『百年法』(上) 山田 宗樹 著
ハビ(不老不死の処置)を受けた国民は100年で安楽死することが義務づけられている。しかし、目前に迫った強制死に国民は混乱し始める。
確かに、不老は魅力的に感じる。体力は落ちないし、若いままでいられる。しかし、100年後に死んでくださいってなるのは怖い。
今の若さを持ったまま明日も元気に活動できるのに死ななければいけない。
政治家たちは権力を奪い特例として生き残ろうとする。
国民は逃亡しようと画策したり、自暴自棄になったり。
死を受け入れない人を非難し暴動が起きたりし混沌とした社会になる。
国民の中にはハビを受けない人も登場するが、なんだかそれが1番正解のように感じる。自然の老いに任せ、衰え徐々にいろんな事ができなくなり制限され覚悟をゆっくりしていく。それでしか自分の死を受け入れられない。そう思う。
それでも実際にこんなことが可能なら、おそらく不老不死の処置を受けると思う。
正しい選択が分かっていても、それができない。
ハビを受けていなければ1年経つごとにやっぱりハビを受けようと悩む。
もしかしたら毎日悩むかもしれない。そして、いつか悩むなら受けようと不老不死の処置を受ける。
そして100年後の安楽死に怯えたり後悔しながら生きるように思う。
幸い不老不死はまだ不可能なので本当に助かった。
登場人物が豊かで自分に似ていると感じる人物だったり、自分にはできないが憧れる生き方をしている人物がでたりと、いろんな角度から死や老いを考えさせられる。
下巻に続く。
注)多少、文中に女性蔑視を感じる部分があるのが残念だが、読み進めると作品の本当に伝えたい部分に入っていくので出てこなくなる。