さんが幼い頃から超能力や超常的なことに関心があり、精神系の雑誌に載っている麻原をよく見かけたからという、単純な理由です。そこから上祐さんは道場に行きヨーガをしたり、集中セミナーに参加したりするようになりました。その中で上祐さんは徐々に神秘体験をするようになりました。その時麻原は上祐さんのことを絶賛しました。上祐さんはその高い評価にひどく興奮を覚えたと記しています。これは私たち誰にでもありうることだと思いました。例えば、私は中学の頃本の興味でトロンボーンを始めました。初めは軽い気持ちで行っていましたが、徐々に評価されるようになり、そこから熱中して取り組むようになりました。このように誰しもカルトに関わってしまう危険と隣り合わせだということがわかると思います。また、「心の渇きを埋めた麻原の言葉」ということも書いてあり、これがカルト盲信の1番だと私は感じました。上祐さんは当時を振り返り正しいから信じるのではなく、自分を高く評価するものを信じたいという心理が信者に働いたと記しています。このように自己の存在価値が感じにくい時代に麻原の言葉は悪い形で彼らの価値を満たしました。麻原自身が神の化身と主張するだけでなく、弟子達も自分に帰依すれば「解脱者」「超能力者」になれると説き自己存在価値に飢えていた上祐さんを含めた若者達は地球を救う重要な存在になることができるという話に熱狂してしまったと記してます。現在SNSが普及し、他人のキラキラした生活と自分自身の生活を比べ承認欲求が満たされない、自分の価値を見出せないという若者が増えてきたように感じます。このような心の状態は何かを盲信しやすく危険だと、現在の若者は特に他人事ではないと思います。
日本を震撼させた教団「オウム真理教」。こんな教団に入信する人は普通の人じゃない、精神が異常なんだ、そんな偏見を持っている人も少なくないかと思います。ですがこの本を読むと、信者は軽い興味で教団に近づいてしまった普通の人たちだったことがわかります。だからこそ私たちの知り合い、または自分自身がカルトを盲信しないとも言い切れません。特にこの本を読むと事件の真相だけでなく元信者である上祐さんの生い立ち、人生が描かれていて、普通の人生がオウム真理教によって壊されたかがわかり、カルトを盲信してしまうことの怖さがわかります。今の若者は昔オウム真理教をはじめとしたカルト集団に心酔した若者の心理とマッチするとこらが沢山あります。ですが、現在私の年代も含めオウム事件のことを知らない世代が増えてきています。その世代が事件の加害者また、カルトの被害者にならないようにオウム事件は風化させてはいけません。そのため当時を1番よく知る上祐史浩さんの著書であるこの本は若い世代を中心にたくさんの人に読んで欲しいです。
作文コンクールで学校選考落ちたっぽいので供養させてください。#読書感想文