好きに生きたい

 好きに生きたい。
 私の心にずっと巣食っているこの言葉は、どうやっても逃れられない現実を常に突きつけてくる…。
 今朝のことだった。眠気眼にコーヒーを流し込みながらテレビをつけると、そこには小学生のなりたい職業ランキングのトップテンが並べられていた。
 スポーツ選手、インフルエンサー、公務員、タレント。様々な職種が、夢ある職種がそこにはあった。
 小学生の頃なりたかったもの、やりたかったこと、思い返せば本当にただの夢物語だった。
 アイドル? 鏡を見てみな。漫画家? 絵、描いてみな。プログラマー? パソコン触ってみ。投資家? 元手すらないでしょ。
 あの頃の憧憬は、心の中のショーケースに閉じ込めてただ愛でるだけ。綺麗なままそうやって生きている、好きなことして生きている私をただ保管しているだけ。
 目の前に映るのはコンビニのレジとカウンターを挟んでお客様。私がタバコの銘柄で手間どって軽く舌打ちをしてきたお客様。
 無言で立ち去るお客様。
 笑顔で「ありがとうございます」と言うお客様。
 陳列されたおにぎりやお菓子達。
 聞こえるのは入口が開いたときのチャイムの音と自分の「いらっしゃいませ」だけ。
 好きに生きた結果こうなった。
 でも好きに生きれてない。
 つかえた胸は一向にスッキリしない。
 ねえ、あなたは好きに生きれているの?


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